2009年07月24日
第39話 定義された情報[白龍物語]
第39話 定義された情報
遥珂とウェイは、再びふたりだけで月に行ってみました。
「いるかな?」
しかし残念ながら、月の裏側の上空に巨大白龍の姿はみあたらず。
がっかりした遥珂とウェイは、ちょっと待ってみようと散歩しながら話をしました。
遥珂とウェイは、再びふたりだけで月に行ってみました。
「いるかな?」
しかし残念ながら、月の裏側の上空に巨大白龍の姿はみあたらず。
がっかりした遥珂とウェイは、ちょっと待ってみようと散歩しながら話をしました。
『ねぇ…。』
ウェイは最近聞いて気になっていた事を話してきました。
『お姉ちゃんも双子だったんだって。知ってた?』
「え?初めてきいた。本当?」
『うん。もう一人は子どもの頃に死んじゃったんだけど、魂は為信お兄さんの中で生きてるんだって。お兄さんの中に光として存在するために生まれたって。』
「どういうこと?よくわかんない。」
『…僕も。』
二人は暫く黙った後、どちらともなく空を見上げてもう一度巨大龍がいないか捜してみました。
「何の用だ。」
いきなり後ろから声をかけられ、二人は飛び上がりました。
いつの間にか背の高い大柄な男性がすぐ後ろに立っていたのです。
全然その存在を感知できなかった二人はそれだけでも驚きました。
静かで、透明感のあるエネルギー。
何もかもが突き抜けて影響しないような…。
その男性は巨大白龍が姿を変えて月に降り立った姿でした。
巨大白龍の男性は「語る名はない」といいながら、それでは呼ぶのに困るとウェイが頼んだので、「T」と呼ぶといい、と教えてくれてました。
三人は、適当な小さなクレーターに座って、月面基地を出入りする宇宙船を遠くに眺めながら、話をしました。
「…というわけで、帰ってきたんです。でも僕は、やっぱり彩河と一緒にいるべきだったのかなと思って。」
彩河と別れて伽羅弧に帰ってから。
遥珂はあらためて自分の種類の宇宙龍について調べ、
’このタイプの龍はかならずツインがいる’
と言われていることにこだわり始めていました。
必ずツインとして生まれてくるのなら、その意味があるのかな。
僕は彩河と一緒に行くべきだったんじゃないだろうか。
遥珂は、自分の選択を間違えたのかと迷い始めていました。
Tは、遥珂の話をきいてそっけなく答えました。
「定義された情報にこだわることはない。」
「定義された情報…?」
「こういうものだ、こうあるべきだ、と言われているものだ。」
Tは、二人の少年にどう説明しようかと考え、言葉を選びながら話しているようでした。
「例えば俺は「T」だと名乗った。すると、Tだと定義される。
それは、いわばラベルのようなものだ。
ただの分類項目だ。
あれば他人には便利だろうが、それは俺の本質をあらわしたものではない。
ただの情報の一面でしかないのだ。」
Tは遥珂を見て続けました。
「お前は、お前だ。
双子の片割れだ、宇宙龍だ、そんな事はラベルでしかない。
そしてラベルに沿って生きる理由はどこにもない。
お前はお前の魂が感じる通りに自分の道をみつければいい。」
遥珂の顔がぱっと明るくなりました。
「はい!そうします!」
Tは素直な子どもたちの反応にふっと表情を崩しました。
その途端、すっと崩れるように姿がなくなり。
そしていつの間にか月の裏側に浮かぶ巨大な宇宙龍となってとぐろを巻いていました。
「ありがとうございました!」
遥珂とウェイは巨大白龍に頭を下げてお礼をいうと、伽羅弧に帰ろうと彼らも飛び立ちました。
伽羅弧の、特殊訓練場。
アズマは剣を取り出しました。
通常、彼は訓練場では剣を使うことなく、その身長と同じくらいの重く黒い棒を使います。
しかし今回はその目の色と同じ、緑と濃紺の混じったような色合いのスラリとした剣を抜き放ち、相手の闘気すら誘い出すようなスサノオの戦いのエネルギーを出していいました。
「さぁ。二人とも。同時に来てもいいぜ。」
径と廻は、それぞれが己の剣を持ち、お互い少し離れて自分のポジションを決めると、構えました。
訓練場の端には、エネルギーの影響を受けないエリアが設置され、そこに美雨が座っています。
エフェクトは訓練場の外から医務官ハタにそっと連絡をいれました。
特殊訓練場の近くでスタンバイするようにと。
そして
「もしかしたら…また再生術が必要になるかも。」とも。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
ウェイは最近聞いて気になっていた事を話してきました。
『お姉ちゃんも双子だったんだって。知ってた?』
「え?初めてきいた。本当?」
『うん。もう一人は子どもの頃に死んじゃったんだけど、魂は為信お兄さんの中で生きてるんだって。お兄さんの中に光として存在するために生まれたって。』
「どういうこと?よくわかんない。」
『…僕も。』
二人は暫く黙った後、どちらともなく空を見上げてもう一度巨大龍がいないか捜してみました。
「何の用だ。」
いきなり後ろから声をかけられ、二人は飛び上がりました。
いつの間にか背の高い大柄な男性がすぐ後ろに立っていたのです。
全然その存在を感知できなかった二人はそれだけでも驚きました。
静かで、透明感のあるエネルギー。
何もかもが突き抜けて影響しないような…。
その男性は巨大白龍が姿を変えて月に降り立った姿でした。
巨大白龍の男性は「語る名はない」といいながら、それでは呼ぶのに困るとウェイが頼んだので、「T」と呼ぶといい、と教えてくれてました。
三人は、適当な小さなクレーターに座って、月面基地を出入りする宇宙船を遠くに眺めながら、話をしました。
「…というわけで、帰ってきたんです。でも僕は、やっぱり彩河と一緒にいるべきだったのかなと思って。」
彩河と別れて伽羅弧に帰ってから。
遥珂はあらためて自分の種類の宇宙龍について調べ、
’このタイプの龍はかならずツインがいる’
と言われていることにこだわり始めていました。
必ずツインとして生まれてくるのなら、その意味があるのかな。
僕は彩河と一緒に行くべきだったんじゃないだろうか。
遥珂は、自分の選択を間違えたのかと迷い始めていました。
Tは、遥珂の話をきいてそっけなく答えました。
「定義された情報にこだわることはない。」
「定義された情報…?」
「こういうものだ、こうあるべきだ、と言われているものだ。」
Tは、二人の少年にどう説明しようかと考え、言葉を選びながら話しているようでした。
「例えば俺は「T」だと名乗った。すると、Tだと定義される。
それは、いわばラベルのようなものだ。
ただの分類項目だ。
あれば他人には便利だろうが、それは俺の本質をあらわしたものではない。
ただの情報の一面でしかないのだ。」
Tは遥珂を見て続けました。
「お前は、お前だ。
双子の片割れだ、宇宙龍だ、そんな事はラベルでしかない。
そしてラベルに沿って生きる理由はどこにもない。
お前はお前の魂が感じる通りに自分の道をみつければいい。」
遥珂の顔がぱっと明るくなりました。
「はい!そうします!」
Tは素直な子どもたちの反応にふっと表情を崩しました。
その途端、すっと崩れるように姿がなくなり。
そしていつの間にか月の裏側に浮かぶ巨大な宇宙龍となってとぐろを巻いていました。
「ありがとうございました!」
遥珂とウェイは巨大白龍に頭を下げてお礼をいうと、伽羅弧に帰ろうと彼らも飛び立ちました。
伽羅弧の、特殊訓練場。
アズマは剣を取り出しました。
通常、彼は訓練場では剣を使うことなく、その身長と同じくらいの重く黒い棒を使います。
しかし今回はその目の色と同じ、緑と濃紺の混じったような色合いのスラリとした剣を抜き放ち、相手の闘気すら誘い出すようなスサノオの戦いのエネルギーを出していいました。
「さぁ。二人とも。同時に来てもいいぜ。」
径と廻は、それぞれが己の剣を持ち、お互い少し離れて自分のポジションを決めると、構えました。
訓練場の端には、エネルギーの影響を受けないエリアが設置され、そこに美雨が座っています。
エフェクトは訓練場の外から医務官ハタにそっと連絡をいれました。
特殊訓練場の近くでスタンバイするようにと。
そして
「もしかしたら…また再生術が必要になるかも。」とも。
つづく。
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Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。