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2009年08月06日

第11話 喉の縛り[赤龍物語]

第11話 喉のしばり

美雨は、ベッドの中で静かに横たわりながら、ずっと考えていました。

『君の命を危険にさらしてしまうくらいなら…伽羅弧に帰ろう。』
あの時の彼の目…。

第11話 喉の縛り[赤龍物語]

確かに、深い愛情を示していてくれました。
でも。

 何か…違う。
 何か、隠してる。
 そう、…傷ついている。

 ちょっと疲れちゃっただけよ?私。
 なのになぜ命を危険にさらすなんて…。

美雨は、両手を上に伸ばして、記憶の中の径に触れました。

 教えて。

ふいに、時が動きます。


前日の世界に移動しました。
そして透明な空気のような存在になり、昨日の径が見舞いに来てくれた時にもどります。

 もうちょっと前。

さらに時が戻ります。
演劇部の先輩たちが径を囲んでいる。このとき?
しかし、会話を聞いて径の表情をみてみると、違う、と感じます。

さらに時を戻して。

美雨は、径がデルタとミーティングルームで話しこんでいる所にもどりました。
空中から、二人を見下ろして会話を聞きだします。

 場合によっては、死んでしまう…。
 最悪の場合、転生待ち…。
 総エネルギー量が径よりずっと少ない…。
 頑張りすぎていきなり折れてしまうような、性質。

そしてその後、医務院に向かう径が考えた事。

『二人だけでやっていけると思っていた。
 その判断は甘かったのか…?』


 ああ!

美雨は一気に病室のベッドの自分に戻り、涙の流れる目を両手で覆いました。

 私ったら!なんてことを!!
 彼に…彼の世話をしているつもりで、ただ、自分を疲れさせて。
 そして彼を深く傷つけてしまった…。

 そうじゃない。
 「二人三脚で歩くこと。」
 って、お母さまはおっしゃってたじゃない!

 妻は、女官じゃない。って、何度も。
 私、その意味をちゃんと理解してなかった!


ぐっとノドの奥から何かが突き上げ、美雨はいきなり咳き込みに襲われました。
咳き込みの激しさに、通りがかった看護士がかけてきます。

そしていきなりお腹の奥が痛くなり、美雨は体をふたつに折って、さらに咳き込みました。

 何か出てくる・・・。

美雨のお腹から、口を通して何か黒いものが出てきたような気がしました。
同時に、胸の奥からも。
ノドからも。

それは、美雨自身を縛り、必要な言葉を閉ざしていた蓋のようなものでした。
それがどんどん流れ出ていきます。

美雨は、体の奥がぐっと楽になるのを感じました。

しかし十分に戻っていないエネルギー量が使った力とその発作でまた低くなり。
美雨は気を失うように眠ってしまったのでした。


つづく。



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つぶやき。
つぶやき。(2013-02-21 14:21)


Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)龍物語
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