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2016年08月15日

エスペラルーダの庭2[伽羅弧物語番外編]

エスペラルーダの庭2[伽羅弧物語番外編]

前回のお話しはこちら


「彼」は、ちらちらと2将軍たちが話している姿を見ていました。

余所見をしながら剣の稽古をしていると
ここぞとばかりに相手方が隙を狙って斬りつけてきます。
それをうまくかわし、すぐに自分の剣で相手の剣を叩き落としました。

悔しそうな顔をする組み相手にニヤリと笑うと、
彼は礼をして練習を終えました。

汗を拭き水を飲みながら、再び、2将軍の様子を見ます。

『こっち向け』
彼は心でつぶやきました。
『いつか…剣を交わしたいんだ。俺なら・・・やれる!』

彼には自信がありました。
そして将軍との試合に勝ち、みんなの喝采を浴びる己の姿を夢想し
つい持ち上がってくる唇の端を隠すように、水を飲みました。

エスペラルーダの庭2[伽羅弧物語番外編]

ルダ将軍は笑顔でサイ将軍に話しかけていました。
「どうだ、俺達も一戦。」

サイ将軍はちらりと練習中の兵士たちを見ると、答えました。
「止めとこう。おぬしの剣に斬られたら、いつまでも治らない傷になる。痛くて仕方ない。」

ははは・・・と将軍たちが笑います。
その笑いの中には、かつてお互いが敵味方に別れて戦いあった
神代の戦いの時代の記憶が含まれていたのだけれど
はたで見る兵士たちにそれがわかるはずも無く。



『へ!情けない。』
彼は心のなかでつぶやきました。
『俺ならすぐに相手して、どっちが強いか兵士たちに示してやるのに。』

実際、兵士たちの中ではこの浮遊島の四将軍のうち
誰がもっとも優れた剣士なのか知りたい、と
思うものが少なくありませんでした。


ルダ将軍の剣は特殊な形をしていて、
これを使いこなせる者は宇宙広しといえど他におらず、と言われており。

サイ将軍は身体が大きく、岩をぶち割るような力があり。
何人かが束になってかかって剣を交えた途端、その力で投げ飛ばされたのを、皆知っていました。

そのためか、サイ将軍の俊敏な動きを知るものはあまりなく。
ただ大きいだけの…とつい錯覚されがち。


日々、実戦にむけた訓練を積んでいると
戦いで己が勝つことを至上と考え始める兵士たちがおり。

力を誇示し、皆に認められることこそ
自分の価値があるのだと思いはじめると
サイ将軍の大きさはぶち破るべき壁にも感じはじめます。

そこに・・・
闇に取り込まれる危険性があるのだということに
彼らは全く自らを当てはめて考えてはいませんでした。

エスペラルーダの庭2[伽羅弧物語番外編]


ある日、エスペラルーダの運命を告げる会議がありました。

上官から告げられた『いつ始まるか分からない戦い』について
彼はこう思いました。

「俺は、間違わない。
 いくら闇が心に襲ってこようと、仲間たちを見失うものか。
 俺はそんなに心弱い奴じゃない。」

それは彼の中で確固たる思いでした。

そして同じ思いを仲間たちと語り合い、戦友として結束を高めようと話しました。

本番が近づく嬉しさに、彼らは気持ちがたかぶるのを感じ、喜びました。

つづく。



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Posted by 町田律子(pyo) at 08:15│Comments(0)エスペラルーダ物語
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