2010年10月01日
夢希7 夢
夢希7 「夢」
結婚式の晩。
楽しく華やかだった結婚式の話題には尽きることなく、まるで修学旅行気分できゃあきゃあ騒ぐ娘たちを静かに見守っていた路は、ほっとくと朝まで騒ぎそうだと判断。
二人に寝る時間だよと声をかけました。
階段を上り、その先の廊下を通って夢希の部屋の前につきます。
ドアをあけた夢希が振り返ると、路は
「お休み、いい夢を」
と、いつものように額にキスしました。
そしてそっと雫の肩を抱いてその先に連れて行きます。
廊下のコーナーを挟んだ向こうのドアに、父と親友が消えていく瞬間。
夢希はこれがいつものお泊まりとは違うということを、やっと理解しました。
いきなり、何か大切なものが壊れた気がして、急いでベッドに潜り込むと頭から夜具をかぶり、シーツの中で丸まりました。
雫もまた夢希と同じように感じたよう。
肩を抱いて歩いていく路の顔を見上げる事ができず、ただただ緊張して歩を進めました。
路はドアをあけながら雫のその表情を見、ふっと表情をくずしました。
寝室に入ると、雫に中にあるもう一つのドアを示します。
「君のために、君のお母さまからプレゼントだ。見てごらん。」
雫が驚いて路をみあげると、路は優しく微笑みドアをあけて中に入るよう雫を促しました。
その中は広い個室になっていました。
もともとは何も存在しなかった空間を、縁は娘のためにと女神のエネルギーを使い、ひとつの豪華な部屋に造り替えたのです。
衣装室があり、豪華な化粧台があり、さらに奥にはバスルーム。
そして子どもの頃から雫の世話をしてきたお世話係が2名、中で待っていました。
「…お父さま…!」
雫は、お世話係でもある父の由雄にかけより、抱きつきました。
路と由雄は顔を見合わせてうなずきあうと、路はドアを閉めて新妻の準備を待つことにしました。
雫はお世話係の世話を受けて温かいバスに入り、髪を十分にとかれて温かいハーブティを飲み、ほっと力を抜きました。
しかし次の瞬間、出された寝間着を見て真っ赤になり緊張。
母の縁が準備した新妻の寝間着は、いまの雫にはとても着こなせそうにない大人っぽい服でした。
由雄はにっこりとうなずくと、いつも雫が着ているお気に入りの寝間着を出してきました。
夜間、夢希は夢をみて飛び起きました。
全身汗でびっしょり。
「夢…もう見ないと思ってたのに。」
夢希は怖かった夢にしばし涙を浮かべてから、
もう父に甘えて夜中に呼び出す訳に行かないのだと気付きました。
ベッドから出て、汗びっしょりの服を着替えます。
再びベッドに戻る気になれず、夢希はそっと部屋から抜け出しました。
その頃。
路もまた目を覚ましていました。
胃がどうにかなったかというような気持ち悪さ。
初めての宇宙遊泳で宇宙酔いに苦しんだことを思い出します。
何もせずにただ横で寝かしつけただけの新妻を起こさないよう、そっとベッドから抜け出して自分のバスルームへ。
そこで不意に気持ち悪さがおさまり、はたと原因に気付きました。
「雫…?」
タオルと洗面器をもって様子をうかがってみます。
案の定、初めてのつわりにおそわれた少女は目に涙を浮かべて必死で気持ち悪さとたたかっていました。
「吐いていいんだよ」
優しく声をかけて介助するも、雫は首を横にふり、枕に顔を埋めるだけ。
やがて泣き声が小さく聞こえました。
「…お父さま…」
路はふっと微笑みました。
やはりこういう時は由雄の方が頼りになる。
形ばかりの夫となったばかりの『憧れのおじさま』に、悪阻という少女にとってのこの大きな醜態は自分で許せるものではなく。
常に大事に世話をしてくれてきた、父でありお世話係でもある由雄を呼びたくなっても仕方ないこと。
雫はまだそれ程に幼いのだと路は諦めたように微笑むと、心話で縁と由雄を呼び出しました。
つづく。
ドアをあけた夢希が振り返ると、路は
「お休み、いい夢を」
と、いつものように額にキスしました。
そしてそっと雫の肩を抱いてその先に連れて行きます。
廊下のコーナーを挟んだ向こうのドアに、父と親友が消えていく瞬間。
夢希はこれがいつものお泊まりとは違うということを、やっと理解しました。
いきなり、何か大切なものが壊れた気がして、急いでベッドに潜り込むと頭から夜具をかぶり、シーツの中で丸まりました。
雫もまた夢希と同じように感じたよう。
肩を抱いて歩いていく路の顔を見上げる事ができず、ただただ緊張して歩を進めました。
路はドアをあけながら雫のその表情を見、ふっと表情をくずしました。
寝室に入ると、雫に中にあるもう一つのドアを示します。
「君のために、君のお母さまからプレゼントだ。見てごらん。」
雫が驚いて路をみあげると、路は優しく微笑みドアをあけて中に入るよう雫を促しました。
その中は広い個室になっていました。
もともとは何も存在しなかった空間を、縁は娘のためにと女神のエネルギーを使い、ひとつの豪華な部屋に造り替えたのです。
衣装室があり、豪華な化粧台があり、さらに奥にはバスルーム。
そして子どもの頃から雫の世話をしてきたお世話係が2名、中で待っていました。
「…お父さま…!」
雫は、お世話係でもある父の由雄にかけより、抱きつきました。
路と由雄は顔を見合わせてうなずきあうと、路はドアを閉めて新妻の準備を待つことにしました。
雫はお世話係の世話を受けて温かいバスに入り、髪を十分にとかれて温かいハーブティを飲み、ほっと力を抜きました。
しかし次の瞬間、出された寝間着を見て真っ赤になり緊張。
母の縁が準備した新妻の寝間着は、いまの雫にはとても着こなせそうにない大人っぽい服でした。
由雄はにっこりとうなずくと、いつも雫が着ているお気に入りの寝間着を出してきました。
夜間、夢希は夢をみて飛び起きました。
全身汗でびっしょり。
「夢…もう見ないと思ってたのに。」
夢希は怖かった夢にしばし涙を浮かべてから、
もう父に甘えて夜中に呼び出す訳に行かないのだと気付きました。
ベッドから出て、汗びっしょりの服を着替えます。
再びベッドに戻る気になれず、夢希はそっと部屋から抜け出しました。
その頃。
路もまた目を覚ましていました。
胃がどうにかなったかというような気持ち悪さ。
初めての宇宙遊泳で宇宙酔いに苦しんだことを思い出します。
何もせずにただ横で寝かしつけただけの新妻を起こさないよう、そっとベッドから抜け出して自分のバスルームへ。
そこで不意に気持ち悪さがおさまり、はたと原因に気付きました。
「雫…?」
タオルと洗面器をもって様子をうかがってみます。
案の定、初めてのつわりにおそわれた少女は目に涙を浮かべて必死で気持ち悪さとたたかっていました。
「吐いていいんだよ」
優しく声をかけて介助するも、雫は首を横にふり、枕に顔を埋めるだけ。
やがて泣き声が小さく聞こえました。
「…お父さま…」
路はふっと微笑みました。
やはりこういう時は由雄の方が頼りになる。
形ばかりの夫となったばかりの『憧れのおじさま』に、悪阻という少女にとってのこの大きな醜態は自分で許せるものではなく。
常に大事に世話をしてくれてきた、父でありお世話係でもある由雄を呼びたくなっても仕方ないこと。
雫はまだそれ程に幼いのだと路は諦めたように微笑むと、心話で縁と由雄を呼び出しました。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│夢希
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夢希8 「休職」「お家に帰りたい…」 雫は、慌ててやってきた両親にしゃくりあげながら小さな声で言いました。大人たちは顔を見合わせ、思わず苦笑しうなずきあいました。
夢希8 休職【pyo's room】at 2010年10月03日 23:14
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。