2009年10月27日
転生6-ひとつの想い[伽羅孤3]
アズマは青夢が作ってくれた竪琴をたまに長城で奏でていました。
高い山の稜線に沿ってつくられた長城では、相も変わらず心地よい冷たい風が吹き上げてきます。
その風にアズマが奏でる静かな音が乗り、空に広がっていくように消えていきました。
今は兵士たちが指示を受けるためにここを訪れる事もなく。
冷たい風に柔らかな金髪を揺らせながら手すりにもたれて振り返り、
いたずらっぽい表情で笑いかける金色の目の妻の姿もなく。
その妻を抱きよせて熱い口づけを交わした、そんな日々は遠くに過ぎ去って。
そうして彼は日々を静かに暮らしていました。
(やもめというより隠居暮らしって感じだぞ?)
ある日、美雨(ちゅらみ)はいきなり北塔に入れなくなりました。
係りに聞いてもただ「調整中です」としか答えはかえってこず。
そしてほぼ同じころ、アズマの姿が再び塔から消えました。
高い山の稜線に沿ってつくられた長城では、相も変わらず心地よい冷たい風が吹き上げてきます。
その風にアズマが奏でる静かな音が乗り、空に広がっていくように消えていきました。
今は兵士たちが指示を受けるためにここを訪れる事もなく。
冷たい風に柔らかな金髪を揺らせながら手すりにもたれて振り返り、
いたずらっぽい表情で笑いかける金色の目の妻の姿もなく。
その妻を抱きよせて熱い口づけを交わした、そんな日々は遠くに過ぎ去って。
そうして彼は日々を静かに暮らしていました。
(やもめというより隠居暮らしって感じだぞ?)
ある日、美雨(ちゅらみ)はいきなり北塔に入れなくなりました。
係りに聞いてもただ「調整中です」としか答えはかえってこず。
そしてほぼ同じころ、アズマの姿が再び塔から消えました。
アズマに「必要ない」と言われても構わずに毎日アズマの生活の世話をしに通っていた美雨は、何が起きたのか気になって捜しまわりました。
心話でよびかけてみると、アズマからの返事はある。でも、姿はみえない。
美雨が食事をつくっておいておくと、ちゃんと食べたようで食器は洗って片づけてありました。
でも、姿はない。
「お父さま!気になるから顔をみせてください」
と美雨がよびかけると、ふっとビジョンで姿をみせて
「いま取りかかっていることがあるから、心配しなくてもいい」
とだけ伝えてきました。
一体何がおこってるんだろう…。
美雨は落ち着かない気持ちを一人胸の内に抱えながら毎日食事を準備してもっていき、西塔の掃除や風通しをしてアズマの帰りを待ちました。
「もう…」
美雨はある日つぶやきました。
「不安におしつぶされるのは十分。私も成長しなきゃ。お父さまを信じるのよ。」
そんなある日、美雨は西塔に灯りがついている事に気がつきました。
「お父さま、戻ってらっしゃるのかしら。」
いそいそと西塔へ通じるドアをあけて入っていくと、アズマはリビングにいました。
いつもの一人掛けのソファで疲れたように寝ています。
声をかけようにも、あまりに疲れたような様子。
美雨は毛布をそっとかけると、温めたらすぐ食べられるように準備した料理をおいて帰りました。
その翌日。
美雨は、また同じようにリビングで居眠りしているアズマをみつけて呆れました。
これだったらベッドで横になったほうが、と声をかけようとして
アズマの腕の中にすやすやと眠る赤ん坊がいることに気がつきました。
そっとその子にふれてさらにびっくり。
「お母さま?!」
アズマが目をさまし、美雨に「しーっ」と合図。
「いまやっと寝てくれたとこだ。」
そっとベビーベッドに赤ちゃんを寝かせたアズマは、美雨がもってきた料理のにおいに気がついて
「やあ美味しそうだな。いただくよ。」
と、にっこりと笑いました。
その笑顔にも、疲れが出ています。
美雨は気にしながらも手早くテーブルの上に食事を準備しました。
「お父さま。どういうことですの?」
美雨は待ち切れずに食事中のアズマに話しかけました。
「ああ、エフェクトだ。やっと転生させることができた。」
アズマは嬉しそうに微笑みました。
「つまり…天子たちと同じように、エネルギーから生み出したんですの?」
アズマはうなずきました。
「木に転生してしまうと長いからな。そのあたりの分解から始めて、エネルギーの高まりを待って。…まぁちょっと無理はかけたが、ちゃんと龍の卵から生まれてくれたよ。」
美雨は納得しました。
お父さまったら、ご自身のエネルギーを相当つぎ込んでお母さまを転生させたんだわ。
だからこんなにエネルギーを消耗した様子なのね。。。
エフェクトの遺体は北塔から消えていました。
もちろんアズマが転生のためのエネルギーの一部として使っちゃったわけなのです。
「肉体もエネルギーのひとつだから・・・。」
と、美雨はつぶやきました。
そしてもうひとつ。
エフェクトファンのみなさんの「願いのエネルギー」もアズマは利用していました。
「エフェクトの死を知って復活してほしいと願った方々に、お礼を。ありがとう。」
アズマからそうpyoに伝言がありました。
ありがとうございます。m(__)m
美雨は、そっと寝ている赤ん坊を抱き上げました。
ひっひっと小さく泣き始めた子を優しくゆすると、また夢の中へ戻っていきます。
「お帰りなさい。」
美雨は目に熱いものがこみ上げてくるのを感じながら赤ん坊に話しかけました。
「お母さま、なんて呼びかけるなよ。」
アズマが笑いました。珍しく饒舌になっています。
「転生した以上、一応別の人生だ。それに…」
食べ終わったアズマは立ちあがって棚からワインとグラスを2つ、出してきました。
「赤ん坊が混乱する。」
美雨はそう言われて、ふふっと笑いました。
「そうですわね。でもついそう呼びかけそうですわ。」
美雨はアズマからワイングラスを受け取り、
二人は静かに乾杯してエフェクトの誕生を祝ったのでした。
つづく。
心話でよびかけてみると、アズマからの返事はある。でも、姿はみえない。
美雨が食事をつくっておいておくと、ちゃんと食べたようで食器は洗って片づけてありました。
でも、姿はない。
「お父さま!気になるから顔をみせてください」
と美雨がよびかけると、ふっとビジョンで姿をみせて
「いま取りかかっていることがあるから、心配しなくてもいい」
とだけ伝えてきました。
一体何がおこってるんだろう…。
美雨は落ち着かない気持ちを一人胸の内に抱えながら毎日食事を準備してもっていき、西塔の掃除や風通しをしてアズマの帰りを待ちました。
「もう…」
美雨はある日つぶやきました。
「不安におしつぶされるのは十分。私も成長しなきゃ。お父さまを信じるのよ。」
そんなある日、美雨は西塔に灯りがついている事に気がつきました。
「お父さま、戻ってらっしゃるのかしら。」
いそいそと西塔へ通じるドアをあけて入っていくと、アズマはリビングにいました。
いつもの一人掛けのソファで疲れたように寝ています。
声をかけようにも、あまりに疲れたような様子。
美雨は毛布をそっとかけると、温めたらすぐ食べられるように準備した料理をおいて帰りました。
その翌日。
美雨は、また同じようにリビングで居眠りしているアズマをみつけて呆れました。
これだったらベッドで横になったほうが、と声をかけようとして
アズマの腕の中にすやすやと眠る赤ん坊がいることに気がつきました。
そっとその子にふれてさらにびっくり。
「お母さま?!」
アズマが目をさまし、美雨に「しーっ」と合図。
「いまやっと寝てくれたとこだ。」
そっとベビーベッドに赤ちゃんを寝かせたアズマは、美雨がもってきた料理のにおいに気がついて
「やあ美味しそうだな。いただくよ。」
と、にっこりと笑いました。
その笑顔にも、疲れが出ています。
美雨は気にしながらも手早くテーブルの上に食事を準備しました。
「お父さま。どういうことですの?」
美雨は待ち切れずに食事中のアズマに話しかけました。
「ああ、エフェクトだ。やっと転生させることができた。」
アズマは嬉しそうに微笑みました。
「つまり…天子たちと同じように、エネルギーから生み出したんですの?」
アズマはうなずきました。
「木に転生してしまうと長いからな。そのあたりの分解から始めて、エネルギーの高まりを待って。…まぁちょっと無理はかけたが、ちゃんと龍の卵から生まれてくれたよ。」
美雨は納得しました。
お父さまったら、ご自身のエネルギーを相当つぎ込んでお母さまを転生させたんだわ。
だからこんなにエネルギーを消耗した様子なのね。。。
エフェクトの遺体は北塔から消えていました。
もちろんアズマが転生のためのエネルギーの一部として使っちゃったわけなのです。
「肉体もエネルギーのひとつだから・・・。」
と、美雨はつぶやきました。
そしてもうひとつ。
エフェクトファンのみなさんの「願いのエネルギー」もアズマは利用していました。
「エフェクトの死を知って復活してほしいと願った方々に、お礼を。ありがとう。」
アズマからそうpyoに伝言がありました。
ありがとうございます。m(__)m
美雨は、そっと寝ている赤ん坊を抱き上げました。
ひっひっと小さく泣き始めた子を優しくゆすると、また夢の中へ戻っていきます。
「お帰りなさい。」
美雨は目に熱いものがこみ上げてくるのを感じながら赤ん坊に話しかけました。
「お母さま、なんて呼びかけるなよ。」
アズマが笑いました。珍しく饒舌になっています。
「転生した以上、一応別の人生だ。それに…」
食べ終わったアズマは立ちあがって棚からワインとグラスを2つ、出してきました。
「赤ん坊が混乱する。」
美雨はそう言われて、ふふっと笑いました。
「そうですわね。でもついそう呼びかけそうですわ。」
美雨はアズマからワイングラスを受け取り、
二人は静かに乾杯してエフェクトの誕生を祝ったのでした。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(7)
│龍物語
この記事へのコメント
エフェクトおかえりー!・°・ヾ(≧▽≦)ノ・°・
アズマの「ファンの皆さんへのコメント」がまた嬉しい〜♪(*^▽^*)。・*:☆
復活を願ってメソメソした甲斐があったかしら(笑)
アズマの「ファンの皆さんへのコメント」がまた嬉しい〜♪(*^▽^*)。・*:☆
復活を願ってメソメソした甲斐があったかしら(笑)
Posted by ちょこ at 2009年10月27日 09:13
良かった…
アズマの深い愛情に、感動しました。
アズマの深い愛情に、感動しました。
Posted by あーちゃん at 2009年10月27日 11:11
エフェクト
Happy Birthday!\(^o^)/
Happy Birthday!\(^o^)/
Posted by ジゼル at 2009年10月27日 15:00
エフェクト
Happy Birthday!\(^o^)/
Happy Birthday!\(^o^)/
Posted by ジゼル at 2009年10月27日 15:01
お帰りーーー♪エフェクトさん♪
Posted by 紫ふぁんとむ at 2009年10月27日 16:36
良かった(┬_┬)
エフェクトさんがいなくなっちゃったなんて絶対ウソだ!って思ってました。(疑ってたんじゃないです)
信じたくなくて(^^;
絶対アズマさんがなんとかしてくれるって。
他力本願ですけど信じてました。*
Babyエフェクトさん、どんなふうに成長するのかな〜o(^-^)o
エフェクトさんがいなくなっちゃったなんて絶対ウソだ!って思ってました。(疑ってたんじゃないです)
信じたくなくて(^^;
絶対アズマさんがなんとかしてくれるって。
他力本願ですけど信じてました。*
Babyエフェクトさん、どんなふうに成長するのかな〜o(^-^)o
Posted by あみ at 2009年10月27日 22:11
●ちょこさん
何度も嘆いてくださってありがとうございます~。
●あーちゃんさん
ありがとうございます。
エフェクトが復活するまでの間、わたしゃ何度かアズマに「執着じゃないの?」って問いかけましたよ~。
でもやってくれました。^^v
●ジゼルさん
二重の喜び(笑)ありがとうございます!
●紫ふぁんとむさん
はいー、生まれてくれました♪
●あみさん
信じてくれてありがとうございます。
実はこれから、この話のメインテーマに入っていきます。
おかげでたっぷり2ヶ月間、ずどんと落ち込みました~。(T-T)
何度も嘆いてくださってありがとうございます~。
●あーちゃんさん
ありがとうございます。
エフェクトが復活するまでの間、わたしゃ何度かアズマに「執着じゃないの?」って問いかけましたよ~。
でもやってくれました。^^v
●ジゼルさん
二重の喜び(笑)ありがとうございます!
●紫ふぁんとむさん
はいー、生まれてくれました♪
●あみさん
信じてくれてありがとうございます。
実はこれから、この話のメインテーマに入っていきます。
おかげでたっぷり2ヶ月間、ずどんと落ち込みました~。(T-T)
Posted by pyo at 2009年10月28日 01:24
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。