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2009年06月05日

黒龍物語10-お兄ちゃん

第10話 お兄ちゃん

生まれたのは、青龍の子と黄龍の子。
青夢(セーム)と、美雨(チュラミ)と名づけられました。



生まれた弟、妹たちをみながら、
「お兄ちゃんになったね」
と皆に声をかけられた為信は嬉しくなりました。

そしてはりきって子守を引き受けました。
といってもイトコたちと一緒に競って遊びの延長といった感じでしたが。


「でも…いつおうちに帰るんだろう?」
アズマは毎日会いに来てくれるものの、為信は不思議に感じていました。
クリスタル城の奥の部屋に居候したまま、エフェクトはしらばらく自室に戻ろうとはしなかったのです。

原因は、お祝いの参列。
まるで「長男誕生を祝う」かのような扱いに、エフェクトが真っ向から反対していたのです。

為信が産まれたときは…誰一人知らず、といった感じだったのに。
そうしかけたのはエフェクト自身だったのですが。

紫乃は伽羅弧が本格稼動する前に子どもを産み終えていたので、この騒ぎは伽羅弧始まって以来のことでした。

結局、子どもたちを特別扱いしすぎないというその連絡がいきわたって城内が落ち着いてから、やっとエフェクトは子どもたちをつれて我が家へと戻ったのでした。



為信は敏感に感じていました。

紫乃の輝ける光が苦手。
同じように輝いているおにいちゃん・おねえちゃんたちも苦手。
ぼく…どうしてだろう?

小さな子龍たちもまた、輝く存在でした。
青緑色の鱗。金の鱗。
僕には無い。

弟・妹たちを可愛がりながら、毎日元気に寺子屋に通ったり、いとこたちと一緒に遊んだりしながらも、為信は心の中に少しずつ陰を育てていき、それにともなって口数が少しずつ減っていきました。

エフェクトもまた為信の変化を敏感に感じ取っていました。
エフェクトにとっては、予想していたこと。
それがためにエフェクトは第二子第三子の出産を心から喜べなかった自分に気がついていました。

だとしても、やはりわが子は可愛い。
幼い子たちほど手がかかり、可愛いらしさはいや増していきます。

エフェクトはその心を抑えて、あえて全てにおいて為信を優先させました。
抱きしめる事、会話をすることも。

その母の心をまた為信は敏感に受け取ってしまう。
そんな母子の葛藤の間に、為信はほんの短い間で一気に成長してしまいました。

もう…母より友だちや仲間を優先させる年。
抱きしめようとする母の手を振りほどく年齢に、一気に達してしまったのです。

つづく。

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つぶやき。
つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(0)龍物語
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