2009年07月12日
第20話 夜希の変化[白龍物語]
第20話 夜希の変化
夜の闇の訪れとともに眠りについた伽羅弧の世界。
闇の魑魅魍魎たちが棲むエリア4もまた月の光に静かに照らされていました。
しかしその下では闇の世界の住民たちが昼も夜もなくうごめいています。
夜の闇の訪れとともに眠りについた伽羅弧の世界。
闇の魑魅魍魎たちが棲むエリア4もまた月の光に静かに照らされていました。
しかしその下では闇の世界の住民たちが昼も夜もなくうごめいています。
遥珂は砂の間の異空間で、迷いながらまたもぐるぐると回り始めました。
彼には確かにわかるものが二つありました。
母はきっと彼を探して躊躇なくこの砂の中に飛び込んで来るだろうという事。
例えそれが命を失うことに繋がるとわかっていても。
そしてずっと彼を呼び続けているツインの声があるという事。
遥珂は心を決めました。
いま、真っ先にやるべきことを選ぶ。
最も優先すべきことは・・・?
『彩河。待ってて。僕は絶対行くから。約束する。それまで待っていて!』
『遥珂!…』
遥珂は泣き出すようなツインの声をふりきって上昇し、砂の中から飛び出しました。
それはちょうど、エフェクトが遥珂を追って砂漠に飛び込もうとする正にその瞬間。
飛び出した勢いですっぽりと黄龍の腕の中に飛び込むように入り込んだ白龍は、そのままその腕の中でうわーんと激しく泣き始めました。
夜希は医務院に運び込まれた後、激しい嘔吐に襲われ、
彼の翼からは灰色の羽根が次々と落ち、髪の毛も色を失って抜け始めました。
白龍に貫かれた傷らしきものは見当たらず。
それでも意識は戻らず、彼はただ激しく苦しんでいました。
しかし夜希はその性格からきてるのか、苦しみに抗わず、ただひたすら耐えているようにも見えます。
翌日になっても夜希は目を覚まさず。
嘔吐はおさまったものの、羽根も毛もすべて抜け落ち、皮膚はいったん赤黒く変化したのち、まるで徐々にミイラに向かうような、水分の抜けた状態に変わっていきました。
手の施しようもなく、夜希はただ、生命エネルギー状態を確認し不足分を補われながら経過観察されているだけでした。
「夜希は2度も蘇生手術を受けていますので、記録は万全なのですが…。」
担当した医務官は資料を提示しながら、アズマに説明しました。
「体質そのものといえるエネルギーがどんどん変化しているのです。その原因がわかりません。何か強い宇宙線でも浴びた時の症状にあたるのか、それを調査中です。」
どう治療したらいいのかわからない。
正直、医務官たちもお手上げ状態でした。
「夜希先生! 先生…ごめんなさい!僕…ぼく…」
アズマに連れられて医務院に来た遥珂は、初めて己のしでかした事を知りました。
ただ、ぶつかった。
遥珂はそううっすらと記憶していただけで、夜希に何をしたのか自分自身でもわからなかったのです。
さらに夜希を育てた神官長が夜希の姿をみて激しく嘆いたため、夜希はすぐに面会謝絶となってしまいました。
「僕は…どうしたらいいんだろう。」
遥珂はときどき夜中にこっそりと為信の部屋へ行き、エリア4のエネルギーを感じながらそんな事をひとりで考えました。
『彩河!会いたいよ…。でも…でもいまは行けない…!』
砂漠から飛び出した直後に伝わってきた彩河の涙声。
でもいま彩河は落ち着いているようでした。
『うん…待ってる。でも、絶対会えるよね?』
『約束だ!絶対行くよ。』
そういいながらも、遥珂は夜希にしてしまった事が心に突き刺さり、何も手につかなく、動けなくなるのでした。
つづく。
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物語は1日2話UPしています。
彼には確かにわかるものが二つありました。
母はきっと彼を探して躊躇なくこの砂の中に飛び込んで来るだろうという事。
例えそれが命を失うことに繋がるとわかっていても。
そしてずっと彼を呼び続けているツインの声があるという事。
遥珂は心を決めました。
いま、真っ先にやるべきことを選ぶ。
最も優先すべきことは・・・?
『彩河。待ってて。僕は絶対行くから。約束する。それまで待っていて!』
『遥珂!…』
遥珂は泣き出すようなツインの声をふりきって上昇し、砂の中から飛び出しました。
それはちょうど、エフェクトが遥珂を追って砂漠に飛び込もうとする正にその瞬間。
飛び出した勢いですっぽりと黄龍の腕の中に飛び込むように入り込んだ白龍は、そのままその腕の中でうわーんと激しく泣き始めました。
夜希は医務院に運び込まれた後、激しい嘔吐に襲われ、
彼の翼からは灰色の羽根が次々と落ち、髪の毛も色を失って抜け始めました。
白龍に貫かれた傷らしきものは見当たらず。
それでも意識は戻らず、彼はただ激しく苦しんでいました。
しかし夜希はその性格からきてるのか、苦しみに抗わず、ただひたすら耐えているようにも見えます。
翌日になっても夜希は目を覚まさず。
嘔吐はおさまったものの、羽根も毛もすべて抜け落ち、皮膚はいったん赤黒く変化したのち、まるで徐々にミイラに向かうような、水分の抜けた状態に変わっていきました。
手の施しようもなく、夜希はただ、生命エネルギー状態を確認し不足分を補われながら経過観察されているだけでした。
「夜希は2度も蘇生手術を受けていますので、記録は万全なのですが…。」
担当した医務官は資料を提示しながら、アズマに説明しました。
「体質そのものといえるエネルギーがどんどん変化しているのです。その原因がわかりません。何か強い宇宙線でも浴びた時の症状にあたるのか、それを調査中です。」
どう治療したらいいのかわからない。
正直、医務官たちもお手上げ状態でした。
「夜希先生! 先生…ごめんなさい!僕…ぼく…」
アズマに連れられて医務院に来た遥珂は、初めて己のしでかした事を知りました。
ただ、ぶつかった。
遥珂はそううっすらと記憶していただけで、夜希に何をしたのか自分自身でもわからなかったのです。
さらに夜希を育てた神官長が夜希の姿をみて激しく嘆いたため、夜希はすぐに面会謝絶となってしまいました。
「僕は…どうしたらいいんだろう。」
遥珂はときどき夜中にこっそりと為信の部屋へ行き、エリア4のエネルギーを感じながらそんな事をひとりで考えました。
『彩河!会いたいよ…。でも…でもいまは行けない…!』
砂漠から飛び出した直後に伝わってきた彩河の涙声。
でもいま彩河は落ち着いているようでした。
『うん…待ってる。でも、絶対会えるよね?』
『約束だ!絶対行くよ。』
そういいながらも、遥珂は夜希にしてしまった事が心に突き刺さり、何も手につかなく、動けなくなるのでした。
つづく。
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物語は1日2話UPしています。
Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。