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2009年11月01日

転生11-癒しの力2[伽羅孤3]

美雨(ちゅらみ)はエフェクトの顔と身体を拭き清め、そして髪を丁寧に櫛で梳きました。
これだけでも気持ちはかなりすっきりします。

「髪が伸びたわねぇ。」
エフェクトの髪はショートカットだったのが、一気に胸のあたりまで伸びていました。

そしてそれだけでなく、彼女は少女の入り口からさらに成長しているのが一目でみてとれました。
どれだけ辛い想いをして悩んでいるのか、それだけでもわかります。

「成長は、悪いことじゃないわ。」
ふと、美雨が少女だったころの母の言葉が耳に蘇りました。

転生11-癒しの力2[伽羅孤3]

身体がすっきりしたエフェクトは、新しい服を着せられてリビングに連れ出されました。
見えないのを怖がって足を出そうとしないので、最後はアズマが抱きあげて移動。

それでも。
ベッドを出て長椅子に座っただけでも、気持ちが少しリフレッシュしたのがわかります。

美雨はエマに寝室の風通しや掃除と、美味しい食事を頼んでいました。
美雨が殆ど生きるのを諦めていたあの当時、それでも口に運んだ美味しい料理はいつもエマが作ったものだったと美雨は思い出したのです。


その間に、美雨は桃を剥いてエフェクトの手に持たせました。
『喉が乾いたでしょう?桃はいかが?』

心話で呼びかけると、エフェクトはただ機械的にゆっくりと桃を口に含みました。

そして最初の一口を飲み込んでしばらくしてから、手探りしながらもうひとつ、自分で皿の上からとって食べました。
口元が緩み、表情が柔らかくなっています。

美雨はほっとしました。


『エフェクト。よく聞いて。私のお母さまの話をするわ。』

桃を1個まるごと食べて落ち着いたところで、美雨はエフェクトの両手をとると、静かに彼女の中へヒーリングエネルギーを送りながら話を始めました。

アズマの妻であり、美雨の母だった亡きエフェクトの話。
そして今は独立していった兄弟たちの話。

『そしてね。今まで話してなかったけど…あなたは、私のお母さまの魂をもつ人なの。』
エフェクトは驚いたようでした。

『わたしが…?』
『ええ。お母さまが亡くなったあと、お父さまが魂を捜しに旅に出て。
 そうしてあなたはもう一度ここで生まれなおしたのよ。』


美雨はむかし美雨自身が火傷を負ったことを話し、
そしてエフェクトの夢はそれを辛く感じていた母の想いが現れたものであることを説明しました。

『きっとお母さまは…私の火傷を、‘できることなら代わってあげたい’って思ってくださったのかもしれないわ。』

そう美雨が説明した途端、エフェクトの皮膚に浮かんでいたケロイドがすーっと引いて行くように消えていきました。

美雨、ビンゴ!(・o・)b と、思わずつぶやいたpyo。
美雨は「お母さま、ありがとう…」とつぶやいてました。


『なんだか痒い…。』
エフェクトはケロイドが消えた手のひらや首にふれながらそういいました。

少女のエフェクトが、自分のケロイドをみて悩まずに済んだことに、美雨は心からほっとしました。


『お茶をいれるわね。』
美雨が立ちあがったその時。

コン、コンと長城につながる外のドアがノックされ、遥珂(はるか)が入ってきました。
「お待たせしました。桃、もらってきました!」

エフェクトは何があったのかわからず、突然現れた人の気配におびえた様子を見せました。
アズマがエフェクトを支えて安心させます。

「あ、あれ?すいません、僕、騒がしくしちゃって…。」
遥珂はちょっとうろたえたように、初めて会う転生後のエフェクトの前にいきました。

「遥珂、もっと頻繁にうちに帰ってきても構わないんだよ。」
アズマは微笑んでそういいながら遥珂がもってきた桃を受け取り、エフェクトのそばに置いていきました。

いきなり大量の桃に囲まれたエフェクトは、驚いて手探りでそれを触っています。

「す、すいません。これでも僕、神官として一応独立したからには…って、気負いすぎちゃったのかなぁ。あの…話はきいて知っているけど…おかあさん…?」

『遥珂、エフェクトよ。エフェクト、これは弟の遥珂よ。』
エマにお茶を頼んできた美雨が二人を紹介しました。


『あの!ぼく…!えと、え、エフェクト…?僕、目がない龍なんです。お、親もいなくて。
 だから、あの、前世のあなた…お母さんが僕をひきとってくれて育ててくれて。でもお母さんが悩んでたなんて知らなくて。
 …ごめんなさいっ!』

遥珂はしどろもどろに言うと、エフェクトの手に桃を渡しました。

『でも、僕は目がなくてもこうやって何でもわかるし、届けられるし、今の仕事も生きがい感じるし。お母さんには心から感謝してるんです。もちろん、お父さんにも、美雨おねえちゃんにも。だから…』

遥珂はさらにしどろもどろで続けました。
『あの、桃、美味しいですよ。食べてください!』

アズマが微笑みながらエフェクトに触れて伝えました。

「エフェクト、見て御覧。お前が夢の中でみた目のない白龍は、彼だ。決して怒ってないし、お前のことが大好きなんだよ。」

エフェクトの目から涙がこぼれました。
『わからない…。わたし、混乱してて…』

『あの!金と青の目の、声のない龍は、ウェイです!彼も幸せだし、お母さんが大好きだし。あ、こないだちょっと寄ってきたので僕、みせます!』

遥珂はエフェクトが‘視ている’世界を感知していました。
そこで彼女の混乱を察知して、もっとも彼女が知りたかった情報を教えてくれました。

遥珂から幸せそうなウェイ一家のビジョンを受け取ったエフェクトは、
彼女の中にあった「海の闇にいた怒っている龍」や「目のない龍」への恐れから解放されたようでした。


つづく。


泣くよ~要注意!ダウン
「ありがとう」って言いそびれたヤツいる?



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つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(5)龍物語
この記事へのコメント
遥珂元気そうで

エフェクト、目や耳も元に戻りますように…。
Posted by ちょこ at 2009年11月01日 08:13
ありがとう!
Posted by ラム at 2009年11月01日 10:51
●ちょこさん、ラムさん
ありがとうございます~
Posted by pyo at 2009年11月01日 18:47
この記事を読んでからずっと考えていたんですけど…

いや、違うな( ̄ ̄;
正確には、ずっと前からある事を考えていて、この記事を読んで決心した、かも。

pyoさん、私ね、とりあえず母には一番に伝えようと思います。
「生まれてきて良かった」と。
「生んでくれてありがとう」と。

母とは色々あったし、生まれてきたくなかったと長い間思って生きてきましたけど、今は違います。

生きてる間に、ちゃんと言葉にして伝えなきゃって。
照れくさいけど(^^;
でも、伝えます。
pyoさん、ありがとう。*
Posted by あみ at 2009年11月04日 16:46
●あみさん
おお!お役にたてたなら嬉しいです。
私も今頃になって母に伝えました、「産んでくれてありがとう」って。
めちゃ照れくさいけど、気持ちの中がすっきりしますよ~。

思い立ったが吉日!で、どうぞ伝えてくださいね。(^^)
Posted by pyo at 2009年11月05日 09:42
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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