2009年08月14日
第22話 帰還[赤龍物語 第3章]
赤龍物語
第3章 それぞれの愛の形
第3章 それぞれの愛の形
第22話 帰還
帰りの人数が多くなったので、エフェクトは高速の小型船を一隻チャーターしました。
かつて二人だけで夢と希望に胸を膨らませこの星を訪れた径と美雨は。
いまは大勢の従者と大量の荷物、それにエフェクト、そして娘と一緒に、名残惜しげに見送ってくれた友人たちと別れを告げ、金星を離れました。
数時間で着く高速船のため、ゆったりとした個室はなく。
美雨は船内の座席まで径に抱きあげられて入り、あとはただぼんやりと船内の壁に目をやるだけでした。
窓の外をみてはしゃぐ紅と、その相手をする径の声が耳に入ってきます。
窓の外ではきっと太陽風や色とりどりの宇宙風が宇宙のキャンパスに色を塗っている…美雨は目をつぶってその様子を思い浮かべました。
「美雨。」
径にやさしく声をかけられて、美雨ははっと目を覚ましました。
「着いたよ。伽羅弧だ。」
数時間腰に重心をかけて座り続けるのが無理な美雨は、いつの間にか倒した椅子の上で、横向きに寝かされていました。
数年ぶりに帰った伽羅弧の宙港は、何も変わりがないようでした。
と思いきや。
船はするすると他の船とは違う、隔離された場所へ入り込み、ハッチがあいて通された場所は見覚えのない窓のない廊下。
「…ここは?」
径が不思議そうに見まわすと、エフェクトが説明してくれました。
「私専用通路。あのねー、どうやら私ホントにエリア3の要注意者リストに載ってるらしいのよ。それで頻繁に金星とこっち行き来しはじめたもんだから、いちいち警備に反応されなくてもいいようにって、アズマがこんなの作らせちゃったのよ。」
それよりね、リストから外してくれた方が早道だと思わない?
エフェクトの言葉に、径も美雨も笑いました。
その通路はあっさりとクリスタル城のエリアにつながり。
城の居室に入る前に、美雨は懐かしい声に「お帰り」と言われて、その声の主をきょろきょろと探しました。
と、温かいがっしりとした手が美雨の手を握ります。
「お父さま。」
アズマは、娘を抱きしめると額にキスして、「よく帰ってきた。」と告げました。
それから径と話し、初孫を抱きしめ、アズマも一緒になってクリスタル城の居室の中へ。
アーシャスと紫乃が、待っていました。
「アマテラス様。」
見えなくてもそれと判る太陽のエネルギーを受けて、美雨は車いすの中から頭を下げました。
「美雨。よく頑張りましたね。さあ、力を抜いて。真っ青ですよ。」
紫乃は美雨を抱きしめると、すぐに重力酔いしてるから別室で休ませるようにと指示を出し、美雨にエネルギーを送ってくれました。
目が覚めると、そこは新居のベッドの中。
しばらくどこにいるのか考えた後、目をつぶってエネルギーを感じて、美雨は実感しました。
ああ、帰って来たんだ。
新居が面しているエリア1の清浄な空気。
そしてヒーリングの海のエネルギーと、すぐ近くを流れる滝の清浄なエネルギーや音が届いてきます。
あの空を見たい。
あの海を見たい。
あの森を・・・
美雨はもう紫色の空の下で想像しないでもすむこの場所で、
空の青さを、森の緑を、想像するしかなかったのでした。
つづく。
美雨は船内の座席まで径に抱きあげられて入り、あとはただぼんやりと船内の壁に目をやるだけでした。
窓の外をみてはしゃぐ紅と、その相手をする径の声が耳に入ってきます。
窓の外ではきっと太陽風や色とりどりの宇宙風が宇宙のキャンパスに色を塗っている…美雨は目をつぶってその様子を思い浮かべました。
「美雨。」
径にやさしく声をかけられて、美雨ははっと目を覚ましました。
「着いたよ。伽羅弧だ。」
数時間腰に重心をかけて座り続けるのが無理な美雨は、いつの間にか倒した椅子の上で、横向きに寝かされていました。
数年ぶりに帰った伽羅弧の宙港は、何も変わりがないようでした。
と思いきや。
船はするすると他の船とは違う、隔離された場所へ入り込み、ハッチがあいて通された場所は見覚えのない窓のない廊下。
「…ここは?」
径が不思議そうに見まわすと、エフェクトが説明してくれました。
「私専用通路。あのねー、どうやら私ホントにエリア3の要注意者リストに載ってるらしいのよ。それで頻繁に金星とこっち行き来しはじめたもんだから、いちいち警備に反応されなくてもいいようにって、アズマがこんなの作らせちゃったのよ。」
それよりね、リストから外してくれた方が早道だと思わない?
エフェクトの言葉に、径も美雨も笑いました。
その通路はあっさりとクリスタル城のエリアにつながり。
城の居室に入る前に、美雨は懐かしい声に「お帰り」と言われて、その声の主をきょろきょろと探しました。
と、温かいがっしりとした手が美雨の手を握ります。
「お父さま。」
アズマは、娘を抱きしめると額にキスして、「よく帰ってきた。」と告げました。
それから径と話し、初孫を抱きしめ、アズマも一緒になってクリスタル城の居室の中へ。
アーシャスと紫乃が、待っていました。
「アマテラス様。」
見えなくてもそれと判る太陽のエネルギーを受けて、美雨は車いすの中から頭を下げました。
「美雨。よく頑張りましたね。さあ、力を抜いて。真っ青ですよ。」
紫乃は美雨を抱きしめると、すぐに重力酔いしてるから別室で休ませるようにと指示を出し、美雨にエネルギーを送ってくれました。
目が覚めると、そこは新居のベッドの中。
しばらくどこにいるのか考えた後、目をつぶってエネルギーを感じて、美雨は実感しました。
ああ、帰って来たんだ。
新居が面しているエリア1の清浄な空気。
そしてヒーリングの海のエネルギーと、すぐ近くを流れる滝の清浄なエネルギーや音が届いてきます。
あの空を見たい。
あの海を見たい。
あの森を・・・
美雨はもう紫色の空の下で想像しないでもすむこの場所で、
空の青さを、森の緑を、想像するしかなかったのでした。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│龍物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。