2009年07月06日
第9話 完璧な魂 [白龍物語]
第9話 完璧な魂
アズマは医務院について袋を医務官に渡すと、すぐに医療ブースの中へ入れられました。
闇にさらされた時間が長く、エネルギーの喪失と混乱が相当あったからです。
アズマは医務院について袋を医務官に渡すと、すぐに医療ブースの中へ入れられました。
闇にさらされた時間が長く、エネルギーの喪失と混乱が相当あったからです。
しかし割と早く回復出来、短時間でブースから出てきました。
そのあとすぐに医務官長と回収してきた魂たちの蘇生・復活についての今後の作業についての話をしたり、アズマが無事戻ったと知ってかけつけた将軍たちとの打ち合わせ、さらにかけつけた紫乃とも話をし、回収した魂について神官長と話をしたり…と、かなり精力的に働きました。
やっと一段落ついたところで、ふぅ、とため息をついたアズマの前に、すっとお茶が差し出されました。
明るい栗毛色の髪と目をした若い医務官がフレンドリーに笑いかけます。
そして「どうぞ、奥さまはもうお目覚めです。」と告げてくれました。
アズマはお茶を片手に、示された目の前の個室のドアをくぐりました。
「…アズマ。」
かすれるような小さな声で、ベッドに寝かされた妻は微笑みました。
まだ完全に生命維持装置がはずされておらず、エフェクトは青白い顔をしています。
「声が聞こえたわ。忙しかったのね。」
ささやくような声でエフェクトは続けました。
「ああ。」
アズマはにっこり笑うと妻の唇に軽くキスをして、横にあった椅子にこしかけました。
そして隣の小さなベッドに寝かされていた赤ちゃんの顔を見ます。
「…ごめんなさい。」
エフェクトは、さらに消え入るような声でいいました。
「わたし…この子に、十分な栄養を与えることができなかった…。」
金色の目に、涙が浮かびます。
アズマは生まれた子に触れて、その子に何があったのかを読み取りました。
そして、優しく微笑んで妻にむかいました。
「エフェクト。よく聞くんだ。
この子は声がない。そうだね?
だが、それは不足しているんじゃないんだ。
この子の運命が、そう導いたんだよ。」
エフェクトは、アズマの顔をみつめたまま涙をぽつりと落としました。
エフェクトはふたたび目覚めて事実を知って以来、ずっと心の中で己を責めていたのです。
自分のせいで子どもに困難を背負わせてしまった、と。
それがさらにエフェクトの回復を遅らせる原因となっていました。
アズマはエフェクトの頬に手をあてて、指先で妻の涙を優しくふきとりながら続けました。
「この子はこれで完璧なんだ。」
いいかい?
たとえば為信は、光をもたずに生まれた。
だが、闇においては素晴らしい力を発揮した。
それは為信の、黒龍の特質だったんだ。
光を持たないことで完璧だった。
そして、青夢は、肉体を持たずに為信の中で輝く力を持っていた。
その運命により、いまも為信の中で光の存在として生きている。
美雨も、癒しの雨の力を持っている。
われら軍神にはない力じゃないか。
「そして、この子や遥珂も。
‘足りない’のではなく、
それがないことであたりまえ、完成形なんだ。
俺たちにある機能を必要としない、素晴らしい学びをもった魂なんだよ…。」
エフェクトは意外な話に驚き、それからゆっくりと頷きました。
このままでいいんだ。
困難も、学びも。
それを乗り越えるために生まれてきて、そしてより強く輝くためにあるんだ…。
エフェクトはまたその時にアズマの心が押し寄せてくるのを感じ、その心を受け取りました。
「…わたしも、なのね。
私がこうして生まれたての魂をもっていること、
転生も親の記憶もないから完璧じゃないなんて…私はそう感じる必要はなかったのね…」
アズマはやさしく頷きました。
「君はより根源に近い魂を持っている。
それだけ力もあるし、愛情も強くて深い。
自分に自信をもつんだ。
何より君は、俺が選んだ女性なんだよ。」
最後のアズマの言葉でエフェクトは泣き笑いをはじめ、同時に身体に多くの力が入ってくるのを感じました。
…ああ、根源からのエネルギーが入ってくる。
エフェクトは目を閉じて、エネルギーがみなぎる感覚を受け入れました。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
そのあとすぐに医務官長と回収してきた魂たちの蘇生・復活についての今後の作業についての話をしたり、アズマが無事戻ったと知ってかけつけた将軍たちとの打ち合わせ、さらにかけつけた紫乃とも話をし、回収した魂について神官長と話をしたり…と、かなり精力的に働きました。
やっと一段落ついたところで、ふぅ、とため息をついたアズマの前に、すっとお茶が差し出されました。
明るい栗毛色の髪と目をした若い医務官がフレンドリーに笑いかけます。
そして「どうぞ、奥さまはもうお目覚めです。」と告げてくれました。
アズマはお茶を片手に、示された目の前の個室のドアをくぐりました。
「…アズマ。」
かすれるような小さな声で、ベッドに寝かされた妻は微笑みました。
まだ完全に生命維持装置がはずされておらず、エフェクトは青白い顔をしています。
「声が聞こえたわ。忙しかったのね。」
ささやくような声でエフェクトは続けました。
「ああ。」
アズマはにっこり笑うと妻の唇に軽くキスをして、横にあった椅子にこしかけました。
そして隣の小さなベッドに寝かされていた赤ちゃんの顔を見ます。
「…ごめんなさい。」
エフェクトは、さらに消え入るような声でいいました。
「わたし…この子に、十分な栄養を与えることができなかった…。」
金色の目に、涙が浮かびます。
アズマは生まれた子に触れて、その子に何があったのかを読み取りました。
そして、優しく微笑んで妻にむかいました。
「エフェクト。よく聞くんだ。
この子は声がない。そうだね?
だが、それは不足しているんじゃないんだ。
この子の運命が、そう導いたんだよ。」
エフェクトは、アズマの顔をみつめたまま涙をぽつりと落としました。
エフェクトはふたたび目覚めて事実を知って以来、ずっと心の中で己を責めていたのです。
自分のせいで子どもに困難を背負わせてしまった、と。
それがさらにエフェクトの回復を遅らせる原因となっていました。
アズマはエフェクトの頬に手をあてて、指先で妻の涙を優しくふきとりながら続けました。
「この子はこれで完璧なんだ。」
いいかい?
たとえば為信は、光をもたずに生まれた。
だが、闇においては素晴らしい力を発揮した。
それは為信の、黒龍の特質だったんだ。
光を持たないことで完璧だった。
そして、青夢は、肉体を持たずに為信の中で輝く力を持っていた。
その運命により、いまも為信の中で光の存在として生きている。
美雨も、癒しの雨の力を持っている。
われら軍神にはない力じゃないか。
「そして、この子や遥珂も。
‘足りない’のではなく、
それがないことであたりまえ、完成形なんだ。
俺たちにある機能を必要としない、素晴らしい学びをもった魂なんだよ…。」
エフェクトは意外な話に驚き、それからゆっくりと頷きました。
このままでいいんだ。
困難も、学びも。
それを乗り越えるために生まれてきて、そしてより強く輝くためにあるんだ…。
エフェクトはまたその時にアズマの心が押し寄せてくるのを感じ、その心を受け取りました。
「…わたしも、なのね。
私がこうして生まれたての魂をもっていること、
転生も親の記憶もないから完璧じゃないなんて…私はそう感じる必要はなかったのね…」
アズマはやさしく頷きました。
「君はより根源に近い魂を持っている。
それだけ力もあるし、愛情も強くて深い。
自分に自信をもつんだ。
何より君は、俺が選んだ女性なんだよ。」
最後のアズマの言葉でエフェクトは泣き笑いをはじめ、同時に身体に多くの力が入ってくるのを感じました。
…ああ、根源からのエネルギーが入ってくる。
エフェクトは目を閉じて、エネルギーがみなぎる感覚を受け入れました。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(4)
│龍物語
この記事へのコメント
そうですよね、足りないと感じたら、
みんなでお互いを補っていけばいいし。。。
うーん。と、うなって読みました。
みんなでお互いを補っていけばいいし。。。
うーん。と、うなって読みました。
Posted by 雫 at 2009年07月09日 01:17
一滴ちゃんは乗り越えた人だしね>困難 ^^
とっても心強かったよ~、読んでて。
とっても心強かったよ~、読んでて。
Posted by pyo at 2009年07月09日 14:33
やっと読み始める準備(?!)ができました。
わー、なんか感動しちゃった。
目が見えなくても、声が出せなくてもそれがその子の完璧な姿。
目からうろこです。
わー、なんか感動しちゃった。
目が見えなくても、声が出せなくてもそれがその子の完璧な姿。
目からうろこです。
Posted by Theo☆ at 2009年12月01日 13:08
●Theo☆さん
おお、読める余裕ができたんですねー。
よかったですね。
それとも夏に読むようになってるのかしら(笑)
このあとも物語をお楽しみください。^^
おお、読める余裕ができたんですねー。
よかったですね。
それとも夏に読むようになってるのかしら(笑)
このあとも物語をお楽しみください。^^
Posted by pyo at 2009年12月01日 18:25
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。