2009年06月15日
黒龍物語29-第2章最終回:古の武神
第29話 第2章最終回 古(いにしえ)の武神
ヒーリングが効いて静かに寝息をたて始めた為信を見つめていたエフェクトは、そっと為信の額に自分の額を合わせました。熱を計るかのように。
ヒーリングが効いて静かに寝息をたて始めた為信を見つめていたエフェクトは、そっと為信の額に自分の額を合わせました。熱を計るかのように。
為信は、一軒の家の前に立っていました。
ああ、まただ。
またこの夢だ。
夢だと認識しながらも、みたくないと願えども、
無常にも繰り返し進んでいく悪夢。
そして…何度も目にしてしまう、あの無残な光景。
為信は何度みても心が破れるような思いを感じ、目をそむけました。
「受け入れてしまえばいいのよ。」
零の言葉が夢のむこうから聞こえます。
『無理だよ…』
『何か意味があると思うわ。』
はっと為信は目を上げました。
目。
誰か…見ている。
夢の中の為信を、空から、大きな目が見ていました。
誰?
龍の目?
黄金の瞳。
瞬きもせず、じっと為信を見つめています。
…監視している…?僕を?
ごほっごほごほごほっ!
激しい咳き込みに、為信は目を覚ましました。
母の優しい手が為信の背中をさすります。
ああ、またお母さん寝ずに看病してくれたんだ…。
発作がおさまってから、為信は母の顔をみてぎくっとしました。
金色の瞳。
夢に出てきたそれは、母の目でした。
そして、その目からほろほろと涙がこぼれていたのです。
「為信…ごめんなさい。あなたの夢を見せてもらったの。」
エフェクトは流れる涙をぬぐおうともせずに言いました。
見た・・・あれを。
母が無残な殺され方をしたその場面を、母にみられてしまった。
為信は思わず夜具を引き寄せて向こうを向きました。
最も見せたくなかった人に見られてしまったことに、心が震えます。
「為信。あなたが見ていたのは…古いアカシックの記憶なの。」
エフェクトは意外な話を始めました。
「あれは…私のアカシックの記憶なの。
古の神々の戦いがあった時代。
殺されたのは…私じゃないの。私はあのとき、武神だった。
妻と娘を殺され、わたしはそれを発見した。」
母の声がいきなり太い男のものに変わり、驚いた為信は振り返って母の方をみました。
そこにいたのはエフェクトではなく…
「わたしは古の武神イザナギと申すもの。
そなたにビジョンを送り続けたのはわしだ。
すまなかった。
改めて、そなたにこれまでの記録をみせよう。」
為信は、イザナギからアカシックの記憶を受け取りました。
古の神々の戦いの時代。
神界全てが戦いに巻き込まれ、誰も逃げるすべのなかった悲惨な宇宙の時代。
天使界もまた闇と光に分かれて壮絶な戦争にあり。
神界の戦いを避けたイザナギは息子スサノオと共に天使界の戦いに加わり、
やっと戦場から帰ってきたとき…妻と娘は無残な骸と化していた…。
「古き話じゃ。全ては転生し娘も息子も幸せに生きておる。じゃが…妻イザナミの魂が戻らぬ。」
「黄泉の国…闇の世界にいるのですね。」
「そうじゃ。魂は一度ばらばらになり、とりもどすためには黄泉の国を渡らねばならぬ。」
僕なら…いける。
為信は頷きました。
なぜ、イザナギがこうして為信に呼びかけてきたのか理解したのです。
頷いた為信に、イザナギは安心したように頷き返しました。
「為信…」
イザナギは掻き消えるように消え、エフェクトの姿に戻っていました。
「お母さん。産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。やっとご恩返しができます。」
何も言えずに激しく泣き出したエフェクトの背中にそっと手をあてて、いつの間にかそばにきていたアズマが為信に言いました。
「草薙の剣だ。これをもっていくがいい。」
為信はアズマの目をみて頷きました。
そして夜具から降りて正式な礼の作法をとると、
謹んで軍神スサノオの神剣(かむはや)を受け取ったのでした。
黒龍物語
第2章 闇 「完」
第3章もお楽しみに♪
「黒龍物語」目次はこちら 用語、キャラクター解説はこちら
関連記事: 古の武神2 -アカシックの記憶-
ああ、まただ。
またこの夢だ。
夢だと認識しながらも、みたくないと願えども、
無常にも繰り返し進んでいく悪夢。
そして…何度も目にしてしまう、あの無残な光景。
為信は何度みても心が破れるような思いを感じ、目をそむけました。
「受け入れてしまえばいいのよ。」
零の言葉が夢のむこうから聞こえます。
『無理だよ…』
『何か意味があると思うわ。』
はっと為信は目を上げました。
目。
誰か…見ている。
夢の中の為信を、空から、大きな目が見ていました。
誰?
龍の目?
黄金の瞳。
瞬きもせず、じっと為信を見つめています。
…監視している…?僕を?
ごほっごほごほごほっ!
激しい咳き込みに、為信は目を覚ましました。
母の優しい手が為信の背中をさすります。
ああ、またお母さん寝ずに看病してくれたんだ…。
発作がおさまってから、為信は母の顔をみてぎくっとしました。
金色の瞳。
夢に出てきたそれは、母の目でした。
そして、その目からほろほろと涙がこぼれていたのです。
「為信…ごめんなさい。あなたの夢を見せてもらったの。」
エフェクトは流れる涙をぬぐおうともせずに言いました。
見た・・・あれを。
母が無残な殺され方をしたその場面を、母にみられてしまった。
為信は思わず夜具を引き寄せて向こうを向きました。
最も見せたくなかった人に見られてしまったことに、心が震えます。
「為信。あなたが見ていたのは…古いアカシックの記憶なの。」
エフェクトは意外な話を始めました。
「あれは…私のアカシックの記憶なの。
古の神々の戦いがあった時代。
殺されたのは…私じゃないの。私はあのとき、武神だった。
妻と娘を殺され、わたしはそれを発見した。」
母の声がいきなり太い男のものに変わり、驚いた為信は振り返って母の方をみました。
そこにいたのはエフェクトではなく…
「わたしは古の武神イザナギと申すもの。
そなたにビジョンを送り続けたのはわしだ。
すまなかった。
改めて、そなたにこれまでの記録をみせよう。」
為信は、イザナギからアカシックの記憶を受け取りました。
古の神々の戦いの時代。
神界全てが戦いに巻き込まれ、誰も逃げるすべのなかった悲惨な宇宙の時代。
天使界もまた闇と光に分かれて壮絶な戦争にあり。
神界の戦いを避けたイザナギは息子スサノオと共に天使界の戦いに加わり、
やっと戦場から帰ってきたとき…妻と娘は無残な骸と化していた…。
「古き話じゃ。全ては転生し娘も息子も幸せに生きておる。じゃが…妻イザナミの魂が戻らぬ。」
「黄泉の国…闇の世界にいるのですね。」
「そうじゃ。魂は一度ばらばらになり、とりもどすためには黄泉の国を渡らねばならぬ。」
僕なら…いける。
為信は頷きました。
なぜ、イザナギがこうして為信に呼びかけてきたのか理解したのです。
頷いた為信に、イザナギは安心したように頷き返しました。
「為信…」
イザナギは掻き消えるように消え、エフェクトの姿に戻っていました。
「お母さん。産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。やっとご恩返しができます。」
何も言えずに激しく泣き出したエフェクトの背中にそっと手をあてて、いつの間にかそばにきていたアズマが為信に言いました。
「草薙の剣だ。これをもっていくがいい。」
為信はアズマの目をみて頷きました。
そして夜具から降りて正式な礼の作法をとると、
謹んで軍神スサノオの神剣(かむはや)を受け取ったのでした。
黒龍物語
第2章 闇 「完」
第3章もお楽しみに♪
「黒龍物語」目次はこちら 用語、キャラクター解説はこちら
関連記事: 古の武神2 -アカシックの記憶-
Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(4)
│龍物語
この記事へのコメント
すべてのマイナス(に思われていた物)が全部プラスに変わるような?はあ~~。
為信さん、これからも読みに来ますので、
がんばってください。
この苦しみは、力になる。
為信さん、これからも読みに来ますので、
がんばってください。
この苦しみは、力になる。
Posted by rai at 2009年06月15日 19:52
raiさん:
ありがとうございます。
第3章は、また違ったテーマが出てきます。
おたのしみに☆
ありがとうございます。
第3章は、また違ったテーマが出てきます。
おたのしみに☆
Posted by pyo at 2009年06月15日 22:55
はぁ‥―。
心が打ち震えました。
為信に勇気を頂いた気がします。
親に無いモノを,欠けているモのを子どもはギフトとして親にプレゼントしに生まれてくる。
と、今受けているレッスンで聴きましたが‥、何だかリンクしました。
自分が生まれてきた意味に気づいたら強いですね!
私もパワーが出てきました。
ありがとうございますm(__)m!!
心が打ち震えました。
為信に勇気を頂いた気がします。
親に無いモノを,欠けているモのを子どもはギフトとして親にプレゼントしに生まれてくる。
と、今受けているレッスンで聴きましたが‥、何だかリンクしました。
自分が生まれてきた意味に気づいたら強いですね!
私もパワーが出てきました。
ありがとうございますm(__)m!!
Posted by テン at 2009年06月16日 00:11
テンさん:
ご感想ありがとうございます。
>親に無いモノを,欠けているモのを子どもはギフトとして親にプレゼントしに生まれてくる。
おお、そうなねすね!
情報ありがとうございました。
私たちもまた…子どもなんですよね、親に何をプレゼントできるのかな~。
ご感想ありがとうございます。
>親に無いモノを,欠けているモのを子どもはギフトとして親にプレゼントしに生まれてくる。
おお、そうなねすね!
情報ありがとうございました。
私たちもまた…子どもなんですよね、親に何をプレゼントできるのかな~。
Posted by pyo at 2009年06月16日 13:51
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。