2009年08月25日
第4話-スセリビメ[青龍物語]
第4話 スセリビメ
ここは根の国。
零は榊(さかき)の枝を手に持ち、手桶に入れた水に葉をぽちゃ、とつけました。
それをさっと振上げてさらに右に左にと振ると、水が周りにしぶきとなって撥ねます。
「お行き!近寄るでない!」
ここは根の国。
零は榊(さかき)の枝を手に持ち、手桶に入れた水に葉をぽちゃ、とつけました。
それをさっと振上げてさらに右に左にと振ると、水が周りにしぶきとなって撥ねます。
「お行き!近寄るでない!」
大袖の衣(きぬ)に裳を履き、貫頭(かんとう)の衣をかけて帯と襷(たすき)をつけた姿。
まるで古事記にでも登場するような古代からの衣装を着て髪もまた同じく古風に高く結いあげているこの国の服装を、零はまるで生まれたときから馴染んでいたかのようにしっくりと着こなしています。
迫力のあるその声に、じわじわと近寄って来た影たちがびくっと反応して引きさがりました。
そのまま退くものもいれば、様子を伺い再び近寄ろうとしているものもあり。
零は再度、榊を強く振ります。
するとそれは金色の矛に変わり、光がきらめきました。
闇に隠れ棲むものたちは、その光があたらないようにさっと身をひるがえし逃げていきます。
零はふたたび矛を振りまわし、その光の粒子が部屋の隅々まで散らばって子らのいる部屋を守るようにオリジナルの結界を設けました。
「おかしゃま…」
小さな手が裳をぎゅっと握りって引っ張ります。
零は周囲を見渡すと、安全を確認しました。
そして緊張を解いてしゃがみ、目を合わせてにっこりと愛児たちに微笑みます。
そっくりの顔だちの、双子の男の子と女の子。
そしてまだ寝返りもままならないほどの産まれたての赤子。
零はすでに3人の子持ちになって、日々子育てにおわれていました。
ここの暮らしに必要な数だけの手伝いの者たちはいるものの、どうしてもこうやって闇に潜む存在たちがやってくるときは母の手で護らなければならない。
零が矛をひとふりすると、それは榊に戻り、すとん、と、神棚の榊立てに戻されました。
闇は邪ではない。
それはわかるけれど…。
父親が闇に棲むものである以上、こうやって闇のやさしさに逃げ込んだ者達が寄ってくるのは致し方なく。
かといって、幼子たちを護るのは母として当然のこと。
そうやって日々を過ごしながらも、零は、何か方法を間違えているような気がしてなりませんでした。
『闇が純粋なものに戻れば。
それは光と同じ存在になる。』
ある日、ふと見上げた月から降りてきた言葉に、零ははっとしました。
この、根の国には祓われた穢れが流れ込んでくる。
そうだわ。
光で追い払っているだけではきりがない。
それに増える一方だし。
零はそのやり方を変えてみることにしました。
榊を矛に変えるのをやめ、彼女自身の陰陽和合の力を加えて榊からほとばしる水に浄化のエネルギーを足して祓ってみたのです。
すると、その飛沫にぶつかった、闇に逃げ込んだ穢れのものたちがひゅっと浄化され、穢れが消えて純粋な魂に戻るのが確認されました。
そしてそのうち、零は闇に逃げ込んだ者達からこう呼ばれ始めました。
「速佐須良比売(はやさすらひめ)である、スセリビメ」
つまり零は穢れを払う祓戸大神(はらえどのおおかみ)のひとりとして、この根の国において尊敬され、頼られる神となっていったのです。
まるで古事記にでも登場するような古代からの衣装を着て髪もまた同じく古風に高く結いあげているこの国の服装を、零はまるで生まれたときから馴染んでいたかのようにしっくりと着こなしています。
迫力のあるその声に、じわじわと近寄って来た影たちがびくっと反応して引きさがりました。
そのまま退くものもいれば、様子を伺い再び近寄ろうとしているものもあり。
零は再度、榊を強く振ります。
するとそれは金色の矛に変わり、光がきらめきました。
闇に隠れ棲むものたちは、その光があたらないようにさっと身をひるがえし逃げていきます。
零はふたたび矛を振りまわし、その光の粒子が部屋の隅々まで散らばって子らのいる部屋を守るようにオリジナルの結界を設けました。
「おかしゃま…」
小さな手が裳をぎゅっと握りって引っ張ります。
零は周囲を見渡すと、安全を確認しました。
そして緊張を解いてしゃがみ、目を合わせてにっこりと愛児たちに微笑みます。
そっくりの顔だちの、双子の男の子と女の子。
そしてまだ寝返りもままならないほどの産まれたての赤子。
零はすでに3人の子持ちになって、日々子育てにおわれていました。
ここの暮らしに必要な数だけの手伝いの者たちはいるものの、どうしてもこうやって闇に潜む存在たちがやってくるときは母の手で護らなければならない。
零が矛をひとふりすると、それは榊に戻り、すとん、と、神棚の榊立てに戻されました。
闇は邪ではない。
それはわかるけれど…。
父親が闇に棲むものである以上、こうやって闇のやさしさに逃げ込んだ者達が寄ってくるのは致し方なく。
かといって、幼子たちを護るのは母として当然のこと。
そうやって日々を過ごしながらも、零は、何か方法を間違えているような気がしてなりませんでした。
『闇が純粋なものに戻れば。
それは光と同じ存在になる。』
ある日、ふと見上げた月から降りてきた言葉に、零ははっとしました。
この、根の国には祓われた穢れが流れ込んでくる。
そうだわ。
光で追い払っているだけではきりがない。
それに増える一方だし。
零はそのやり方を変えてみることにしました。
榊を矛に変えるのをやめ、彼女自身の陰陽和合の力を加えて榊からほとばしる水に浄化のエネルギーを足して祓ってみたのです。
すると、その飛沫にぶつかった、闇に逃げ込んだ穢れのものたちがひゅっと浄化され、穢れが消えて純粋な魂に戻るのが確認されました。
そしてそのうち、零は闇に逃げ込んだ者達からこう呼ばれ始めました。
「速佐須良比売(はやさすらひめ)である、スセリビメ」
つまり零は穢れを払う祓戸大神(はらえどのおおかみ)のひとりとして、この根の国において尊敬され、頼られる神となっていったのです。
祓戸大神-Wikipedia
『神職が祭祀に先立って唱える祝詞である「祓詞」では
「伊邪那岐大神筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原に 禊祓給ひし時に生り坐せる祓戸大神等」と言っており、
祓戸大神とは、日本神話の神産みの段で黄泉から帰還した伊邪那岐が禊をしたときに化成した神々の総称ということになる。』
『これらの神は葦原中国のあらゆる罪・穢を祓い去る神で、大祓詞にはそれぞれの神の役割が記されている。』
『速佐須良比売(はやさすらひめ) -- 根の国・底の国に持ち込まれたもろもろの禍事・罪・穢れをさすらって失う』
『速佐須良比売は神名の類似や根の国にいるということから須勢理毘売命(すせりびめ)に当てている。』
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(2)
│龍物語
この記事へのコメント
く~~っ!!
零、かっこいい☆
しびれるぅ~~~!!
零、かっこいい☆
しびれるぅ~~~!!
Posted by 勇者ひかり at 2009年08月25日 08:44
●勇者ひかりさん
うんうん、零ちゃんって登場するたびステキなんだよねぇ。^^
うんうん、零ちゃんって登場するたびステキなんだよねぇ。^^
Posted by pyo at 2009年08月25日 13:06
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。