2009年06月09日
黒龍物語18-投影した心
第18話 投影した心
「心を外に求めても、答えは返ってこないわ。」
為信は驚いて砂の中から体を持ち上げました。
「心を外に求めても、答えは返ってこないわ。」
為信は驚いて砂の中から体を持ち上げました。
すぐそばに座っている、黒髪をアップにしてシンプルな服をきた、夜の闇と月の光に溶け込んでいるような女性を見上げます。
「零おねえちゃん。」
いとこの一番年上のお姉さん。
いつも何かあるとそのどこかにいる。
戦闘訓練もよく見にきてたけど、表情を変えずただだまって見てただけ。
そうやって、ただ遠くで見ているだけの零と、為信が言葉を交わした事は殆どありませんでした。
はい、と、零は黒龍の木を為信に渡しました。
為信は複雑な表情でそれを受け取り、じっと見つめてから手の中で転がしました。
「そろそろ成長しきってるからいらないかも、と叔母様はおっしゃってたけど。」
飢えてるようにみえるわよ、食べなさいよ。
と、零は続けました。
為信はその時はじめて、己がげっそりとやつれてしまったことに気が付きました。
ひとくちかじるとエネルギーが体内に入るのがわかります。
まさしく、飢えてる。
為信は残りをがつがつと食べました。
「あなたのお母さんが本当はどう思ってるかなんて。本当はね、知る必要ないし。わかることもできないのよ。」
月の光を向こう側から受けて、零の表情は影になりよく見えませんでした。
「どういうこと?」
「誰だって、人に投影した自分の心の中をみてるだけ、ってこと。」
愛してくれている、と感じるのは自分の心。
怒っている、と感じるのも自分の心。
心を隠して装っている、と感じるのも自分の心。
「私にはあなたが混乱しているように見えるわ。だからこうやって話してるんだけど。」
本当は混乱してなくて、ただ心を閉じてるだけかもしれない。
そんなの私にはわからない。
ただ、私はあなたが混乱していると感じたから、私が話したいことを話してるだけ。
何かいいたそうな為信の表情に、零は続けました。
「じゃぁ、いまの本当の私の心、あなたにわかる?」
ね、正確にわかる必要なんてないのよ。
零は夜空を見上げて言いました。
つづく。
「黒龍物語」目次はこちら 用語、キャラクター解説はこちら
「零おねえちゃん。」
いとこの一番年上のお姉さん。
いつも何かあるとそのどこかにいる。
戦闘訓練もよく見にきてたけど、表情を変えずただだまって見てただけ。
そうやって、ただ遠くで見ているだけの零と、為信が言葉を交わした事は殆どありませんでした。
はい、と、零は黒龍の木を為信に渡しました。
為信は複雑な表情でそれを受け取り、じっと見つめてから手の中で転がしました。
「そろそろ成長しきってるからいらないかも、と叔母様はおっしゃってたけど。」
飢えてるようにみえるわよ、食べなさいよ。
と、零は続けました。
為信はその時はじめて、己がげっそりとやつれてしまったことに気が付きました。
ひとくちかじるとエネルギーが体内に入るのがわかります。
まさしく、飢えてる。
為信は残りをがつがつと食べました。
「あなたのお母さんが本当はどう思ってるかなんて。本当はね、知る必要ないし。わかることもできないのよ。」
月の光を向こう側から受けて、零の表情は影になりよく見えませんでした。
「どういうこと?」
「誰だって、人に投影した自分の心の中をみてるだけ、ってこと。」
愛してくれている、と感じるのは自分の心。
怒っている、と感じるのも自分の心。
心を隠して装っている、と感じるのも自分の心。
「私にはあなたが混乱しているように見えるわ。だからこうやって話してるんだけど。」
本当は混乱してなくて、ただ心を閉じてるだけかもしれない。
そんなの私にはわからない。
ただ、私はあなたが混乱していると感じたから、私が話したいことを話してるだけ。
何かいいたそうな為信の表情に、零は続けました。
「じゃぁ、いまの本当の私の心、あなたにわかる?」
ね、正確にわかる必要なんてないのよ。
零は夜空を見上げて言いました。
つづく。
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Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。