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2009年07月10日

第15話 夜のティータイム[白龍物語]

第15話 夜のティータイム

夜希は子ども部屋の灯りを消してそっと出てきました。
部屋では遥珂とウェイが静かな寝息をたてています。

これで今日の一日の仕事は終わり。
ほっとしたところで、夜希はエフェクトに呼ばれました。

「木登り」カブスカウト
「木登り」Photo by TRO

「おつかれさま。一緒にいただきましょ。」

リビングにはアズマとエフェクトがいて。
マリアが軽い手作りのお菓子を準備し、美雨がお茶を入れています。
こうやってアズマ一家では夜のティータイムを時々楽しんでいるのです。

同席をすすめられて恐縮する夜希に
「あなたを見てると、息子が帰ってきた気分になるのよ。」
とエフェクトはにっこりと笑いかけました。

こんな風にマリアと夜希を家族の一員のように扱うアズマとエフェクトに、夜希はいつもとまどいと嬉しさを感じていました。

しかし会話の中にふいに混じるアズマの深い言葉、古くから生きてる者ならではの話題を聞くたび。
夜希はその都度はっとして己を戒めるのでした。

 やはりこの方は神なのだ…。
 家族同様なんてとんでもない。
 いま、こうして親しく過ごさせていただいてるだけで光栄なのだ。



エリア4に面した為信の部屋。
寝静まった塔のその一角で。
窓を全開して灯りを消し、夜希は夜具の上で膝を抱えて座っていました。

窓から流れ込む闇のエネルギーの優しさを感じながら目をつぶります。

ひとりぼっちで生まれ、醜い羽と闇のエネルギーを抱え。
伽羅弧という光の存在の世界で孤独に生きてきた夜希。

この部屋でこうしていると。
この家に長男として生まれながらも闇と孤独を抱えていた為信の、彼がここで過ごしていた頃の思念が家具や部屋そのものからじわりと伝わってきます。

そしてどうしても思い出さずにいられませんでした。
為信に「世間知らず」だと言ってしまったことを。

夜希はそれを思い出すごとに己を恥じていました。

出来る事なら彼に会って謝りたい…そんな気持ちも湧くのですが。
すでに国津神・大国主命を継がれたという情報が神官のルートで伝えられており。

やはり手の届かない存在であったかという思いと、再び友情を持ちたい、友としての心を伝えたいという思いの両方が夜希の心を揺らすのでした。



ふと、夜希はドアが開いた事に気が付きました。
見上げると、そこには遥珂が立っています。

「遥珂さま…?」
「夜中にごめんなさい。…この部屋でしか感じられないから。闇ってどんなのだろうって、ウェイと話してたんです。」

遥珂は夜希に近づいてきました。
夜希は優しく彼をベッドの上にのせ、遥珂が窓をのぞき、手をのばして、エリア4のエネルギーを感じようとしているのを黙って見守りました。

「ウェイは苦手みたい。でも僕は…なんともない。」
「そうですか。昼間より楽だとか、気持ちいいとか…そんなことはないですか?」
「それもない。おんなじです、先生。」

夜希は軽くとまどいました。

 どういうことだろう?
 白龍ならば、光の存在のはずだ。

黒龍の為信は、光の中にいるより闇の方が楽だと話していました。
そしてその気持ちは闇のエネルギーを持つ夜希にも通じるものでした。

しかし、光も闇も同じに感じるという事は…?


夜希は、このとき遥珂があけてしまったドアの向こうで、廊下に流れ出たエリア4の闇のエネルギーにふれたウェイが一人で泣いている事に気がつきませんでした。



つづく。
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つぶやき。
つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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