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2010年03月20日

ヘヴン37-女神スセリビメ

ヘヴン37「女神スセリビメ」



パーティの翌朝、朝日が昇る頃。

まるでエネルギーに殴られるような呼び出し波動を受け取って、径(けい)、路(みち)、廻(かい)の三兄弟と青夢(セーム)は飛び起きました。

呼び出したのは、青龍アズマ。
「エリア2の作業を急ピッチで済ませろ!すぐだ!」

女神たちは出産・育児休暇中。
エリア2の浄化作業はかなりトーンダウンしていました。

しかしその日の日暮れには「本気を出せば出来るじゃないか」とアズマに言われるだけの成果を四人はあげ、しかしそれを喜ぶ元気もないほど疲れ切ったのでした。

ヘヴン37-女神スセリビメ


その日、ヘヴンは、医務院へ呼び出されました。

そろそろアマテラスの産屋を出て、ヘヴンの両親の家に移ろうかと婚約者のルルと相談しながら、二人の新居探しの話しに花が咲きます。


示された診察室に入ると、医務院長のハタと一緒に一人の女性が立っていました。

黒髪を結いあげ、古代日本の服装をした女神-スセリビメの、零(れい)でした。

「あなたがヘヴンね。少しあなたのエネルギーを読ませて。」
零はてきぱきと動き、ヘヴンの身体のエネルギーを読んでうなずきました。

「私は全てをリセットする力があるの。
 あなたの肉体の傷をリセットして、もとに戻せます。そうね、一年ほど前くらいに。いかが?」

ヘヴンは驚きました。
つきそいで来ていたルルが、嬉しそうな笑顔になります。

しかし、ヘヴンは一瞬顔を曇らせ、そしてかすれたようなハスキーボイスで言いました。
「…それは、夢希(ゆめき)さまを…御子を身ごもる前の僕に戻る、ということでしょうか?」

「ええ。でも夢希が消えるわけじゃないわ。
 あなたの肉体を取り戻すだけ。手も足ももとにもどり、綺麗な身体に戻るわ。」

「お断りします。」
躊躇なく、きっぱりと言い切ったヘヴンに、一同は驚きました。

ヘヴンは、言った後で微かに震え、目をつぶって息をのんだあと。
ゆっくりと、震える声で続けました。

「僕は、夢希さまを産んだこの身体を愛しています。
 手足がないのは辛いけれど、僕のこの肉体の命をつなぎとめてくれたのが夢希さまで、医務院のみなさまにも大事に治療していただいたし、そして出産までの間、お世話係のみんなが僕の身体を大切にしてくれて…おかげで僕はいっぱい学びました。
 僕はこのしょーもない肉体にすごく感謝してるし、愛しくもあるんです。
 …夢希さまを産んだつながりのあるこの肉体を失くしたくありません。」


しばらく、その場が静まり返り。

やがて零がうなずいて言いました。
「わかったわ。私も母親だし、気持ちはわかる。
 それにあなたのきっぱりとした覚悟がとても気に入ったわ。
 あなたは大いなる道を歩んできたのね。
 そしてそこから後戻りしたくないのね。」

ヘヴンは肯きました。


その時、わっとルルが泣き出すと部屋を飛び出していきました。

「ルル!」
ヘヴンは慌てて車いすの向きを変えます。
しかしルルの姿は見えなくなっていました。


つづく。




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Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(9)ヘヴン
この記事へのコメント
久々の零の登場ヘヴンの思い入れもわかる気がして…少しウルッとしましたが。ルル〜どしたの

遥珂派遣企画ってなんでしょうワクワク待ちます〜

アズマはワイン蔵の事、特に怒ってないのかな(なぜか私がホッとしたり笑)
Posted by ちょこ at 2010年03月20日 07:16
ヘヴンの覚悟の言葉、グサッときました。

これまでの人生、障害受容してると思ってた。
でも、しきれてなかったんですね。
障害に対する恨みはない。
だけど、常にどのように見られてるんだろうという不安と負けるもんか!という気持ちがありました。
肩の力が、これで少しは抜けるかもしれません。


気づかせてくれてありがとう!
ヘヴン、大いなる神官です!
Posted by ゆきちゃん at 2010年03月20日 07:45
ヘヴンの気持ちもわかるし、ルルの気持ちも
わかる。
すっごく複雑ですね。
わ~ん!がんばれ二人とも~!
Posted by そら at 2010年03月20日 09:57
うーん。。。

ヘブンが自分の在りのままを認めるまでの過程は、すごく苦しいものだったろうし、それだけに学べた事や受け入れる事が出来た時の感動も大きかったのは解るんですけど、、、

だからこそ、
もういいのに。

なんか…私には「覚悟」というより「固執」に感じられちゃって(´`)

ヘブンの決断は立派だし勇気があるし、到底私には真似出来ないですけど、でもここは、ルルの為にも。。。

私の考えは浅いのかな(汗
もしかしたら、「こうなったらいいな」っていう私的な思いだけで感じてるだけかもしれません^^;
Posted by あみ at 2010年03月20日 11:09
すべてを受け入れて進もうとしてるヘヴンに脱帽(^^)
そんなヘヴンに、ルルが反応したってことは・・・
がんばってルル~^^;
Posted by minto at 2010年03月20日 15:53
五体満足で平穏無事ならどれだけいいことか…と思わなくはないですが。障害があるからこそ気付くこともまたある訳で。私自身、障害を持つ前と今では全然違う世界にいます。
零ちゃんの申し出は非常に魅力的です。でも、私より重い症状だったり、既に光を失いながらも明るく元気に生きてる人を、私は知っているんですよね。
不便だけど、精一杯頑張ってる人達や、ヘブンみたいな生き方、覚悟。今の私には足りない部分ですが、いつかそうな風になれたらなぁ…て思います。

…すみません。やっぱりまだ自分の障害のこと受け入れきれてないみたいです(^^;
Posted by 鈴ねこ at 2010年03月20日 18:31
●ちょこさん
うふふ、色々ひっぱっちゃいますが
もうしばらくお待ちくださいね。


●ゆきちゃん
そうなんですかー。
ヘヴンの言葉は、私にも意外だったんです。
そういっていただけると、やっぱり必要な言葉だったのかと
ほっとします。


●そらさん
複雑なのは…実はこれからです。
ルルの気持ち、すっごい複雑な背景がありましたー。


●あみさん
そうそう、私も「それは固執じゃない?手放していいのでは?」
と思いました。
でも、ヘヴンのその結論を受け入れる・・・から
次のステップが始まるようです。


●mintoさん
ヘヴンの決断、ルルの反応…
それぞれがそれぞれの視点での想いがあるんだなーっと
あらためて考えさせられました。


●鈴ねこさん
うん、零ちゃんの申し出は魅力的ですよね。
私も、私自身にあてはめていろいろ考えました。
そういう私自身を受け入れられるか。
ヘヴンの言葉は、私にも重い意味をもっています。
Posted by pyopyo at 2010年03月21日 18:23
このゲンちゃんの顔で
「急ピッチで済ませろ!すぐだ!」というセリフが想像できない・・・・(笑)
Posted by ゆんたん at 2010年03月22日 09:08
●ゆんたん
げんちゃんの声しってるから尚更ねぇ。(^m^)
Posted by pyopyo at 2010年03月22日 23:01
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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