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2009年07月11日

第17話 飛行訓練[白龍物語]

第17話 飛行訓練

伽羅弧のエリア1。

その広大な大陸は険しい山と海に挟まれた自然いっぱいの世界。
緑の草原、森や自然の果樹園。そしてさらに深い森を抜けた先にある雲を突き抜ける厳しい山々に連なる、なだらかな斜面の地帯があります。

その斜面と崖のある地帯の一部を結界で区切り、アズマは遥珂とウェイの飛行訓練を始めました。

ボーイスカウトの川遊び
「川遊び」Photo by TRO

龍として飛ぶこと。
それはほったらかしていても龍ならばいつの間にかできるものでもありましたが、伽羅弧に住む龍としてこの空を飛ぶにはそれなりのルールを知る必要がありました。

ましてや遥珂は、宇宙すら飛べるタイプの白龍。
飛ぶとなると、そのスピードやエネルギーは他の龍とは違います。

アズマは、宇宙を物凄いスピードで飛び回る宇宙龍を見たことがありました。

「まるでエネルギーのタイプが違う。あれと同じ飛び方はとてもできない。」
アズマはどう教えようか、長い事思案していました。

子どもたちに対し、必ず教えなければならない安全のための禁忌事項もありました。

それは、エリア4に入り込むこと。
そして見境なく宇宙に飛び出すこと。

宇宙や異次元との出入りには伽羅弧全体に結界が張られているとはいえ、一部オープンにしてあるエリアもあり、自らの能力の限界を知らずして飛び出した場合、命の危険もありえます。
そうやって宇宙で命を失うこと…それは過去アズマ自身が体験してきた事でもあり。


エリア4の危険性については、やはり身をもって体験しよく知っている夜希も、二人に具体的に説明していました。

「わたしはエリア4で命を失ったことがあります。
 妖怪に襲われて、食べられてしましました。
 為信さまがわたしの魂を拾い上げてくださらなければ、いまこうやってここにいる事はできなかったんですよ。」

そして絶対に勝手にエリア4にいかないようにと何度も強調しました。
「どうしても必要と思うなら、私か、お父上さまにおっしゃってくださいね。その時は一緒に考えましょう。」

ウェイはエリア4の闇のエネルギーを嫌がっていたので心配はなかったのですが、全く平気な遥珂については、危うさを感じていました。

何より遥珂とウェイについては為信と違って身を守る剣の訓練は全く行っておらず。
もしいつか必要になるなら…と考えはするものの、アズマは、遥珂とウェイには剣を持つ日が来るとは感じていなかったのです。

そこでアズマはこれらの必要なルールを遥珂とウェイがきちんと理解するまで、龍として勝手に飛び回る事をふたりに厳しく禁止していました。


さていよいよ飛ぶことを教えてもらえると知った遥珂とウェイは大喜び。

「ねぇ!お姉ちゃんも一緒にいこうよ!」
喜んだ弟たちの誘いを、美雨は珍しく頑固に断りました。

昔、遥珂がまだほんの小さな赤ん坊だったころ、美雨は遥珂を抱いてとんだ事があったのです。
ところが遥珂はいきなり強力な推進力を発揮して、まるで弾丸に抱きついて飛んでるような怖さを美雨は味わってしまっていたのでした。



アズマは子どもたちを斜面のある草原地帯へ連れて行きました。

まず低い場所から軽く飛びはじめ、徐々に山の斜面を利用して高い空を飛ぶ練習をさせてから。

そうして風やエネルギーの流れに翻弄されない飛び方を覚えた後。
ある日、伽羅弧で最も高い雲の上にある長城から3匹の龍は伽羅弧上空へ飛び出したのです。

大きな青緑色の龍の左右に、七色の光を含んだような白さを持つ白龍と、青緑色と金色が混じった小さな龍が飛んでいきます。

 並んで飛ぶ。
 調子を合わせて飛ぶ。
 お互いのエネルギーを感じながら飛ぶ。
 進行方向にある障害物-他の生き物を含む-を感じながら飛ぶ。

少年たちはすぐに飛ぶことを覚え、夢中になりました。

そして、スピードを出したがっているふたりを感じ、アズマは海に誘導しました。
エフェクトが一番気に入ってる、長城から海までの一気飛び&ダイブ。

少年龍たちが喜んでこの遊びに興じてる間、アズマは上空で遥珂の飛び方をじっと観察しました。

…これは、教えなくとも自然に飛び方が変わるな。
アズマは無理をせずに自然に任せることにしたのでした。


つづく。
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つぶやき。
つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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