2009年08月28日
第11話-黄泉津大神[青龍物語]
第11話 黄泉津大神(よもつおおかみ)
美雨の肉体が恐らくこの矢が作る亜空間を通過できないであろう事。
為信はその事を知っていました。
しかしあえて最も早い亜空間のルートを選び、そこを通れる遥珂の能力に妹と弟の魂をかけたのです。
それには理由がありました。
美雨の肉体が恐らくこの矢が作る亜空間を通過できないであろう事。
為信はその事を知っていました。
しかしあえて最も早い亜空間のルートを選び、そこを通れる遥珂の能力に妹と弟の魂をかけたのです。
それには理由がありました。
白龍の姿が亜空間に消えてすぐ。
ガサ、と庭の木々が揺れ、闇からの声が届きました。
『大国主殿。我らの主宰神をお迎えに参った。お引渡しいただこう。』
為信は零にそっと合図しました。
零はすぐに榊を手に取ると、それを矛に変えて子どもたちを抱き寄せ、家で働く者たちも自らの背にして守ります。
「ここには居らぬ。」
為信の返答に、強い圧力のようなエネルギーが送られてきます。
『そんなはずはない!確かに飛ばされてきたはずだ!』
「誰の事だ。」
『黄龍だ。名を、美雨殿という。我らの新たな黄泉津大神だ。』
「黄龍の美雨なら、天津神の神子だ。なぜ黄泉津大神となる。」
『何故でも!我らに必要だからだ。』
「そうか残念だったな。とっくに天照大神の元へ帰った。」
ビシ!っと石つぶてのようなものが飛んで為信にぶつかりました。
はっと動く零を、片手で合図して抑え、為信は’声’に言いました。
「何の真似だ。」
『何故我らの邪魔をする!我らがここへお迎えする準備をしていたことは先刻承知のはず。』
「天津神のもとに住むものを本人の承諾もなしに無理矢理引き下ろそうとしたのはそちらだろう。邪魔もへったくれもあるか。」
ふたたび石つぶてが飛び、為信は手にしていた弓でそれを払い落としました。カン!と強い音がして石が庭先に転がります。
不穏な空気がながれ、子どもたちが怯えているのが伝わってきます。
「顔を合わせてはなそう。黄泉比良坂(よもつひらさか)が我らの境界だ。」
『いいだろう。』
為信は静かに弓を庭に残し、外へ出ました。
彼の動きにあわせ、影も動いていくのがわかります。
話し合いは平行線のまま。
しばらくして帰ってきた為信は血のにじむお腹を片手で押さえていました。服が血で染まり、身体や頭など数箇所に怪我をしています。
零は急いで手当てを始めました。
「なぜ…あなた程の力ならば、あの者たちがかすることすら出来ないでしょうに。」
零がこぼすと、為信はふっと笑みを浮かべて肯きました。
「だからさ。俺が本気を出して戦えば、やつらを魂ごとバラバラにすることなどわけはない。だがそれをすると国と国との本格的な戦になる。それほどにあれらは焦っているからな。
イザナミ様がついておられた黄泉津大神がいなくなってもう何年にもなる。すでに黄泉の国はまとめるものがいない混乱を起こし始めてるんだ。」
「それで美雨ちゃんを…?」
「ああ。美雨のあの火傷は、赤龍を産んだことによるものだと聞いている。それにより径と別れ命を失って黄泉の国に堕ちていれば、おそらくヤツらが思うとおり黄泉津大神に選ばれていたのだろうが…。」
径と美雨はその危機を乗り越えた。
為信はその情報もすでに得ていました。
「こうなると、誰か他の者が必要ということになるのか…。」
「それは私がいたします。」
庭に入ってきた人物の言葉に、為信と零は驚きました。
「デルタ!」
宇宙船事故で死亡したデルタは、自らの魂を黄泉の国に飛ばしていました。
為信を襲った黄泉の国のものたちが国境でごたついている間に素早く残りの国内の状況をまとめ、黄泉津大神就任の宣言をしてから根の国に挨拶に来たのです。
「なぜあなたが…」
零はデルタに聞きました。
為信も零も朔間が開設した寺子屋で学んだ身。朔間の助手のデルタを子どもの頃から知っていました。
「私はシリウス人ですが、もう長いこと地球の研究とサポートを続けてきました。」
デルタはすすめられるままに為信の家にあがり、お茶を出されると頭を下げて受け取り相変わらずの無表情で飲みました。
「朔間様のご推薦をいただいて、新たなポジションで働いてみる事にしたのです。」
「美雨のために…?」
「それはひとつのきっかけにすぎません。私はこの新たなポジションに興味を持ち、喜んで肉体を脱ぎ捨ててまいりました。」
喜んで…という言葉がどこに存在するのかと思うほど淡々と無表情のデルタは続けました。
しかし為信はこの展開を面白がり、さて伽羅弧ではこの一覧の出来事がどういう騒ぎになっているのだろうかと考えたのでした。
つづく。
ガサ、と庭の木々が揺れ、闇からの声が届きました。
『大国主殿。我らの主宰神をお迎えに参った。お引渡しいただこう。』
為信は零にそっと合図しました。
零はすぐに榊を手に取ると、それを矛に変えて子どもたちを抱き寄せ、家で働く者たちも自らの背にして守ります。
「ここには居らぬ。」
為信の返答に、強い圧力のようなエネルギーが送られてきます。
『そんなはずはない!確かに飛ばされてきたはずだ!』
「誰の事だ。」
『黄龍だ。名を、美雨殿という。我らの新たな黄泉津大神だ。』
「黄龍の美雨なら、天津神の神子だ。なぜ黄泉津大神となる。」
『何故でも!我らに必要だからだ。』
「そうか残念だったな。とっくに天照大神の元へ帰った。」
ビシ!っと石つぶてのようなものが飛んで為信にぶつかりました。
はっと動く零を、片手で合図して抑え、為信は’声’に言いました。
「何の真似だ。」
『何故我らの邪魔をする!我らがここへお迎えする準備をしていたことは先刻承知のはず。』
「天津神のもとに住むものを本人の承諾もなしに無理矢理引き下ろそうとしたのはそちらだろう。邪魔もへったくれもあるか。」
ふたたび石つぶてが飛び、為信は手にしていた弓でそれを払い落としました。カン!と強い音がして石が庭先に転がります。
不穏な空気がながれ、子どもたちが怯えているのが伝わってきます。
「顔を合わせてはなそう。黄泉比良坂(よもつひらさか)が我らの境界だ。」
『いいだろう。』
為信は静かに弓を庭に残し、外へ出ました。
彼の動きにあわせ、影も動いていくのがわかります。
話し合いは平行線のまま。
しばらくして帰ってきた為信は血のにじむお腹を片手で押さえていました。服が血で染まり、身体や頭など数箇所に怪我をしています。
零は急いで手当てを始めました。
「なぜ…あなた程の力ならば、あの者たちがかすることすら出来ないでしょうに。」
零がこぼすと、為信はふっと笑みを浮かべて肯きました。
「だからさ。俺が本気を出して戦えば、やつらを魂ごとバラバラにすることなどわけはない。だがそれをすると国と国との本格的な戦になる。それほどにあれらは焦っているからな。
イザナミ様がついておられた黄泉津大神がいなくなってもう何年にもなる。すでに黄泉の国はまとめるものがいない混乱を起こし始めてるんだ。」
「それで美雨ちゃんを…?」
「ああ。美雨のあの火傷は、赤龍を産んだことによるものだと聞いている。それにより径と別れ命を失って黄泉の国に堕ちていれば、おそらくヤツらが思うとおり黄泉津大神に選ばれていたのだろうが…。」
径と美雨はその危機を乗り越えた。
為信はその情報もすでに得ていました。
「こうなると、誰か他の者が必要ということになるのか…。」
「それは私がいたします。」
庭に入ってきた人物の言葉に、為信と零は驚きました。
「デルタ!」
宇宙船事故で死亡したデルタは、自らの魂を黄泉の国に飛ばしていました。
為信を襲った黄泉の国のものたちが国境でごたついている間に素早く残りの国内の状況をまとめ、黄泉津大神就任の宣言をしてから根の国に挨拶に来たのです。
「なぜあなたが…」
零はデルタに聞きました。
為信も零も朔間が開設した寺子屋で学んだ身。朔間の助手のデルタを子どもの頃から知っていました。
「私はシリウス人ですが、もう長いこと地球の研究とサポートを続けてきました。」
デルタはすすめられるままに為信の家にあがり、お茶を出されると頭を下げて受け取り相変わらずの無表情で飲みました。
「朔間様のご推薦をいただいて、新たなポジションで働いてみる事にしたのです。」
「美雨のために…?」
「それはひとつのきっかけにすぎません。私はこの新たなポジションに興味を持ち、喜んで肉体を脱ぎ捨ててまいりました。」
喜んで…という言葉がどこに存在するのかと思うほど淡々と無表情のデルタは続けました。
しかし為信はこの展開を面白がり、さて伽羅弧ではこの一覧の出来事がどういう騒ぎになっているのだろうかと考えたのでした。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 19:00│Comments(5)
│龍物語
この記事へのコメント
mixiでは語られてないところで、そういうことになってたんですねー!びっくり!
Posted by いをる at 2009年08月28日 20:22
びっくりです。。。
デルタさんも新たな変革があったのですね~♪
デルタさんも新たな変革があったのですね~♪
Posted by minto at 2009年08月28日 21:17
mixiで、宇宙船事故により死者2名とあったのが、気になっていたのですが、そのうちの1名がデルタさんとわかってビックリしていました。
まさか、こんな展開になるとは・・・!
すべて準備されたことなのですね。
まさか、こんな展開になるとは・・・!
すべて準備されたことなのですね。
Posted by ゆきちゃん at 2009年08月28日 22:22
わぉ~♪
ビックリしました!
デルタさん、やりますネェ~☆
ビックリしました!
デルタさん、やりますネェ~☆
Posted by はな at 2009年08月29日 10:45
●いをるさん
そうなんですー。
ある日Mさんが「痛い」って言いだしたのが気になって、
為信をつつきまわしてやっとみせてもらいました。^^;
武神が守護霊だとたまにこっちも痛い目にあいます。。。
●mintoさん
そうなんです、まさかデルタがこんなすごい役割もって登場してたとはー!と驚きでした。
●ゆきちゃんさん
気になる…というコメントがあったので私もそうだなと改めて気付いて。
誰?とつないでみたらデルタだったんで驚いたんですよ。
そうしたらこういう話でした。
●はなさん
驚きますよねぇ。
この淡々としたデルタの様子が…(苦笑)
そうなんですー。
ある日Mさんが「痛い」って言いだしたのが気になって、
為信をつつきまわしてやっとみせてもらいました。^^;
武神が守護霊だとたまにこっちも痛い目にあいます。。。
●mintoさん
そうなんです、まさかデルタがこんなすごい役割もって登場してたとはー!と驚きでした。
●ゆきちゃんさん
気になる…というコメントがあったので私もそうだなと改めて気付いて。
誰?とつないでみたらデルタだったんで驚いたんですよ。
そうしたらこういう話でした。
●はなさん
驚きますよねぇ。
この淡々としたデルタの様子が…(苦笑)
Posted by pyo at 2009年08月29日 18:35
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。