2009年07月09日
第13話 いたずらっ子たち[白龍物語]
第13話 いたずらっ子たち
遥珂とウェイは、仲のいい兄弟として育っていました。
お互いの意思疎通に自然に使い始めていたのが、心話(テレパシー)。
そしてそのテレパシー能力をもっとも鍛え、発揮させたのが
イタズラ
でした。
「かけっこ」Photo by pyo
遥珂とウェイは、仲のいい兄弟として育っていました。
お互いの意思疎通に自然に使い始めていたのが、心話(テレパシー)。
そしてそのテレパシー能力をもっとも鍛え、発揮させたのが
イタズラ
でした。
「かけっこ」Photo by pyo
大きくなって行動範囲と興味がどんどん広がると、二人とも教育係の目も姉の目もくぐりぬけて広い城内を走り回るようになり、やがてあちこちでイタズラの被害が出始めました。
そしてその被害に‘白眼の子とオッドアイの子’が関係していた、という話があちこちで出てき始めたのです。
やがてその話が噂の域を超え、紫乃の耳にも入るようになった頃。
紫乃はにっこりと笑っていいました。
「それで、誰かその場で叱りました?」
教育係の夜希にあとから文句を言うものはいたものの。
いたずらっ子たちを捕まえたとしても、それが‘軍神アズマ様のご子息たち’となると、その場で叱るものなどほとんどなく。
「あら。それでは意味がないじゃないですか。
子どもは大人がきちんと叱らなければ躾になりません。
タイミングを逃すと伝わりませんよ。
そしてどこでどんないたずらをしたのか、ちゃんと教育係に連絡しなさいな。」
ころころと笑う紫乃の言葉に伽羅弧内が動き、やがてその悪戯の情報は「データ」として役立つようになりました。
ハタと夜希は二人がどこでどんな悪戯を仕掛けたのか検討し、子どもたちのその時々の興味の方向、できるようになった事柄などを分析して教育メニューを再検討していきました。
その内に、教室のほうで好奇心を満足させられ、やっていい事や悪い事をきちんと教えられていった二人のイタズラはだんだん治まっていきました。
ある日のこと。
美雨はエリア1にある草原の端っこ、気持ちのいい風が時折吹く木の下の木陰で物語を朗読していました。
そばには敷物を敷いて、思い思いの格好できいている、弟たちと教育係たち。
その本は少年たちがわくわくするような冒険の話でした。
美雨は時々読むのをやめて「次はどうすると思う?」と、弟たちに聞きます。
すると、遥珂とウェイは立ち上がり、めいめいが冒険に出かけた主人公の気持ちになって思う通りのストーリーを全身で表しながら話し始めます。
そしてお互いの話の違いに驚いたり喜んだり。
その違いを修正して、二人共通のストーリーを作り上げていったり。
教育係の二人と美雨は、にこにことそのオリジナルストーリーを楽しんで聞いていました。
するといきなり拍手がきこえ、木陰から一人の男性が現れました。
爽やかな印象の切れ長の目が涼しげに笑いかけます。
「まぁ。廻さん。」
「美雨、お久しぶり。この子たちが僕の新しい従兄弟たちかい?」
会話をきいてはっとした教育係の二人は、すぐに体勢を変えて片ひざをつき、片腕を胸の前にもっていって廻にふかぶかと頭をさげました。
美雨の従兄弟ということは、アマテラス様のご子息。
すぐにそう判断したからです。
遥珂とウェイは教育係の二人が一斉にこんな仕草をするのを初めて見て、驚きました。
きょとんとして、闖入者を見上げます。
廻は、遥珂の、表面をなぞるようなサーチするようなエネルギーを感じました。
なるほど、この子が噂の目のない白龍か。
廻は遥珂が彼の姿をエネルギーで感じ取る様子を面白く興味深く観察しました。
「ええ。紹介しますわ。弟たち、遥珂と、ウェイです。それとこちらは教育係で医務官のハタ。それと神官の夜希ですわ。
遥珂、ウェイ。ご挨拶して。従兄弟の廻さんよ。」
廻は、子どものころから寺子屋で一緒に学んできた美雨の事を良く知っていました。
幼い頃は屈託なくよく笑う明るい子だった美雨が、ある頃から大人しく引っ込み思案な子になったのも不思議だったのですが。
こうして久しぶりにあった彼女が再び明るく堂々とした女性になっているのにも驚いていました。
美雨は、毎日弟たちに絵本の読みきかせをしているうちにそれが喉のチャクラの解放に役立ち、ハートチャクラの解放にもつながって、すっかり明るくなっていたのです。
「僕もお話の続きをきいていいかい?」
少年たちとの自己紹介のあと、廻は興味のままにこの一行に加わってみることにしました。
美雨はちょっと頬をあからめたあと、再び本の朗読に戻りました。
その後。
廻はちょくちょく遥珂とウェイの「授業」に顔を出すようになり。
さらに夜希やハタと一緒にほとんど教育係ともいえる活動をするようになっていきました。
それは、アウトドア遊びが大好きな廻にとっても楽しいものだったのです。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
そしてその被害に‘白眼の子とオッドアイの子’が関係していた、という話があちこちで出てき始めたのです。
やがてその話が噂の域を超え、紫乃の耳にも入るようになった頃。
紫乃はにっこりと笑っていいました。
「それで、誰かその場で叱りました?」
教育係の夜希にあとから文句を言うものはいたものの。
いたずらっ子たちを捕まえたとしても、それが‘軍神アズマ様のご子息たち’となると、その場で叱るものなどほとんどなく。
「あら。それでは意味がないじゃないですか。
子どもは大人がきちんと叱らなければ躾になりません。
タイミングを逃すと伝わりませんよ。
そしてどこでどんないたずらをしたのか、ちゃんと教育係に連絡しなさいな。」
ころころと笑う紫乃の言葉に伽羅弧内が動き、やがてその悪戯の情報は「データ」として役立つようになりました。
ハタと夜希は二人がどこでどんな悪戯を仕掛けたのか検討し、子どもたちのその時々の興味の方向、できるようになった事柄などを分析して教育メニューを再検討していきました。
その内に、教室のほうで好奇心を満足させられ、やっていい事や悪い事をきちんと教えられていった二人のイタズラはだんだん治まっていきました。
ある日のこと。
美雨はエリア1にある草原の端っこ、気持ちのいい風が時折吹く木の下の木陰で物語を朗読していました。
そばには敷物を敷いて、思い思いの格好できいている、弟たちと教育係たち。
その本は少年たちがわくわくするような冒険の話でした。
美雨は時々読むのをやめて「次はどうすると思う?」と、弟たちに聞きます。
すると、遥珂とウェイは立ち上がり、めいめいが冒険に出かけた主人公の気持ちになって思う通りのストーリーを全身で表しながら話し始めます。
そしてお互いの話の違いに驚いたり喜んだり。
その違いを修正して、二人共通のストーリーを作り上げていったり。
教育係の二人と美雨は、にこにことそのオリジナルストーリーを楽しんで聞いていました。
するといきなり拍手がきこえ、木陰から一人の男性が現れました。
爽やかな印象の切れ長の目が涼しげに笑いかけます。
「まぁ。廻さん。」
「美雨、お久しぶり。この子たちが僕の新しい従兄弟たちかい?」
会話をきいてはっとした教育係の二人は、すぐに体勢を変えて片ひざをつき、片腕を胸の前にもっていって廻にふかぶかと頭をさげました。
美雨の従兄弟ということは、アマテラス様のご子息。
すぐにそう判断したからです。
遥珂とウェイは教育係の二人が一斉にこんな仕草をするのを初めて見て、驚きました。
きょとんとして、闖入者を見上げます。
廻は、遥珂の、表面をなぞるようなサーチするようなエネルギーを感じました。
なるほど、この子が噂の目のない白龍か。
廻は遥珂が彼の姿をエネルギーで感じ取る様子を面白く興味深く観察しました。
「ええ。紹介しますわ。弟たち、遥珂と、ウェイです。それとこちらは教育係で医務官のハタ。それと神官の夜希ですわ。
遥珂、ウェイ。ご挨拶して。従兄弟の廻さんよ。」
廻は、子どものころから寺子屋で一緒に学んできた美雨の事を良く知っていました。
幼い頃は屈託なくよく笑う明るい子だった美雨が、ある頃から大人しく引っ込み思案な子になったのも不思議だったのですが。
こうして久しぶりにあった彼女が再び明るく堂々とした女性になっているのにも驚いていました。
美雨は、毎日弟たちに絵本の読みきかせをしているうちにそれが喉のチャクラの解放に役立ち、ハートチャクラの解放にもつながって、すっかり明るくなっていたのです。
「僕もお話の続きをきいていいかい?」
少年たちとの自己紹介のあと、廻は興味のままにこの一行に加わってみることにしました。
美雨はちょっと頬をあからめたあと、再び本の朗読に戻りました。
その後。
廻はちょくちょく遥珂とウェイの「授業」に顔を出すようになり。
さらに夜希やハタと一緒にほとんど教育係ともいえる活動をするようになっていきました。
それは、アウトドア遊びが大好きな廻にとっても楽しいものだったのです。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。