2009年06月04日
黒龍物語07-母の涙
第7話 母の涙
きらきら光る波しぶき。
白い砂。
笑う子供たち。
紫乃は下の3人の子どもたちを連れて
そしてエフェクトは為信を連れて
伽羅弧エリア1の海岸に遊びにきていました。
きらきら光る波しぶき。
白い砂。
笑う子供たち。
紫乃は下の3人の子どもたちを連れて
そしてエフェクトは為信を連れて
伽羅弧エリア1の海岸に遊びにきていました。
やがてアズマが出向き、アーシャスも上の5人の子たちを連れて合流。
にぎやかになった一行は、海から移動して明るい森へ、そして緑いっぱいの丘の上へ。
一日中、子どもたちを遊ばせた普通の家族。
傍目にはそんな風に表現できるかもしれません。
ただそれが、伽羅弧のトップ3である神々のご一家、ということで、目立たないよう、精鋭の護衛たちがごーっそりついていたり、お世話をする女官たちがいたことを除けば。
日暮れ時にはクリスタル城に全員で戻り、お茶を飲みながら歓談。
やがてアーシャスが仕事に出かけ、
アズマも軍務に戻り。
寝ちゃった子どもたちの顔をみながら、紫乃とエフェクトのふたりは、自然に母親同士の会話を始めていました。
「為信が…抱えている運命をよくよく考えてみたの。」
ぼそっとエフェクトがつぶやくように言いました。
「いずれ…私はまた別の子を産むかもしれない。その時はおそらく、青龍の子か黄龍の子でしょう。為信が自分だけ種類の違う黒龍だということに気づいたら。」
「…。」
「力をつけて大人になったとして、為信はあの蜘蛛と闘うことになる。そして、戦う相手は蜘蛛だけじゃない…。」
話すうちに、エフェクトの目に涙が浮かびます。
「いっそ、何も知らず、何もできない幼い子どものままでいてくれたら。このまま、ずっと…。」
「エフェクト…。」
紫乃はエフェクトの肩を抱きました。
「ええ、私も思うことがあるわ。私たちがこんな立場じゃなくて。子どもたちもそれぞれ何もトラブルも課題もない、幸せな、ただ退屈なほど平凡で幸せな日々を送ってくれたらって。」
紫乃はちょっと遠い目をしました。
「普通に、学校に通わせたかったのよ。どの子たちも。でもできなかった。力が特殊で無理だった。
それで朔間に預ける形になったけど、でも、ますます他と距離を置くだけ。そういう運命だと思えばそれまでなんだろうけど。」
もともと、そんな平凡な生まれではない父と母を持つ子たち。
それでも親として願うはただ、平凡な幸せ。
それはあまりにも贅沢な望みなのかもしれない。
ふたりの女神は、お互いの心を打ち明けながら、
いまひと時だけはただの母親としての心境を語りあいました。
「おかさん!」
いきなり、寝てた為信が飛び起きました。
「おかさん!泣いてるの?痛いの?」
走り寄った為信はエフェクトの腕の傷にそっと手を当てます。
昼間、ピクニック中にちょっと岩で負ったかすり傷でした。
しかしそのかすり傷のあとが、為信の手の癒しをうけてみるみる消えていきます。
「為信!ありがとう!もう痛くないわ。」
エフェクトはにっこり笑って為信を抱きしめました。
このまま。
このまま、時が止まってくれればいいのに。
しかしエフェクトは同時に、息子に変化の兆しが表れていることに気が付きました。
つい昼間まで5歳くらいだった為信は、いま、7歳くらいまで成長していたのでした。
つづく。
「黒龍物語」目次はこちら 用語、キャラクター解説はこちら
にぎやかになった一行は、海から移動して明るい森へ、そして緑いっぱいの丘の上へ。
一日中、子どもたちを遊ばせた普通の家族。
傍目にはそんな風に表現できるかもしれません。
ただそれが、伽羅弧のトップ3である神々のご一家、ということで、目立たないよう、精鋭の護衛たちがごーっそりついていたり、お世話をする女官たちがいたことを除けば。
日暮れ時にはクリスタル城に全員で戻り、お茶を飲みながら歓談。
やがてアーシャスが仕事に出かけ、
アズマも軍務に戻り。
寝ちゃった子どもたちの顔をみながら、紫乃とエフェクトのふたりは、自然に母親同士の会話を始めていました。
「為信が…抱えている運命をよくよく考えてみたの。」
ぼそっとエフェクトがつぶやくように言いました。
「いずれ…私はまた別の子を産むかもしれない。その時はおそらく、青龍の子か黄龍の子でしょう。為信が自分だけ種類の違う黒龍だということに気づいたら。」
「…。」
「力をつけて大人になったとして、為信はあの蜘蛛と闘うことになる。そして、戦う相手は蜘蛛だけじゃない…。」
話すうちに、エフェクトの目に涙が浮かびます。
「いっそ、何も知らず、何もできない幼い子どものままでいてくれたら。このまま、ずっと…。」
「エフェクト…。」
紫乃はエフェクトの肩を抱きました。
「ええ、私も思うことがあるわ。私たちがこんな立場じゃなくて。子どもたちもそれぞれ何もトラブルも課題もない、幸せな、ただ退屈なほど平凡で幸せな日々を送ってくれたらって。」
紫乃はちょっと遠い目をしました。
「普通に、学校に通わせたかったのよ。どの子たちも。でもできなかった。力が特殊で無理だった。
それで朔間に預ける形になったけど、でも、ますます他と距離を置くだけ。そういう運命だと思えばそれまでなんだろうけど。」
もともと、そんな平凡な生まれではない父と母を持つ子たち。
それでも親として願うはただ、平凡な幸せ。
それはあまりにも贅沢な望みなのかもしれない。
ふたりの女神は、お互いの心を打ち明けながら、
いまひと時だけはただの母親としての心境を語りあいました。
「おかさん!」
いきなり、寝てた為信が飛び起きました。
「おかさん!泣いてるの?痛いの?」
走り寄った為信はエフェクトの腕の傷にそっと手を当てます。
昼間、ピクニック中にちょっと岩で負ったかすり傷でした。
しかしそのかすり傷のあとが、為信の手の癒しをうけてみるみる消えていきます。
「為信!ありがとう!もう痛くないわ。」
エフェクトはにっこり笑って為信を抱きしめました。
このまま。
このまま、時が止まってくれればいいのに。
しかしエフェクトは同時に、息子に変化の兆しが表れていることに気が付きました。
つい昼間まで5歳くらいだった為信は、いま、7歳くらいまで成長していたのでした。
つづく。
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Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。