2009年07月27日
第44話 祝いの饗宴[白龍物語]
第44話 祝いの饗宴
伽羅弧の雄大な空を、一羽の鳳凰がゆっくりと風にのって飛んでいます。
ここはエリア1の上空。
鳳凰はすーっとゆるやかな弧を描いて向きを変えると、
海岸線にそって静かに東に向かいました。
伽羅弧の雄大な空を、一羽の鳳凰がゆっくりと風にのって飛んでいます。
ここはエリア1の上空。
鳳凰はすーっとゆるやかな弧を描いて向きを変えると、
海岸線にそって静かに東に向かいました。
白い砂浜の海岸では太陽の光を受けてきらきらと砂が宝石のように輝き
青い海と白い波しぶきが間断なく新たな海岸線のラインを引きなおしています。
やがて現れる断崖絶壁がその砂浜の海岸線の終わりを告げ。
鳳凰は少し向きを変えて、海岸と平行していた森の上空を飛び続けました。
ほどなく湖が見えてきます。
透明な水を湛えた静かな湖面には空の青さと白い雲が映りこみ。
そして周囲の森の緑も水のキャンパスに彩りを添えています。
ふいに、滝が出現。
湖につながる川へと流れ落ちる滝。
その滝の上流はまたもや滝。
上にたどるにつれ、それは細かな水の流れと小さな滝へとどんどん変化し。
多くの滝が放つ水しぶきに太陽の光があたり、辺りは切れることのない虹が輝く世界。
そこを通り過ぎると。
砂浜の海岸のない、海に切り立った崖のある地帯。
ここはすでに砂浜のある海岸線とはほぼ直角をなす、南北に伸びる山の稜線にそったあたり。
険しく高い山々の連なりははるか彼方まで続くよう。
その終わりはまるで存在しないかのようにひたすら続く壮大な山の、雲の上の稜線に沿ってレンガを重ねて作られたような頑丈な長城があり。
そこは普段守りの兵士たちが行きかうのみ。
そして長城の先には頑丈な『北牢』と呼ばれる塔があり。
直下には鋭い崖、そして青い海が波しぶきを上げているだけ。
鳳凰はここで向きを変えて、滝のある地帯へと戻ってきました。
岩棚の上には、緑広がる台地があり。
そこに咲く花々はそれぞれが小さな喜びの歌を歌い続けています。
そしてさらにその台地の上。
さらに高く、さらに鋭い崖の上にひろがる芝生の台地。
やがて雲に届きそうなほどの高台。
そこが、径と美雨の披露宴会場でした。
すっかり準備は済み、テーブルや椅子、飾りつけなども済んで音楽を担当する者たちが音あわせと軽い練習を始めています。
鳳凰はその上を舞うように一周すると、七色の輝きを持つ光を会場に振りまきながらゆっくりと降りてきました。そして降り立つと同時に紫乃の姿に変わります。
すぐに、会場の案内を担当している者がやってきて頭を下げました。
紫乃はにこりと笑って、案内する者の示すテーブルへと移動し、途中から先に到着していた夫のアーシャスのエスコートで彼の横の座席につきました。
さらに次々と、龍、鳳凰、麒麟、ユニコーン、天使たちなどが三々五々集まってきます。
それぞれがそれぞれの祝福の光を会場に振りまき、そして下りてきました。
径と美雨の新居はこの会場に沿った崖を垂直に100mほど上った山の中に、崖をくりぬくように造られました。
外からは大きな岩棚を模したバルコニーが張り出し、知らない者からみると崖に存在するただの岩棚と浅い洞窟らしき風景に見えます。
しかしそこには龍や麒麟や鳳凰が直接空から入れる造り。
そこから直接リビングにつながり、リビングからほぼ仕切りをつけずにオープンタイプのダイニング・キッチンにつながり、寝室、その他各部屋へも廊下を設けずにつながっているこじんまりとした造り。
クリスタル城や長城からつながる内部の廊下に面したドアはあるものの。
造られてすぐから出入りには殆どこの岩棚のバルコニーが使われていました。
美雨は結婚式の時の全身をすっぽりと覆い隠すベールを脱ぎ、代わりに花を編んで作った髪飾りをつけて髪を結いなおされていました。
径のエスコートでバルコニーから出た二人は径が出した雲に乗って眼下の会場に移動。
拍手が沸き起こり、乾杯の声が起こります。
あとは、無礼講。
神々の饗宴。
楽しげな語らいと笑い声。
その背景には伽羅弧の空と海が広がり、滝の作り出す虹が色のハーモニーを奏でます。
やがて、日が傾き、伽羅弧の空がオレンジ色に染まり始めた頃。
花嫁の父が、古の神々の時代から伝わる横笛を取り出して吹き始めました。
その音色に多くの語らいがその時をとめ、奏でる音に耳を傾けます。
促がされて花婿は花嫁を連れ出すと、ふたりで男女の舞を舞い始めました。
あの時。
父親と踊る彼女をみて、己が一緒に踊りたいと願った。
その舞を踊る径の幸福は例えようもなく。
二人は誰をも幸せにするだけのエネルギーを放っていました。
一曲終わり、拍手の後。
二人の踊りを少し切ない目で黙って見ていた廻が楽隊のところへ行き、ヴァイオリンを手にとって笑顔でリズムを取り始めました。
それにアズマの笛とエフェクトのタンバンリンも加わり、さらに楽隊の伴奏が加わって楽しいステップの音楽が会場を楽しくにぎやかに飾ります。
花婿の両親が場に出て踊り始めたのを皮切りに、神々もまた次々と一緒に踊り始め、それぞれが楽しくステップを踏み始めました。
少し離れた席で傍観者のように見ていたヤイシャも、紫乃との踊りを終えたアーシャスが誘い、踊りの輪に加わり。
やがて日が暮れるにつれ、ぽっぽっほっ…と会場に設置された小さなかがり火が灯り始め。
さらに神々の笑い声や音楽は続くのでした。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
青い海と白い波しぶきが間断なく新たな海岸線のラインを引きなおしています。
やがて現れる断崖絶壁がその砂浜の海岸線の終わりを告げ。
鳳凰は少し向きを変えて、海岸と平行していた森の上空を飛び続けました。
ほどなく湖が見えてきます。
透明な水を湛えた静かな湖面には空の青さと白い雲が映りこみ。
そして周囲の森の緑も水のキャンパスに彩りを添えています。
ふいに、滝が出現。
湖につながる川へと流れ落ちる滝。
その滝の上流はまたもや滝。
上にたどるにつれ、それは細かな水の流れと小さな滝へとどんどん変化し。
多くの滝が放つ水しぶきに太陽の光があたり、辺りは切れることのない虹が輝く世界。
そこを通り過ぎると。
砂浜の海岸のない、海に切り立った崖のある地帯。
ここはすでに砂浜のある海岸線とはほぼ直角をなす、南北に伸びる山の稜線にそったあたり。
険しく高い山々の連なりははるか彼方まで続くよう。
その終わりはまるで存在しないかのようにひたすら続く壮大な山の、雲の上の稜線に沿ってレンガを重ねて作られたような頑丈な長城があり。
そこは普段守りの兵士たちが行きかうのみ。
そして長城の先には頑丈な『北牢』と呼ばれる塔があり。
直下には鋭い崖、そして青い海が波しぶきを上げているだけ。
鳳凰はここで向きを変えて、滝のある地帯へと戻ってきました。
岩棚の上には、緑広がる台地があり。
そこに咲く花々はそれぞれが小さな喜びの歌を歌い続けています。
そしてさらにその台地の上。
さらに高く、さらに鋭い崖の上にひろがる芝生の台地。
やがて雲に届きそうなほどの高台。
そこが、径と美雨の披露宴会場でした。
すっかり準備は済み、テーブルや椅子、飾りつけなども済んで音楽を担当する者たちが音あわせと軽い練習を始めています。
鳳凰はその上を舞うように一周すると、七色の輝きを持つ光を会場に振りまきながらゆっくりと降りてきました。そして降り立つと同時に紫乃の姿に変わります。
すぐに、会場の案内を担当している者がやってきて頭を下げました。
紫乃はにこりと笑って、案内する者の示すテーブルへと移動し、途中から先に到着していた夫のアーシャスのエスコートで彼の横の座席につきました。
さらに次々と、龍、鳳凰、麒麟、ユニコーン、天使たちなどが三々五々集まってきます。
それぞれがそれぞれの祝福の光を会場に振りまき、そして下りてきました。
径と美雨の新居はこの会場に沿った崖を垂直に100mほど上った山の中に、崖をくりぬくように造られました。
外からは大きな岩棚を模したバルコニーが張り出し、知らない者からみると崖に存在するただの岩棚と浅い洞窟らしき風景に見えます。
しかしそこには龍や麒麟や鳳凰が直接空から入れる造り。
そこから直接リビングにつながり、リビングからほぼ仕切りをつけずにオープンタイプのダイニング・キッチンにつながり、寝室、その他各部屋へも廊下を設けずにつながっているこじんまりとした造り。
クリスタル城や長城からつながる内部の廊下に面したドアはあるものの。
造られてすぐから出入りには殆どこの岩棚のバルコニーが使われていました。
美雨は結婚式の時の全身をすっぽりと覆い隠すベールを脱ぎ、代わりに花を編んで作った髪飾りをつけて髪を結いなおされていました。
径のエスコートでバルコニーから出た二人は径が出した雲に乗って眼下の会場に移動。
拍手が沸き起こり、乾杯の声が起こります。
あとは、無礼講。
神々の饗宴。
楽しげな語らいと笑い声。
その背景には伽羅弧の空と海が広がり、滝の作り出す虹が色のハーモニーを奏でます。
やがて、日が傾き、伽羅弧の空がオレンジ色に染まり始めた頃。
花嫁の父が、古の神々の時代から伝わる横笛を取り出して吹き始めました。
その音色に多くの語らいがその時をとめ、奏でる音に耳を傾けます。
促がされて花婿は花嫁を連れ出すと、ふたりで男女の舞を舞い始めました。
あの時。
父親と踊る彼女をみて、己が一緒に踊りたいと願った。
その舞を踊る径の幸福は例えようもなく。
二人は誰をも幸せにするだけのエネルギーを放っていました。
一曲終わり、拍手の後。
二人の踊りを少し切ない目で黙って見ていた廻が楽隊のところへ行き、ヴァイオリンを手にとって笑顔でリズムを取り始めました。
それにアズマの笛とエフェクトのタンバンリンも加わり、さらに楽隊の伴奏が加わって楽しいステップの音楽が会場を楽しくにぎやかに飾ります。
花婿の両親が場に出て踊り始めたのを皮切りに、神々もまた次々と一緒に踊り始め、それぞれが楽しくステップを踏み始めました。
少し離れた席で傍観者のように見ていたヤイシャも、紫乃との踊りを終えたアーシャスが誘い、踊りの輪に加わり。
やがて日が暮れるにつれ、ぽっぽっほっ…と会場に設置された小さなかがり火が灯り始め。
さらに神々の笑い声や音楽は続くのでした。
つづく。
用語、キャラクター解説はこちら 目次代わりのタイトル一覧は、タグをクリックしてご覧ください。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。