てぃーだブログ › pyo's room › 龍物語 › 黒龍物語37-想い

2009年06月20日

黒龍物語37-想い

第37話 想い

零は誰にも邪魔されない場所で一人でいました。

美しい伽羅弧の夕日を眺めながらも、
彼女の目はその空の色を捉えてはいませんでした。

黒龍物語37-想い

決心したかのように、目をつぶり、印をきり始めます。
その時に、彼女の手をぎゅっと握って止めた手がありました。

「だめよ、零。」
紫乃は娘の目をみながら、静かに言いました。
「このことで彼の時をリセットしてはいけないわ。」

「お母さま…。」
零は手が震えてくるのを感じました。

「私には…私には出来るんです。お母さま、ご存知でしょう?彼の闇も光もリセットして、元に戻せるんです。」

いいえ。
と、紫乃は首を横にふると、娘の肩を抱いて引き寄せました。
「彼が好きなのね。でも、だからといって彼の魂の学びを邪魔しちゃいけないわ。」

どうしたらいいの…とつぶやいた零に、紫乃は続けました。
「待つのよ。ただ、信じて待つの。」

本当に好きなら、2万年でも4億年でも待てるわよ、
と続けた母の言葉に、零は呆れながら、涙を溜めた目をしばたたかせていいました。

「お母さまにはかなわないわ。」

それは、紫乃が実際にやってきた事。

封印されたまま何万年も恋人を待ち続けた…それがどれだけの想いを重ねた日々だったのか、零は母が歩んできた道を自らに置き換えて改めて思い知ったのでした。








為信は、北牢の中で瞑想していました。

アマテラスの剣舞により彼は親しい人々とのオーラのつながりを全て切断され、たった独りで己と向き合う日々を過ごしていたのです。

為信の処置は、軍の最高幹部会議で決定されました。

軍籍、軍歴、軍功の剥奪。
独房(北牢)での禁固刑、
さらに更正プログラムの実施。


彼は北牢の中で光のエネルギーにさらされ、己の行動と心を引き出して見つめなおしていました。


しかしそれは並大抵の苦しさではなく。

自分を見つめなおす事はかなり苦痛を伴ない、彼は何度も心の目をそらし、何とか見ずにすますことはないか、もがき苦しみました。

…俺は悪い事は何一つしていない!
…俺は間違っていない!
ほっといてくれ!


何度もその叫びが彼の奥底から沸き起こり、その思いを手放せず。

しかし起きた事、起こした事は確かに存在し。
それを認める心もまた存在し。

七転八倒の思いが幾度も繰り返し彼を苦しめ続けていました。


つづく。

「黒龍物語」目次はこちら  用語、キャラクター解説はこちら



同じカテゴリー(龍物語)の記事
つぶやき。
つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。