2010年09月30日
夢希6 結婚
夢希6 「結婚」
「わかってるわよ、路。あの子はあなたが手を出すタイプの娘じゃないことはね。」
縁(ゆかり)はため息をつきました。
「お母さまに魅惑の力を封印するように提案するわ。特に若い神子たちにはね。
性教育もちゃんとやらなきゃと思っていた矢先にこれだもの。」
縁は部屋の中をうろうろと歩き回りながら独り言のように続けます。
「雫はまだぬいぐるみを抱いて寝るほどのネンネなのよ?それがあなたのベッドに潜り込んでしまったなんて。全く。」
そして茫然自失状態の夫の由雄に近づくと、優しく声をかけながら隣の部屋へ連れて行きました。
その間に他の者たちがやってきて素早く割れたティーポットが片づけられていきます。
茫然自失状態は路も同じ。
しかし彼の場合は少し違い「またか…」という言葉が頭の中をぐるぐるとまわっているのでした。
由雄はそっと娘のもとへ行きました。
頬を赤くそめて目を真っ赤に泣きはらしたまだ年若い娘が、
すでに女としての道を歩み始めていることを考えます。
「お父さま…」
柔らかく鈴の転がるような声で雫は由雄を呼びました。
由雄はベッドで泣いていた娘のそばにある椅子に腰掛けました。
幾夜、ここでこの椅子に腰掛けては寝付くまでの間、お話しをしたり物語を読んできかせたりしたことだろう。
子の少ない縁と由雄夫妻にとって、末っ子の雫は特に可愛い、宝物でした。
「雫さま。私はあなたさまの父親として…路さまに闘いを挑みたく感じています。」
雫の目が大きく見開かれ、彼女は起き上がりました。
「私は神官として、神子さまに刃を向けるわけにいきません。
ですからそれは私がここ伽羅弧で生きていくわけに行かないことを意味します。」
由雄の蒼ざめた、覚悟を決めたような表情をみて雫は真っ青になって震えました。
涙がぽろぽろとこぼれます。
「…お父さま…」
首を横に振って、止めて欲しいと頼みました。
「解りますか?…どれだけの大事をなさったのか。」
由雄の悲しげな声に、雫はさらにしゃくりあげながら
「ごめんなさい」
と繰り返しました。
家で待っていた夢希は。
雫を路の部屋に手引きしたあと、女官が廊下をやってくるのに気がついて自分の部屋へ戻っており、その夜は雫が戻ってこないことにやきもきしながら過ごしていただけ。
何があったのかは知りませんでした。
そして朝、路が蒼ざめて雫を連れだすのに気がつき、そのまま部屋で待っていたのです。
「私が叱るわ。あなたには無理でしょう?何より、当事者だし。」
縁は路にそういうと、夢希を連れてくるようにお世話係に心話で連絡をとりました。
夢希は縁に厳しく叱られ、反省はしたものの。
最後には路に「私の最大のお願い」として雫と結婚してほしいと頼み込みました。
路はふかーいため息をつき。
しかし結局。
「ああ、そのつもりだ。そうするよ。」
と答え。
縁を呆れさせました。
こうして雫は『身内のみ』…伽羅弧に住まう神々と女神たち、そして神子たちが揃う華々しい結婚式で祝われて、初恋の相手の『路おじさま』のもとへ可愛らしい花嫁として嫁ぎました。
そしてその後。
縁は母であるアマテラス神の許可を貰って、未成年の神子たちの『魅惑の力』を封じました。
解除のキーは、パートナーと本人が共に本気で魅惑の力を望んだ時。
さらに弟・廻にのせられ
「あなたに任せる位なら私が」
と奮起。
山の寺子屋で相当な年齢に達した神子たち相手に性教育の講義を担当することになってしまったのでした。
つづく。
性教育もちゃんとやらなきゃと思っていた矢先にこれだもの。」
縁は部屋の中をうろうろと歩き回りながら独り言のように続けます。
「雫はまだぬいぐるみを抱いて寝るほどのネンネなのよ?それがあなたのベッドに潜り込んでしまったなんて。全く。」
そして茫然自失状態の夫の由雄に近づくと、優しく声をかけながら隣の部屋へ連れて行きました。
その間に他の者たちがやってきて素早く割れたティーポットが片づけられていきます。
茫然自失状態は路も同じ。
しかし彼の場合は少し違い「またか…」という言葉が頭の中をぐるぐるとまわっているのでした。
由雄はそっと娘のもとへ行きました。
頬を赤くそめて目を真っ赤に泣きはらしたまだ年若い娘が、
すでに女としての道を歩み始めていることを考えます。
「お父さま…」
柔らかく鈴の転がるような声で雫は由雄を呼びました。
由雄はベッドで泣いていた娘のそばにある椅子に腰掛けました。
幾夜、ここでこの椅子に腰掛けては寝付くまでの間、お話しをしたり物語を読んできかせたりしたことだろう。
子の少ない縁と由雄夫妻にとって、末っ子の雫は特に可愛い、宝物でした。
「雫さま。私はあなたさまの父親として…路さまに闘いを挑みたく感じています。」
雫の目が大きく見開かれ、彼女は起き上がりました。
「私は神官として、神子さまに刃を向けるわけにいきません。
ですからそれは私がここ伽羅弧で生きていくわけに行かないことを意味します。」
由雄の蒼ざめた、覚悟を決めたような表情をみて雫は真っ青になって震えました。
涙がぽろぽろとこぼれます。
「…お父さま…」
首を横に振って、止めて欲しいと頼みました。
「解りますか?…どれだけの大事をなさったのか。」
由雄の悲しげな声に、雫はさらにしゃくりあげながら
「ごめんなさい」
と繰り返しました。
家で待っていた夢希は。
雫を路の部屋に手引きしたあと、女官が廊下をやってくるのに気がついて自分の部屋へ戻っており、その夜は雫が戻ってこないことにやきもきしながら過ごしていただけ。
何があったのかは知りませんでした。
そして朝、路が蒼ざめて雫を連れだすのに気がつき、そのまま部屋で待っていたのです。
「私が叱るわ。あなたには無理でしょう?何より、当事者だし。」
縁は路にそういうと、夢希を連れてくるようにお世話係に心話で連絡をとりました。
夢希は縁に厳しく叱られ、反省はしたものの。
最後には路に「私の最大のお願い」として雫と結婚してほしいと頼み込みました。
路はふかーいため息をつき。
しかし結局。
「ああ、そのつもりだ。そうするよ。」
と答え。
縁を呆れさせました。
こうして雫は『身内のみ』…伽羅弧に住まう神々と女神たち、そして神子たちが揃う華々しい結婚式で祝われて、初恋の相手の『路おじさま』のもとへ可愛らしい花嫁として嫁ぎました。
そしてその後。
縁は母であるアマテラス神の許可を貰って、未成年の神子たちの『魅惑の力』を封じました。
解除のキーは、パートナーと本人が共に本気で魅惑の力を望んだ時。
さらに弟・廻にのせられ
「あなたに任せる位なら私が」
と奮起。
山の寺子屋で相当な年齢に達した神子たち相手に性教育の講義を担当することになってしまったのでした。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(3)
│夢希
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夢希7 「夢」結婚式の晩。楽しく華やかだった結婚式の話題には尽きることなく、まるで修学旅行気分できゃあきゃあ騒ぐ娘たちを静かに見守っていた路は、ほっとくと朝まで騒ぎそうだ...
夢希7 夢【pyo's room】at 2010年10月01日 07:05
この記事へのコメント
>「またか…」という言葉が頭の中をぐるぐる
路ってそういう運命なんでしょうね(苦笑)
またか〜は私も同感でした♪
でも何が幸いするかわかんないもんですよね。
不思議な縁だな〜というか、うまく回ってるものだな〜って今は思います。
私も自分の結婚ってばなんかのはずみだったとか思ってたけど運命だったようですし(笑)ぷぷ♪
路ってそういう運命なんでしょうね(苦笑)
またか〜は私も同感でした♪
でも何が幸いするかわかんないもんですよね。
不思議な縁だな〜というか、うまく回ってるものだな〜って今は思います。
私も自分の結婚ってばなんかのはずみだったとか思ってたけど運命だったようですし(笑)ぷぷ♪
Posted by ちょこ at 2010年10月02日 13:25
でもでも、路が2度も魅惑の力に人生変えられた(?)おかげで、その2つのお話で私とっっっても影響受けまくりでした♪
路は苦労しただろうけど、とっても感謝してます!
ありがとー路♪
路もヘヴンも雫も大好きよヽ(o^▽^o)ノ。・:*:☆
路は苦労しただろうけど、とっても感謝してます!
ありがとー路♪
路もヘヴンも雫も大好きよヽ(o^▽^o)ノ。・:*:☆
Posted by ちょこ at 2010年10月02日 13:28
●ちょこさん
ほんと、なんていう運命つーか…
書いてる私がいうなよ、つーか。^^;
ちょこさんにいい影響あったということでは
結果オーライでよかったです~。
という内容は、これからUPですけどね。☆
ほんと、なんていう運命つーか…
書いてる私がいうなよ、つーか。^^;
ちょこさんにいい影響あったということでは
結果オーライでよかったです~。
という内容は、これからUPですけどね。☆
Posted by pyo
at 2010年10月03日 23:18

迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。