2009年06月16日
黒龍物語31-手柄
第31話 手柄
その魂をほとんど回収できたのは、すでにエネルギーコントロールの力を身につけていた為信の手柄でした。
その魂をほとんど回収できたのは、すでにエネルギーコントロールの力を身につけていた為信の手柄でした。
夜希は魂としては100%ではない‘ロストがある’状態だけれども、生体としての復活には十分な量の魂が集まったとして医務官たちの手により再生・蘇生され、戻ってきました。
「為信、ありがとう。何と言っていいかわからない位、感謝しているよ。」
夜希はまだ少し青白い顔をしていましたが、静かに笑っていいました。
「少しロストがあるけど、通常生きていくには問題ないらしい。僕は、神官に戻る事になったよ。エリア2の担当だ。」
「そうか。」
エリア2は、地球からの魂を受け入れるエリアでした。
「戦争とかでさ。地上から来たばかりの傷ついてる魂たちを導くには、食われたりロストしたりの僕はちょうどいいらしいんだ。ま、こんな容姿だしな。」
夜希はそういって復活したみすぼらしい背中の羽をちょっと揺らすと、除隊してエリア2へと移っていきました。
為信はその後また別の「手柄をあげる」チャンスに恵まれました。
新たに配置されたばかりの新兵の中に、やはり狙われやすい者がいたのです。
最終テストはクリアしたはずのその新兵は、配置された初日のパトロールですぐに襲われました。
為信はその日魑魅魍魎たちの様子がいつもと違う事に気がついていました。
そしてその地域を自分なりに特定し、己のパトロール業務時間外にも意識を向け続けていました。
おかげで新兵が襲われたすぐその時その場にかけつけて無事助け出す事に成功したのです。
エネルギーを自在に操れる。
神剣の力を十分に発揮できる。
為信は己の力の手ごたえに、十分すぎる満足感を味わっていました。
「…見たか?」
「ああ。悪鬼ってああいうものかなと思ったよ。」
小さな声で若い新兵たちがひそひそと話しています。
それは戦闘訓練時、通常の倍以上のチームを相手にチームを守り殆ど一人で戦って勝った為信への、兵士たちの‘評価’でした。
全く躊躇も手加減もなく攻撃を繰り出し、‘味方’を安全な場所に配置させ守りを固め、ほぼひとりで‘敵’を‘殲滅’させた為信。
その戦っている最中の為信の目は、何の感情も映さずただ闇の底に吸い込むような冷たい黒い光をたたえ。
そして無意識に口は笑みを浮かべている。
その表情は見たものを戦慄させる何かが漂っていました。
そしてそれはエリア4の厳しい地域を担当するほどに、為信自身を鍛え上げてきた結果でもありました。
「強くなければ出来ない。」
いつの間にか為信はそんな言葉を口にするようになっていました。
そして…上官どころか、軍神スサノオからの直接の厳しい訓練を一人で受けていた為信に対し、必然として兵士たちから畏怖のようなものが沸きあがってきます。
‘彼は特別’
そんな空気が、エリア4担当兵士たちの中に浸透していきました。
よりによって、為信自身の心の中にも。
つづく。
「黒龍物語」目次はこちら 用語、キャラクター解説はこちら
「為信、ありがとう。何と言っていいかわからない位、感謝しているよ。」
夜希はまだ少し青白い顔をしていましたが、静かに笑っていいました。
「少しロストがあるけど、通常生きていくには問題ないらしい。僕は、神官に戻る事になったよ。エリア2の担当だ。」
「そうか。」
エリア2は、地球からの魂を受け入れるエリアでした。
「戦争とかでさ。地上から来たばかりの傷ついてる魂たちを導くには、食われたりロストしたりの僕はちょうどいいらしいんだ。ま、こんな容姿だしな。」
夜希はそういって復活したみすぼらしい背中の羽をちょっと揺らすと、除隊してエリア2へと移っていきました。
為信はその後また別の「手柄をあげる」チャンスに恵まれました。
新たに配置されたばかりの新兵の中に、やはり狙われやすい者がいたのです。
最終テストはクリアしたはずのその新兵は、配置された初日のパトロールですぐに襲われました。
為信はその日魑魅魍魎たちの様子がいつもと違う事に気がついていました。
そしてその地域を自分なりに特定し、己のパトロール業務時間外にも意識を向け続けていました。
おかげで新兵が襲われたすぐその時その場にかけつけて無事助け出す事に成功したのです。
エネルギーを自在に操れる。
神剣の力を十分に発揮できる。
為信は己の力の手ごたえに、十分すぎる満足感を味わっていました。
「…見たか?」
「ああ。悪鬼ってああいうものかなと思ったよ。」
小さな声で若い新兵たちがひそひそと話しています。
それは戦闘訓練時、通常の倍以上のチームを相手にチームを守り殆ど一人で戦って勝った為信への、兵士たちの‘評価’でした。
全く躊躇も手加減もなく攻撃を繰り出し、‘味方’を安全な場所に配置させ守りを固め、ほぼひとりで‘敵’を‘殲滅’させた為信。
その戦っている最中の為信の目は、何の感情も映さずただ闇の底に吸い込むような冷たい黒い光をたたえ。
そして無意識に口は笑みを浮かべている。
その表情は見たものを戦慄させる何かが漂っていました。
そしてそれはエリア4の厳しい地域を担当するほどに、為信自身を鍛え上げてきた結果でもありました。
「強くなければ出来ない。」
いつの間にか為信はそんな言葉を口にするようになっていました。
そして…上官どころか、軍神スサノオからの直接の厳しい訓練を一人で受けていた為信に対し、必然として兵士たちから畏怖のようなものが沸きあがってきます。
‘彼は特別’
そんな空気が、エリア4担当兵士たちの中に浸透していきました。
よりによって、為信自身の心の中にも。
つづく。
「黒龍物語」目次はこちら 用語、キャラクター解説はこちら
Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。