2009年08月09日
第13話 新しい家族[赤龍物語 第2章]
赤龍物語
第2章 新しい家族
第2章 新しい家族
第13話 新しい家族
径は美雨から家事全般、それに料理を教わり。
やがて自分自身でも色々と調べて料理を楽しむようになりました。
朝はたいがい美雨が朝食とお弁当を作り。
その間に径はガーデニング、そして洗濯機を回しながら自室の掃除。
食後、どちらかが台所を片付けている間にもう一方がリビングその他の掃除をすませ。
径が自室で仕事をする日には美雨だけが大学に行き、
夕刻、美雨が帰ってくる頃にあわせて径は仕事をきりあげて夕食を作り。
径も大学に行く日は一緒に出かけ、そして帰りも待ち合わせて街歩きを楽しみ、一緒に夕食を作ったり、たまには二人で外食も楽しみ。
そして食後のゆったりとした時間は二人ですごし。
時には自室で仕事を続ける径の横に美雨は朗読の課題になった本を持ち込んで、椅子で静かに読書をしました。
ふと、本から目をあげて美雨は径を見ます。
父親譲りのハンサムな顔、母親譲りの青白色の髪と赤い目が
解析中の情報ではなく、美雨をじっと見つめている、その視線を感じたからでした。
小さな読書灯の光に照らされ静かに本を読む美雨の姿にみとれていた径は、目があうと、微笑んだ妻に同じように微笑み返し。そしてまたそれぞれ読書や研究に戻る。
そんな静かで心のつながった時間をふたりとも心から大切にしていました。
そうやって二人の生活が順調に回り始めたある日のこと。
いきなりの来客に、ドアをあけた美雨は驚きました。
「お母さま!」
「はぁ~い♪ 元気だったぁ~♪」
エフェクトは美雨を抱きしめるとキスをして、驚いて部屋から出てきた径もハグしました。
「デルタに連れてきてもらったんだけどね、そこまで案内したらさっさと帰っちゃったのよ。」
そういって玄関まで戻ると、もう一度ドアをあけて外で待っていた人物を中にいれました。
「エマ!」
美雨は子どものころから美雨を世話してくれてきた女官のエマを嬉しそうに抱きしめました。
「お嬢さま…いえ、奥さま。お久しぶりでございます。」
エマは鍛えられた女官の堅さを崩さずに、でも嬉しそうな目で美雨をみて挨拶しました。
「エマを置いてくわぁ。ま、私も数日間ご厄介になるけどね。」
リビングに落ち着いたエフェクトは、きゃらきゃらと楽しそうに美雨に言いました。
径がキッチンでお茶を入れていると、エマが慌ててキッチンに行きます。
「旦那様、わたくしがいたします。」
「いいから、いいから。君は到着したばかりだし、これ位は俺だってできるようになったとこ、見せたいんだ。」
径は笑ってそういうと、リビングにお茶を運びました。
「まあ。私がいれたお茶より美味しいじゃない。」
エフェクトは径の入れたお茶を一口飲んで嬉しそうに誉めました。
「ええ、二人でうまくやっていますよ。」
にこにこと言った径に、美雨もうなずきました。
「お母さま。エマが来てくれたのは嬉しいけど、特に女官は必要ないのよ、私たち。」
「いいえ。そうも言ってられないでしょ。」
エフェクトはにっこり笑うと、美雨のおなかをそっと押えました。
「どう?順調?」
「お母さま?!どうして…」
美雨は慌てました。
まだ、妊娠したのかも…と思った段階で、径にも話していなかったのです。
ふふふ、とエフェクトは笑うと、驚いている径にウィンクしました。
「鋭いでしょ、って言いたいとこだけどね。
紫乃よ。
時々あなたたちの様子を遠隔でみていて、すぐ気がついたらしいの。」
それを聞いたエフェクトは、すぐに必要になる…とエマと女官長に話し、エマを連れて超高速船で金星に飛んできたのでした。
幸い、地球と金星が接近していたタイミングだったのでかなり早いスピードで船は到着しました。
「だから伽羅弧を飛び出したのはほんの数時間前。
今頃、あっちじゃ大騒ぎでしょうよ、『アマテラス様の初孫』って。」
エフェクトは笑っていいました。
径は、あとのおしゃべりは殆ど聞いていませんでした。
子どもができた。
もう、そのことだけで頭がいっぱいになってしまったのです。
「美雨。…ありがとう!」
径は妻を抱きしめると、はっとして手を放しました。
「だ、大丈夫かい。休まないで。」
エフェクトが笑い出し、二人は赤くなりました。
「ね、ベテラン女官がそばにいた方が何かと便利よ。」
エマは優秀な女官でした。
しかしさすがに伽羅弧から到着したばかりでは、環境や重力、時間軸の違いで感覚の狂いを感じていました。
エマはそのための対策として径が出した薬や時計をありがたく受け取ると、何と美雨が一週間も悩まされた時差ボケ@金星バージョンをプロ根性で2日でクリアしてしまったのです。
空いている部屋の一室をあてがわれ、エフェクトと美雨に
「二人が好きな家事を楽しむのを邪魔しないように」
と言い含められ。
その後エマはかつてエフェクトが選んだマリアのように、家族同様の扱いを受けながら、径と美雨の生活になくてはならない人物となっていったのでした。
そしてエフェクトは…。
時差ボケを抱えて数日間うだうだと過ごし、やっと治まったあとは金星大学の周辺街を遊びまわり。
美雨の朗読クラス卒業発表の晴れ舞台をみてから、やっと満足して伽羅弧へ帰っていったのでした。
つづく。
やがて自分自身でも色々と調べて料理を楽しむようになりました。
朝はたいがい美雨が朝食とお弁当を作り。
その間に径はガーデニング、そして洗濯機を回しながら自室の掃除。
食後、どちらかが台所を片付けている間にもう一方がリビングその他の掃除をすませ。
径が自室で仕事をする日には美雨だけが大学に行き、
夕刻、美雨が帰ってくる頃にあわせて径は仕事をきりあげて夕食を作り。
径も大学に行く日は一緒に出かけ、そして帰りも待ち合わせて街歩きを楽しみ、一緒に夕食を作ったり、たまには二人で外食も楽しみ。
そして食後のゆったりとした時間は二人ですごし。
時には自室で仕事を続ける径の横に美雨は朗読の課題になった本を持ち込んで、椅子で静かに読書をしました。
ふと、本から目をあげて美雨は径を見ます。
父親譲りのハンサムな顔、母親譲りの青白色の髪と赤い目が
解析中の情報ではなく、美雨をじっと見つめている、その視線を感じたからでした。
小さな読書灯の光に照らされ静かに本を読む美雨の姿にみとれていた径は、目があうと、微笑んだ妻に同じように微笑み返し。そしてまたそれぞれ読書や研究に戻る。
そんな静かで心のつながった時間をふたりとも心から大切にしていました。
そうやって二人の生活が順調に回り始めたある日のこと。
いきなりの来客に、ドアをあけた美雨は驚きました。
「お母さま!」
「はぁ~い♪ 元気だったぁ~♪」
エフェクトは美雨を抱きしめるとキスをして、驚いて部屋から出てきた径もハグしました。
「デルタに連れてきてもらったんだけどね、そこまで案内したらさっさと帰っちゃったのよ。」
そういって玄関まで戻ると、もう一度ドアをあけて外で待っていた人物を中にいれました。
「エマ!」
美雨は子どものころから美雨を世話してくれてきた女官のエマを嬉しそうに抱きしめました。
「お嬢さま…いえ、奥さま。お久しぶりでございます。」
エマは鍛えられた女官の堅さを崩さずに、でも嬉しそうな目で美雨をみて挨拶しました。
「エマを置いてくわぁ。ま、私も数日間ご厄介になるけどね。」
リビングに落ち着いたエフェクトは、きゃらきゃらと楽しそうに美雨に言いました。
径がキッチンでお茶を入れていると、エマが慌ててキッチンに行きます。
「旦那様、わたくしがいたします。」
「いいから、いいから。君は到着したばかりだし、これ位は俺だってできるようになったとこ、見せたいんだ。」
径は笑ってそういうと、リビングにお茶を運びました。
「まあ。私がいれたお茶より美味しいじゃない。」
エフェクトは径の入れたお茶を一口飲んで嬉しそうに誉めました。
「ええ、二人でうまくやっていますよ。」
にこにこと言った径に、美雨もうなずきました。
「お母さま。エマが来てくれたのは嬉しいけど、特に女官は必要ないのよ、私たち。」
「いいえ。そうも言ってられないでしょ。」
エフェクトはにっこり笑うと、美雨のおなかをそっと押えました。
「どう?順調?」
「お母さま?!どうして…」
美雨は慌てました。
まだ、妊娠したのかも…と思った段階で、径にも話していなかったのです。
ふふふ、とエフェクトは笑うと、驚いている径にウィンクしました。
「鋭いでしょ、って言いたいとこだけどね。
紫乃よ。
時々あなたたちの様子を遠隔でみていて、すぐ気がついたらしいの。」
それを聞いたエフェクトは、すぐに必要になる…とエマと女官長に話し、エマを連れて超高速船で金星に飛んできたのでした。
幸い、地球と金星が接近していたタイミングだったのでかなり早いスピードで船は到着しました。
「だから伽羅弧を飛び出したのはほんの数時間前。
今頃、あっちじゃ大騒ぎでしょうよ、『アマテラス様の初孫』って。」
エフェクトは笑っていいました。
径は、あとのおしゃべりは殆ど聞いていませんでした。
子どもができた。
もう、そのことだけで頭がいっぱいになってしまったのです。
「美雨。…ありがとう!」
径は妻を抱きしめると、はっとして手を放しました。
「だ、大丈夫かい。休まないで。」
エフェクトが笑い出し、二人は赤くなりました。
「ね、ベテラン女官がそばにいた方が何かと便利よ。」
エマは優秀な女官でした。
しかしさすがに伽羅弧から到着したばかりでは、環境や重力、時間軸の違いで感覚の狂いを感じていました。
エマはそのための対策として径が出した薬や時計をありがたく受け取ると、何と美雨が一週間も悩まされた時差ボケ@金星バージョンをプロ根性で2日でクリアしてしまったのです。
空いている部屋の一室をあてがわれ、エフェクトと美雨に
「二人が好きな家事を楽しむのを邪魔しないように」
と言い含められ。
その後エマはかつてエフェクトが選んだマリアのように、家族同様の扱いを受けながら、径と美雨の生活になくてはならない人物となっていったのでした。
そしてエフェクトは…。
時差ボケを抱えて数日間うだうだと過ごし、やっと治まったあとは金星大学の周辺街を遊びまわり。
美雨の朗読クラス卒業発表の晴れ舞台をみてから、やっと満足して伽羅弧へ帰っていったのでした。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。