2009年11月09日
転生19-白昼夢[伽羅孤3]
エフェクトは、久しぶりに森を散歩していました。
「一人で歩いてみたいの。」
アズマにそう告げ、彼のエネルギーが常に彼女をそっと守っているのを感じながらも自由に森の散策を楽しみます。
「やあ、エフェクト。久しぶりだね。」
森の小道から現れた路(みち)に話しかけられて、エフェクトはにっこりと笑顔を返しました。
「一人で歩いてみたいの。」
アズマにそう告げ、彼のエネルギーが常に彼女をそっと守っているのを感じながらも自由に森の散策を楽しみます。
「やあ、エフェクト。久しぶりだね。」
森の小道から現れた路(みち)に話しかけられて、エフェクトはにっこりと笑顔を返しました。
路は、エフェクトのエネルギーの変化に驚きました。
まるで森の中に吸い込まれて消えていきそうだ…。
妖精のようなふわふわとしたエフェクトをみて、路は自然に彼女をエスコートしはじめました。
「青夢(セーム)のところへ行くのかい?」
「ええそうね…今日は久しぶりに外に出たから、ぶらぶらと歩いていただけなの。」
小首を傾げて
「どうしようかな…青夢のところまで行こうかしら。」
とつぶやいたエフェクトの仕草がすごく可愛く感じられます。
路は一瞬胸が高まるのを感じました。
兄と弟が彼にまことしやかにアドバイスしていたことを思い出します。
そしてすぐに首を横に振って雑念を払い払うと、
近くの木の枝に小鳥が止まっているのを見つけていいました。
「見てごらん。そこに可愛い小鳥がいる。」
路にそう示された方角を見上げたエフェクトは、
いきなり真っ青になって「きゃぁ!」と叫びました。
高い木々に絡まっているツタが、一瞬、鞭のように落ちてきて彼女を襲うような気がしたのです。
しゃがみ込んで震えだしたエフェクトに、路は驚きました。
「ど、どうしたの?気分でも…?」
「エフェクト!」
すぐ横にアズマが現れると、エフェクトを抱きかかえて立たせました。
「どうした。」
「ツタが…ツタが、赤ちゃんをさらったの。赤ちゃん…食べられる!」
震えながら泣いて叫ぶエフェクトを安心させるように、アズマは静かな声で話し始めました。
「大丈夫だ。食べられなかった。赤ん坊は守られたよ。」
「ほんと?」
「ああ。お前が守った。思い出してごらん、あの子はちゃんと育った。」
エフェクトは幼い為信(ためのぶ)が救出された事を思い出す前に、自分自身が襲われた感覚を思い出してしまいました。
背中に鋭い痛み。
そのまま、声にならない叫びをあげるとエフェクトは気を失ってしまいました。
アズマはエフェクトを支え、抱き上げると、路に「すまなかった。驚かせてしまったな。」と話しました。
「ど、どういう事なんですか?今のは。」
茫然とした路がやっと声を出すと、アズマはエフェクトを連れて一瞬すっと消え、そしてすぐにエフェクトを伴わずに現れました。
「エフェクトの過去生だ。時々ああやって思い出しているんだ。」
「過去生って…この伽羅弧(きゃらこ)で襲われるようなところがあるのですか?!」
アズマは、路がまだエリア4を知らないことに気がつきました。
「エリア4だ。いま、大神官が浄化作業をやっているがいまだに危険地帯とされている。そこにエフェクトは入っていったことがあるんだ。」
「赤ん坊を連れて…?」
路は混乱していました。
アズマはふっと微笑むと、路の肩をぽんと叩き、すーっと空気の中に溶けるように消えていきました。
エフェクトは、私室のベッドの上で目を覚ましました。
「怖い…。」
まだ細かく震えるエフェクトの髪を、アズマはそっと撫でていました。
「ひとつひとつの出来事が全てつながった時、その恐れは全て無くなる。いまは単発で部分的に思い出しているから怖いと感じるだけなんだよ。」
「赤ちゃん…本当に大丈夫だったの?」
「ああ、見せてあげよう。」
アズマは、彼が現場にたどりついた時のビジョンをみせました。
妖怪の手に奪われたものの、龍の玉に守られて手が出せなかった妖怪たちはあっさりと赤ん坊の為信をアズマに引き渡していました。
「よかった…。」
エフェクトはほっとした表情でつぶやきました。
アズマはその続きをそのまま見せました。
妖怪たちはその代わりとエフェクトを食べようとし、エフェクトに枝を突き刺したこと。
そのショックでエフェクトから電撃がコントロールがないまま放たれてしまい、エリア4があわや壊滅するかというほどの騒ぎを引き起こしていたこと。
エフェクトは目をまるくしました。
「お前は本当はとても強い女性なんだよ。」
アズマは微笑んでエフェクトに軽くキスをしました。
「エリア4の電撃事件は、伽羅弧の歴史的出来事だぜぇ。一部で伝説になってる。」
径(けい)が笑いながら路に言いました。
「いや、それを言うとやはりエリア3の事件じゃないか?影響が大きかったのは。」
廻(かい)が頷きます。
「そうだな。あれは下手すると伽羅弧を壊滅させてたかもしれないと、確か当時の軍部がシミュレーションレポートを出したんだ。それを受けてエリア3の警備や防御システムが大幅に改編された。」
径の説明に路は驚きました。
「伽羅弧壊滅って…まさかエフェクトが?」
「ああそうだ。たしか公文書館にそれ残されているはずだよ。
それ以来、亡き義母上はエリア3に行くと監視がついたんだ。要注意人物扱いでな。」
径は当時のエフェクトのふくれっ面を思い出して笑い出しました。
「そうそう。叔父上ときたら、それが不便ならばと専用の通路を作らせてしまったほどだったのに、決して要注意者リストからはずさせようとはしなかったんだよな。」
廻も一緒に笑います。
路は、いまの妖精のような消え入りそうなエフェクトを思い浮かべながら
「本当は一体どういう女性なんだ?」
と、頭を抱えたのでした。
つづく。
まるで森の中に吸い込まれて消えていきそうだ…。
妖精のようなふわふわとしたエフェクトをみて、路は自然に彼女をエスコートしはじめました。
「青夢(セーム)のところへ行くのかい?」
「ええそうね…今日は久しぶりに外に出たから、ぶらぶらと歩いていただけなの。」
小首を傾げて
「どうしようかな…青夢のところまで行こうかしら。」
とつぶやいたエフェクトの仕草がすごく可愛く感じられます。
路は一瞬胸が高まるのを感じました。
兄と弟が彼にまことしやかにアドバイスしていたことを思い出します。
そしてすぐに首を横に振って雑念を払い払うと、
近くの木の枝に小鳥が止まっているのを見つけていいました。
「見てごらん。そこに可愛い小鳥がいる。」
路にそう示された方角を見上げたエフェクトは、
いきなり真っ青になって「きゃぁ!」と叫びました。
高い木々に絡まっているツタが、一瞬、鞭のように落ちてきて彼女を襲うような気がしたのです。
しゃがみ込んで震えだしたエフェクトに、路は驚きました。
「ど、どうしたの?気分でも…?」
「エフェクト!」
すぐ横にアズマが現れると、エフェクトを抱きかかえて立たせました。
「どうした。」
「ツタが…ツタが、赤ちゃんをさらったの。赤ちゃん…食べられる!」
震えながら泣いて叫ぶエフェクトを安心させるように、アズマは静かな声で話し始めました。
「大丈夫だ。食べられなかった。赤ん坊は守られたよ。」
「ほんと?」
「ああ。お前が守った。思い出してごらん、あの子はちゃんと育った。」
エフェクトは幼い為信(ためのぶ)が救出された事を思い出す前に、自分自身が襲われた感覚を思い出してしまいました。
背中に鋭い痛み。
そのまま、声にならない叫びをあげるとエフェクトは気を失ってしまいました。
アズマはエフェクトを支え、抱き上げると、路に「すまなかった。驚かせてしまったな。」と話しました。
「ど、どういう事なんですか?今のは。」
茫然とした路がやっと声を出すと、アズマはエフェクトを連れて一瞬すっと消え、そしてすぐにエフェクトを伴わずに現れました。
「エフェクトの過去生だ。時々ああやって思い出しているんだ。」
「過去生って…この伽羅弧(きゃらこ)で襲われるようなところがあるのですか?!」
アズマは、路がまだエリア4を知らないことに気がつきました。
「エリア4だ。いま、大神官が浄化作業をやっているがいまだに危険地帯とされている。そこにエフェクトは入っていったことがあるんだ。」
「赤ん坊を連れて…?」
路は混乱していました。
アズマはふっと微笑むと、路の肩をぽんと叩き、すーっと空気の中に溶けるように消えていきました。
エフェクトは、私室のベッドの上で目を覚ましました。
「怖い…。」
まだ細かく震えるエフェクトの髪を、アズマはそっと撫でていました。
「ひとつひとつの出来事が全てつながった時、その恐れは全て無くなる。いまは単発で部分的に思い出しているから怖いと感じるだけなんだよ。」
「赤ちゃん…本当に大丈夫だったの?」
「ああ、見せてあげよう。」
アズマは、彼が現場にたどりついた時のビジョンをみせました。
妖怪の手に奪われたものの、龍の玉に守られて手が出せなかった妖怪たちはあっさりと赤ん坊の為信をアズマに引き渡していました。
「よかった…。」
エフェクトはほっとした表情でつぶやきました。
アズマはその続きをそのまま見せました。
妖怪たちはその代わりとエフェクトを食べようとし、エフェクトに枝を突き刺したこと。
そのショックでエフェクトから電撃がコントロールがないまま放たれてしまい、エリア4があわや壊滅するかというほどの騒ぎを引き起こしていたこと。
エフェクトは目をまるくしました。
「お前は本当はとても強い女性なんだよ。」
アズマは微笑んでエフェクトに軽くキスをしました。
「エリア4の電撃事件は、伽羅弧の歴史的出来事だぜぇ。一部で伝説になってる。」
径(けい)が笑いながら路に言いました。
「いや、それを言うとやはりエリア3の事件じゃないか?影響が大きかったのは。」
廻(かい)が頷きます。
「そうだな。あれは下手すると伽羅弧を壊滅させてたかもしれないと、確か当時の軍部がシミュレーションレポートを出したんだ。それを受けてエリア3の警備や防御システムが大幅に改編された。」
径の説明に路は驚きました。
「伽羅弧壊滅って…まさかエフェクトが?」
「ああそうだ。たしか公文書館にそれ残されているはずだよ。
それ以来、亡き義母上はエリア3に行くと監視がついたんだ。要注意人物扱いでな。」
径は当時のエフェクトのふくれっ面を思い出して笑い出しました。
「そうそう。叔父上ときたら、それが不便ならばと専用の通路を作らせてしまったほどだったのに、決して要注意者リストからはずさせようとはしなかったんだよな。」
廻も一緒に笑います。
路は、いまの妖精のような消え入りそうなエフェクトを思い浮かべながら
「本当は一体どういう女性なんだ?」
と、頭を抱えたのでした。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(2)
│龍物語
この記事へのコメント
「そうそう。叔父上ときたら、それが不便ならばと専用の通路を作らせてしまったほどだったのに、決して要注意者リストからはずさせようとはしなかったんだよな。」
ギャハハハヽ(≧▽≦)ノ彡☆
爆笑です(汗)
路の肩を叩くアズマにも笑っちゃった♪
ギャハハハヽ(≧▽≦)ノ彡☆
爆笑です(汗)
路の肩を叩くアズマにも笑っちゃった♪
Posted by ちょこ at 2009年11月09日 07:20
●ちょこさん
この話、いまのエフェクトには内緒です。(笑)
この話、いまのエフェクトには内緒です。(笑)
Posted by pyo at 2009年11月09日 12:09
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。