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2009年07月18日

第30話 ボランティア[白龍物語]

第30話 ボランティア

径と美雨は、エリア2の街をおしゃべりしながら歩いていました。

大神官就任式典の騒ぎから数日後。
やっと伽羅弧全体も生活も落ち着いた頃、美雨はエリア2の図書館から借りていた本を返しにやってきたのです。
そして偶然、途中でであった径も同行したのでした。

第30話 ボランティア[白龍物語]

「そうか。マリアには、もう一度あって話をききたかったな。」
径は、己の考え方を根本から変えてくれたマリアの話をもう一度思い出して素直にそういいました。

「ええ。私も。毎日いっぱい話をきいていたのに、まだまだマリアから多くのことを教えてもらいたかったと感じるの。」
美雨もうなずきました。


「ところで、どうしてエリア2の図書館を利用してるんだい?」
径の素朴な疑問に、美雨はくすっと笑いました。

「だって。最初にクリスタル城の図書館にいったら、女官長が『わざわざご足労いただかなくても、命じていただければ必要な本はすぐお届けいたしますのに』って、母に言ったらしいのよ。それで。」

径と美雨は、その時のエフェクトの様子を想像して二人で声をあげて笑いました。
「あのふたり、いい攻防戦だよな。」と。


美雨はしかし今回は借りていた少年向けの本をすべて返しただけでした。

「もう借りなくていいのかい?」
「ええ。弟たちも成長して、もう冒険物語を私が読まなくてもいいくらいになったの。あとは自分で読みたいものを選んでいくでしょうし。」

「そうか。ちょっと残念だな。」
径の言葉に、美雨は「え?」と顔を上げました。

「あ、いや。君の朗読は、ずっと続けてほしいなと思って。さ。」
美雨は径の顔を見上げたまま考え、ぱっと顔を輝かせました。

「そうだわ!そうよ!私が朗読を続けるのと、弟たちの成長は別なのよね!」
こんどは、径の方が首を傾げる番。

「あのね。私が朗読を教わった方。その方の魂はもう転生されちゃったんだけど、エリア2にいる間、読み聞かせや朗読のボランティアをされてたのよ。きっと、私にもできるわ!」

美雨はきらきらと輝く笑顔で、径に話しました。

径はつい、『式典の時の美雨ちゃんも綺麗だったけど…いまの方がずっと輝いて綺麗だな』と思い。
しかしこの言葉は逆に輝いているいまの美雨には軽すぎるような気がして、飲み込んだのでした。




そしてその後。
美雨はエフェクトと相談して、通っていたエリア2の図書館でときどき絵本の読み聞かせの手伝いを始めたのでした。

エフェクトは女官長にあっさりと説明。

「神々として地球におりて人を支援するのも、ここで身分を隠して支援するのも、結果的には同じようなものでしょ?やり方が違うだけで、在り方としては間違ってないと思うわ。」

これには、女官長も何も言えず。

このふたりの攻防戦、たしかに、続いています。


つづく。
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つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)龍物語
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