2009年07月03日
第4話 娘の意見 [白龍物語]
第4話 娘の意見
アズマは分身を出して、部屋で待っている美雨のもとへ行かせました。
美雨は遥珂のために、極端に外出を避けるようになっていました。
とにかく今は家の中の物の配置に慣れさせる、それを優先させていたのです。
そのため医務院へは行かず、両親の帰りを遥珂の子守をしながら待っていました。
「わ…わたし?」
美雨は父に意見を求められ、混乱しました。
そんなことはかつてなかったことだったのです。
そして、一番確かに思えた答えをいいました。
アズマは分身を出して、部屋で待っている美雨のもとへ行かせました。
美雨は遥珂のために、極端に外出を避けるようになっていました。
とにかく今は家の中の物の配置に慣れさせる、それを優先させていたのです。
そのため医務院へは行かず、両親の帰りを遥珂の子守をしながら待っていました。
「わ…わたし?」
美雨は父に意見を求められ、混乱しました。
そんなことはかつてなかったことだったのです。
そして、一番確かに思えた答えをいいました。
「…お父さまがよろしいように…。」
アズマは、目を伏せました。
『…やはり。そうだったか…』
アズマは、己の共依存が引き起こした事態と向き合わざるを得ませんでした。
しかし、己を責めても、誰を責めても問題は解決しない。
「美雨としては、どうしたい?」
どちらを選んでもいいんだよ、自宅にいても、クリスタル城に移っても。
アズマは優しい目で、再度、美雨の意思を確認してみようとしました。
美雨は困りました。
自分の意見を…と言われても、どう考えていいのかわからない。
卵を孵すためにといわれれば必要な事だろうし。
それに反対するなんてもちろん考えられない。
だけど部屋にこもって遥珂だけを相手にしている毎日を過ごしていると、外に出るのは空恐ろしいような気もしてくる。
生活の場を変える…ということは、美雨にとってわくわくするような事ではありませんでした。
「…遥珂が…」
美雨は消え入るような小さな声でいいました。
「家の中でなら、やっとぶつからずに歩けるようになったんです…だから…」
「うん。だから?」
アズマは最後まで話してほしいと気持ちをこめて促がしました。
しかし、美雨はうつむいたまま黙ってしまいました。
…一朝一夕ではすむ問題じゃない。
時間をかけるんだ。
アズマは心の中で己によびかけると、美雨にうなずきました。
「家にいたい?」
「…はい…でも…お母さまのためにも、卵のためにも、移ったほうがいいのでしょう?」
美雨の目には涙が浮かんでいました。
お母さまがクリスタル城に入院している以上、きっとあちらに移ったほうがいいという事なんだ…。
美雨は指示を受ける体制で父の言葉を待っていました。
「必ずしもそうではない。どっちでもいいんだよ。」
アズマは、腰をすえて娘と話してみようと考えました。
しかし、そうも行かず。
緊急の業務が、アズマを呼び出したのです。
このとき、アズマの本体はまだクリスタル城で卵を抱いたまま紫乃と話しこんでいました。
そして美雨と向き合っていた分身。
さらに仕事についている分身。
そこにエリア4の異常事態の報告。
さらに分身を…というわけにはいかない状態でした。
アズマは、美雨と向き合ってるほうの分身を、エリア4に向かわせる事にしました。
結局、美雨には「よく考えて、あとでもう一度話そう」と伝えただけで。
紫乃は、ため息をつきました。
「わかりました。私が時々塔に様子をみにいきましょう。とにかく卵が無事に孵るようにしなければ。」
つづく。
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アズマは、目を伏せました。
『…やはり。そうだったか…』
アズマは、己の共依存が引き起こした事態と向き合わざるを得ませんでした。
しかし、己を責めても、誰を責めても問題は解決しない。
「美雨としては、どうしたい?」
どちらを選んでもいいんだよ、自宅にいても、クリスタル城に移っても。
アズマは優しい目で、再度、美雨の意思を確認してみようとしました。
美雨は困りました。
自分の意見を…と言われても、どう考えていいのかわからない。
卵を孵すためにといわれれば必要な事だろうし。
それに反対するなんてもちろん考えられない。
だけど部屋にこもって遥珂だけを相手にしている毎日を過ごしていると、外に出るのは空恐ろしいような気もしてくる。
生活の場を変える…ということは、美雨にとってわくわくするような事ではありませんでした。
「…遥珂が…」
美雨は消え入るような小さな声でいいました。
「家の中でなら、やっとぶつからずに歩けるようになったんです…だから…」
「うん。だから?」
アズマは最後まで話してほしいと気持ちをこめて促がしました。
しかし、美雨はうつむいたまま黙ってしまいました。
…一朝一夕ではすむ問題じゃない。
時間をかけるんだ。
アズマは心の中で己によびかけると、美雨にうなずきました。
「家にいたい?」
「…はい…でも…お母さまのためにも、卵のためにも、移ったほうがいいのでしょう?」
美雨の目には涙が浮かんでいました。
お母さまがクリスタル城に入院している以上、きっとあちらに移ったほうがいいという事なんだ…。
美雨は指示を受ける体制で父の言葉を待っていました。
「必ずしもそうではない。どっちでもいいんだよ。」
アズマは、腰をすえて娘と話してみようと考えました。
しかし、そうも行かず。
緊急の業務が、アズマを呼び出したのです。
このとき、アズマの本体はまだクリスタル城で卵を抱いたまま紫乃と話しこんでいました。
そして美雨と向き合っていた分身。
さらに仕事についている分身。
そこにエリア4の異常事態の報告。
さらに分身を…というわけにはいかない状態でした。
アズマは、美雨と向き合ってるほうの分身を、エリア4に向かわせる事にしました。
結局、美雨には「よく考えて、あとでもう一度話そう」と伝えただけで。
紫乃は、ため息をつきました。
「わかりました。私が時々塔に様子をみにいきましょう。とにかく卵が無事に孵るようにしなければ。」
つづく。
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Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。