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2009年07月08日

第12話 幼児教育[白龍物語]

第12話 幼児教育

チャレンジャーなエフェクトの子育て。
彼女は、今回は寺子屋での教育を全く視野にいれていませんでした。

その代わり彼女が選んだ者たちの手を借りて、子どもたちの能力を伸ばす。
そのための教育施設…プレイルームを、南塔の中にしつらえました。

宗像堂の庭にて

朔間も紫乃も、エフェクトの決断に賛成しました。

「神々の御子の教育を…」
と言い出した神官長や女官長に「見守るように」と一言告げただけで黙らせてしまったのです。


エフェクトが次に選んだのは、遥珂の能力に最初に気がついた若い医務官、ハタでした。
そして通いつめて説得すること数回。

とうとう、医務官長の方が折れて、視神経のない遥珂と声のないウェイの幼児期の教育係りをハタに担当させてしまったのです。
もっとも、もともとその方面に興味があったハタは内心喜んで引き受けました。



さらに、普段からの子守も必要…ということであちこち検討したのですが。

その頃にはすでに活発に走り回り始めていた遥珂をみるにつけ、エフェクトは「ただの子守りじゃだめ」と、ほとんどの候補者を却下。

やがてアズマが面白い経歴の神官を連れてきました。
「元兵士で、いまエリア2担当の神官なんだが。かなり荒っぽい連中でも平気でなだめるし意思の力は強いぞ。」

それは、夜希でした。

むかし、為信が新兵だった頃に一緒に訓練とテストを受け、さらに為信に命を救われた夜希。
その時の魂のロストの問題は、アズマが回収してきた魂の中に彼の失われていた魂の欠片があったために解決していました。

夜希は神官としての実績も積み、信頼される強い意志をもった者として彼を知る者に認められるようになっていました。

しかし相変わらずその灰色の羽はぼろぼろでみすぼらしく、彼自身もまた細くて力もなく自信がなさそうな外見。はために相反した心の強さと弱い外見を持つ彼は、闇と光のエネルギーを持つ者でした。

「神々のご一家に仕えるのも、神官の務めだ」

と、エフェクトがきいたら目を剥きそうな言葉で神官長が夜希を送り出していたため、夜希はまったく疑問もなくアズマの求めに応じてやってきたのでした。

エフェクトは夜希にあってすぐ気に入り、無事採用。

しかも闇のエネルギーを持つ彼のために、エフェクトは為信の部屋を夜希の居室としてあてがいました。
そこはエリア4に面していて、夜になると静かに闇のエネルギーが入り込む部屋なのです。
そして遥珂とウェイの使う子ども部屋とはすぐ近くにありました。


夜希は子どもたちの世話をしはじめてすぐ、なぜ己が採用されたのか理解しました。
その頃、遥珂が物凄いスピードで飛び回り始めていたのです。

まだ小さい内からこれでは…と周りを慌てさせるスピードで、さらにまだ本格的に飛べないほどの幼さで、へたすると長城の上をすべるように一気に走って飛んでいってしまう小さな白龍。

夜希は最初の頃ほとんど毎日、その灰色の羽を駆使して遥珂を追いかけました。

これではウェイまで育つとどうなるやら…

と思える頃に、遥珂はまわりの大人たちの指示に従うことを覚え。
飛び出さないよう、安全に遊べるように無事躾けられていきました。




医務官ハタは、この活発な男の子たちのために、活発な遊びを取り入れました。

まずいくつもの色と形のボールを準備したのです。
それを子どもたちに触らせ、握らせ、形を理解させたり、これがどんな色かをエネルギーで判断するように教えました。

そしてそれでキャッチボール。
やがて投げ入れるものを利用し、力加減やコントロールを自分で考えて調整できるよう、うまく誘導していました。

これは子どもたちがすぐに夢中になり、好きな遊びとなりました。



声のないウェイには、言葉をきちんと理解する事と、どうやって表現し伝えるかが特に課題でした。

すぐに心話を覚えてしまうと、「言葉」をぞんざいにしてしまう恐れがあったのです。
美雨による絵本の読み聞かせも、そのための対策のひとつでした。


ハタは龍のもつ能力を情報を集めて調べまくり、アズマやエフェクトとも話し合った結果、ウェイがある能力を持っているかどうか試してみることにしました。

それは、雲と光を操る力。

それは効果があり、ウェイは指先から色んな形のものや文字そのものを、雲や光の形で描き出す能力を発揮し始めたのです。

それはまるで手話のように、相手にウェイの意思を伝える手段として使うことができるようになりました。

ただし、ウェイ自身がはっきりしたイメージを作れないと崩れてしまいうまく伝わらないものとなります。

それを見たエフェクトは
「かえってその方がいいわ。」
と、にっこりと笑いました。



幼児教育にはさらに音楽も取り入れられました。

歌を聴き、リズムをとり、全身を使って表現することで歌う。踊る。
さらに楽器を使ってみる。
楽器そのものも作ってみる。

エリア1におりて海岸で波の音をきき、それを表現する。
森に入って風に揺れる木々の葉の音をきき、それを表現する。

二人の子どもは、そうやって「音」を「楽しむ」こと、
同時にそのエネルギーを感じる事も覚えていきました。



さらに、絵にもチャレンジしました。

それも小さなものではなく。
広い海岸で、砂と小石を使ってどこまでも大きく表現してみる。

手で触って感じた「形」を、物を使って、描いてみる。
岩にエネルギーをあてて刻み込んでみる。など。


やがて色のエネルギーを読み取るようになった遥珂は、クレヨンを使って絵を描けるようになりました。
自分で描いたラインをもういちど指先で読み取りながら描いていくのです。

この方式ならいけそうだ、と感じたハタと夜希は、遥珂にも文字を読むことと書くことを教え始めました。

時間はかかるけれども、遥珂は確かに紙の上にある文字をエネルギーの変化を通じて指先で読み取る事ができるようになっていきました。
そして同じように、己が書いた文字のラインを指先で読み取り、正確に書くことができるようになっていったのです。


こうして二人の子どもたちは、己の身に「あるものがない」と思い煩う事もなく。

それをただの個性として別の表現方法を取り入れることでコミュニケーションの手段とするように、それを当たり前として育っていったのでした。


つづく。
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つぶやき。
つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(0)龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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