てぃーだブログ › pyo's room › 伽羅弧3 › 夜希と円3[伽羅孤物語3]

2009年10月13日

夜希と円3[伽羅孤物語3]

背中から見ると白い翼。
正面からみると内側には黒い羽根のある翼。

その両の翼を大きく広げてふわりと飛び立つと、
大神官夜希はいつもの静かな彼の様子とは一転して
雄々しく力強い、高原の鷲のようにも見えます。

そして同時に光輝く天使のような強さ優しさも持ち。
不思議な存在感を示すのでした。


皆が見守る中、夜希の姿はすぐにエリア4の魑魅魍魎立ちがうごめく、昼なお暗い森の中へと消えて行きました。

夜希と円3[伽羅孤物語3]

暗い森の中。
光がささないその森の中を一人歩くことに関しては、夜希は何の問題もありませんでした。

彼は闇のエネルギーを受け止め、目に頼らず、歩きはじめました。
木々が動き、地面が動く。
その場に到達するまで、そこに道があるのか障害物があるのか全く分からない不思議な森。

闇の中の魑魅魍魎たちは彼のエネルギーに気圧されたのか、それとも徐々に集まってくるのか。
攻撃的な反応をするものもなく、かといって歓迎といった様子でもなく、
お互い少し緊張感をもちながら様子をうかがっている、というところでした。


ふと、夜希は様子がおかしいことに気がつきました。

彼が歩いてきた道。
後ろが明るい気がしたのです。

足を止め、振り返った夜希は目を疑いました。

「これは…普通の森?」

夜希が歩いてきた場所は、まるでエリア1の柔らかな日差しと清浄な空気に囲まれた森のように、緑が光を通し、明るく木々の枝が風を通してくれる、そんな風景に変わっていました。


エリア4の監視事務所でも、この状態は観察されていました。

「いったいどういうことだ?」
監視員たちが首をかしげるなか、アズマは夜希に心話で呼びかけました。

「夜希。こちらでもその現象は確認している。上空の龍たちからもはっきり目視できると報告があった。とにかくそのまま進んでみてくれ。」

おそらくこれは、クリスタルの浄化作用かもしれないな、
と、アズマはつぶやきました。


夜希は、大神官の業務の時だけクリスタルを額につけていました。

それは伽羅孤のご神体とされる巨大クリスタルのエネルギーの一部をとりだしたもの。
額につけるほど小さなものながら、それはご神体であるクリスタルそのもののエネルギーを取り出すことができるものでした。


そう認識して歩き出した夜希は、確かに額のクリスタルが反応していることに気がつきました。

夜希の歩みに連動するかのように、額のクリスタルからエネルギーが流れ出し、エリア4に優しくやわらかく流れ出していきます。

そのエネルギーが弧を描くようにふたたび夜希の後ろに集まると、
そのエネルギーにふれた魑魅魍魎たちのエネルギーが
いったん分解され、クリアにされ、
粒子が並べ直されるように再び結合され、それが清浄な森を新たに形作っていたのです。

夜希が一歩ふみだすごとに。
エリア4はその歩みにあわせて、美しい森へと変化し始めていました。


しかし、エリア4はそれはそれで巨大な大陸。
夜希ひとりの歩みで全てを浄化するとなると、おそらく何年もかかってしまう、そんな広大な森でした。


「まあ、目的は霊亀を起こすことだ。浄化された場所は木々も動かないし、ちょうどいいんじゃないか?」
日暮れ時、アズマの合図で戻ってきた夜希にアズマはこう説明したのでした。


つづく。




同じカテゴリー(伽羅弧3)の記事

Posted by 町田律子(pyo) at 17:48│Comments(0)伽羅弧3
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。