2009年08月27日
第9話-宇宙船事故[青龍物語]
第9話 宇宙船事故
大掛かりな組織変更が続いていた頃のこと。
その主導を担っていたアズマはかなり忙しい日々を送っていました。
朝早くから届けられた書類に目を通しながらキッチンに入っていったアズマは、ふと目を上げて、大きなお腹を抱えてふぅふぅ言いながら料理している妻の姿をしげしげと見たあと首をかしげました。
「おい、エフェクト。いつまで妊婦してるんだ?」
いきなりニンジンが飛んできてアズマに命中。
続けてエフェクトの声も飛んできました。
「私だって好きでずっとこんなお腹抱えているわけじゃないのよ!」
大掛かりな組織変更が続いていた頃のこと。
その主導を担っていたアズマはかなり忙しい日々を送っていました。
朝早くから届けられた書類に目を通しながらキッチンに入っていったアズマは、ふと目を上げて、大きなお腹を抱えてふぅふぅ言いながら料理している妻の姿をしげしげと見たあと首をかしげました。
「おい、エフェクト。いつまで妊婦してるんだ?」
いきなりニンジンが飛んできてアズマに命中。
続けてエフェクトの声も飛んできました。
「私だって好きでずっとこんなお腹抱えているわけじゃないのよ!」
軍が解体されて、晴れて軍務と肩書きがなくなったエフェクトは大喜びでそれを受け入れ、一見、自宅でノンキでゆったりとした妊婦生活をおくっていました。
しかし異常に長い妊娠期間。
龍ならもっと早く産まれているはずなのに、全くその兆候もなく。
紫乃や医務院長のハタに診てもらっても「異状なし」という異常な状態に、みんな首をかしげるばかり。
その状況に気づいてなかったのは、組織再編に昼も夜もなく飛び回って忙しいアズマのほうだったのでした。
「ここまで育ったら会話もできるはずなのに、何の反応もないのよ。寝てるみたいで。」
エフェクトはよっこらしょ、と椅子に腰かけると、
「あー、早く二つ身になりたい。」
とつぶやきました。
エフェクトのふくれっ面をみたら、こりゃ待ってても朝食は出ないなと判断したアズマは黙って代わりにキッチンに立ちました。
そんな平和な一日の始まりの朝食を終えた頃。
エリア3の宙港事務所から緊急連絡が入りました。
「アズマ様。金星からの定期便に事故です。」
この日の定期便には、金星から帰る径と美雨が乗っているはず。
エフェクトがはっと顔色を変えて立ち上がりました。
アズマはすぐに分身を宙港事務所へ飛ばすと、本体の方はエフェクトを支えてもう一度椅子に座らせました。
「落ち着くんだ。その身体じゃ動けないだろう。」
そして径と美雨の家に通じるポータル…ドアをあけて、エマを呼びました。
真っ青になったエフェクトのことを頼み、孫たちと一緒にいるようエフェクトに話して送り出してから、アズマ本体も宙港事務所へ移動しました。
宇宙船の事故は、かなり伽羅弧に近い場所で発生していました。
「どうやら隕石と衝突したようなのですが、バリアーを含む回避システムが起動しなかったのか、それよりもエネルギーの強い隕石だったのか現時点では不明です。」
報告を受けながら、現在の状況を立体影像で確認します。
すでにレスキュー隊が飛び立ち、連絡を受けた数多くの龍や鳳凰など宇宙を飛べる存在たちも飛びたってそれぞれ現場へ向かっていました。
やがてさらに詳細な報告が入ってきます。
「どうやら亜空間を飛んだ存在に巻き込まれた何らかの物体が、宇宙船の外郭ぎりぎりで出現したようです。」
「被害は?」
「1区画破損。数名宇宙へ吸い出されたようですがそれ以外の区画は無事です。」
宇宙船はレスキュー隊と龍たちの助けを借りて、何とか伽羅弧にたどり着きました。
宇宙へ吸い出されたのは五人。
そのうち、一人はすぐ遺体で見つかりすぐに回収。
アズマは宇宙船が収容されたドッグに行き、自らの眼で確認しました。
遺体は、朔間の助手、シリウス人のデルタでした。
そして救出された乗客・乗務員の中に径と美雨の姿はありませんでした。
宇宙を漂いながらはっと目が覚めた径は、束の間、何があったのか考えました。
彼のクリスタルがまるでビーコンのように、リズムをとってエネルギーを発しています。
辺りを見回しながら一緒にいたはずの妻の姿を探し、呼びかけましたが返事はありません。
そのうち径は己が地球の重力につかまり少しずつゆっくりと落ちはじめていることに気がつき、急いで地球から離れようとエネルギーを込めました。
ズキン!と酷い頭痛が彼を襲います。
「怪我をしているのか…」
頭の傷をはじめとする全身の打ち身や怪我は、径のエネルギーを奪い続けていました。
やがてエネルギーの喪失による身体の内側からの震えが始まった頃。
径のクリスタルの報せに気づいた鳳凰-妹の円-が七色の光を帯びながら飛んできて、彼を救出しました。
鳳凰に乗って伽羅弧に帰る途中、径は白龍の遥珂が何かを探すように飛び回っている姿をみかけ、嫌な予感を覚えました。
そして医務院で傷の手当てを受け、そこで径はデルタの死亡と美雨行方不明を正式に知ったのです。
彼は傷の治療を終えるとすぐに事故対策本部がおかれている宙港事務所へ行きました。
「径。大丈夫か。」
アズマは唇まで真っ青になった径の様子をみて驚きましたが、彼の目をみて、彼が事故対策本部にいることを認めました。
径はアズマに知っている状況を説明しました。
地球-伽羅弧間の宇宙立体影像を前に、事故の様子や径が流されていた方向を確認します。
美雨の捜索はそのあたりを中心に続けられましたが、美雨らしき人影も龍も、残存エネルギーすらみつけることができず。
この事故で径を含む2名が救出され、1名が死亡。
そして美雨を含む2名が行方不明となっていました。
つづく。
しかし異常に長い妊娠期間。
龍ならもっと早く産まれているはずなのに、全くその兆候もなく。
紫乃や医務院長のハタに診てもらっても「異状なし」という異常な状態に、みんな首をかしげるばかり。
その状況に気づいてなかったのは、組織再編に昼も夜もなく飛び回って忙しいアズマのほうだったのでした。
「ここまで育ったら会話もできるはずなのに、何の反応もないのよ。寝てるみたいで。」
エフェクトはよっこらしょ、と椅子に腰かけると、
「あー、早く二つ身になりたい。」
とつぶやきました。
エフェクトのふくれっ面をみたら、こりゃ待ってても朝食は出ないなと判断したアズマは黙って代わりにキッチンに立ちました。
そんな平和な一日の始まりの朝食を終えた頃。
エリア3の宙港事務所から緊急連絡が入りました。
「アズマ様。金星からの定期便に事故です。」
この日の定期便には、金星から帰る径と美雨が乗っているはず。
エフェクトがはっと顔色を変えて立ち上がりました。
アズマはすぐに分身を宙港事務所へ飛ばすと、本体の方はエフェクトを支えてもう一度椅子に座らせました。
「落ち着くんだ。その身体じゃ動けないだろう。」
そして径と美雨の家に通じるポータル…ドアをあけて、エマを呼びました。
真っ青になったエフェクトのことを頼み、孫たちと一緒にいるようエフェクトに話して送り出してから、アズマ本体も宙港事務所へ移動しました。
宇宙船の事故は、かなり伽羅弧に近い場所で発生していました。
「どうやら隕石と衝突したようなのですが、バリアーを含む回避システムが起動しなかったのか、それよりもエネルギーの強い隕石だったのか現時点では不明です。」
報告を受けながら、現在の状況を立体影像で確認します。
すでにレスキュー隊が飛び立ち、連絡を受けた数多くの龍や鳳凰など宇宙を飛べる存在たちも飛びたってそれぞれ現場へ向かっていました。
やがてさらに詳細な報告が入ってきます。
「どうやら亜空間を飛んだ存在に巻き込まれた何らかの物体が、宇宙船の外郭ぎりぎりで出現したようです。」
「被害は?」
「1区画破損。数名宇宙へ吸い出されたようですがそれ以外の区画は無事です。」
宇宙船はレスキュー隊と龍たちの助けを借りて、何とか伽羅弧にたどり着きました。
宇宙へ吸い出されたのは五人。
そのうち、一人はすぐ遺体で見つかりすぐに回収。
アズマは宇宙船が収容されたドッグに行き、自らの眼で確認しました。
遺体は、朔間の助手、シリウス人のデルタでした。
そして救出された乗客・乗務員の中に径と美雨の姿はありませんでした。
宇宙を漂いながらはっと目が覚めた径は、束の間、何があったのか考えました。
彼のクリスタルがまるでビーコンのように、リズムをとってエネルギーを発しています。
辺りを見回しながら一緒にいたはずの妻の姿を探し、呼びかけましたが返事はありません。
そのうち径は己が地球の重力につかまり少しずつゆっくりと落ちはじめていることに気がつき、急いで地球から離れようとエネルギーを込めました。
ズキン!と酷い頭痛が彼を襲います。
「怪我をしているのか…」
頭の傷をはじめとする全身の打ち身や怪我は、径のエネルギーを奪い続けていました。
やがてエネルギーの喪失による身体の内側からの震えが始まった頃。
径のクリスタルの報せに気づいた鳳凰-妹の円-が七色の光を帯びながら飛んできて、彼を救出しました。
鳳凰に乗って伽羅弧に帰る途中、径は白龍の遥珂が何かを探すように飛び回っている姿をみかけ、嫌な予感を覚えました。
そして医務院で傷の手当てを受け、そこで径はデルタの死亡と美雨行方不明を正式に知ったのです。
彼は傷の治療を終えるとすぐに事故対策本部がおかれている宙港事務所へ行きました。
「径。大丈夫か。」
アズマは唇まで真っ青になった径の様子をみて驚きましたが、彼の目をみて、彼が事故対策本部にいることを認めました。
径はアズマに知っている状況を説明しました。
地球-伽羅弧間の宇宙立体影像を前に、事故の様子や径が流されていた方向を確認します。
美雨の捜索はそのあたりを中心に続けられましたが、美雨らしき人影も龍も、残存エネルギーすらみつけることができず。
この事故で径を含む2名が救出され、1名が死亡。
そして美雨を含む2名が行方不明となっていました。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(4)
│龍物語
この記事へのコメント
なんだかな、なんだかな
心拍数が上がります
どこいっちゃったのでしょう‥美雨ちゃん(;_;)
残存エネルギーもないとは‥この先想像もつきませんが、どこか別の場所で救助を受けている事を祈ります(>_<)
心拍数が上がります
どこいっちゃったのでしょう‥美雨ちゃん(;_;)
残存エネルギーもないとは‥この先想像もつきませんが、どこか別の場所で救助を受けている事を祈ります(>_<)
Posted by テン at 2009年08月27日 19:41
ひぃー大変なことに!!
Posted by ひつじ at 2009年08月27日 23:01
まさか~龍二体生け捕り成功って、事では~ないですよね~。
アズマさんが地球に落ちた時の話を、ふと思い出してしまいました。
やぁね、心配性~(トホホ
アズマさんが地球に落ちた時の話を、ふと思い出してしまいました。
やぁね、心配性~(トホホ
Posted by こはきゅ at 2009年08月28日 01:38
●テンさん
うわ~心拍数?!お、おちついて読んでくださいね。
●ひつじさん
そうなんです、いきなりSFしちゃってます。
●こはきゅさん
おお!すごい読み込んでますね!
そうそう、アズマは捕獲されかけて地球に落ちたんですが、
あの頃の好戦的な宇宙人たちはもう地球の周りにはいませんのでご心配なく~。
うわ~心拍数?!お、おちついて読んでくださいね。
●ひつじさん
そうなんです、いきなりSFしちゃってます。
●こはきゅさん
おお!すごい読み込んでますね!
そうそう、アズマは捕獲されかけて地球に落ちたんですが、
あの頃の好戦的な宇宙人たちはもう地球の周りにはいませんのでご心配なく~。
Posted by pyo at 2009年08月28日 12:06
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。