2009年11月11日
転生21-願い[伽羅孤3]
路(みち)は滝のエリアから走り去ったエフェクトを心配して後をおいかけました。
しかしすぐにアズマのエネルギーが濃くなったのを感じて立ち止り、エフェクトが森に消えていくのを茫然と見送ったのです。
「叔父上!あんまりです!」
路は空に向かって叫びました。
しかしすぐにアズマのエネルギーが濃くなったのを感じて立ち止り、エフェクトが森に消えていくのを茫然と見送ったのです。
「叔父上!あんまりです!」
路は空に向かって叫びました。
「なぜ彼女をあのままにしているのです!」
路の目の前に、アズマがすっと姿をあらわしました。
「あんな…あんなに苦しそうにしているのに!
どうにかならないんですか?なるんでしょう?…叔父上なら。」
路は感情が高まって涙が浮かんでくるのを感じました。
「…なぜ、過去生にとらわれなければいけないんですか。いま!いま幸せに生きていけたら、それでいいんじゃないですか?!」
悔し涙が路の頬を伝って流れます。
だけど、僕は非力だ。どうしていいのかすらわからない。
路はつぶやくように言いました。
「僕は…僕は、彼女に笑っていてほしい。」
「…ありがとう。」
いきなり、無表情だったアズマの一言に、路は驚いて顔をあげました。
「願いのエネルギーだ。確かに受け取った。
ああ。俺は、答えを知っている。
なぜなのかもどうすればいいのかもな。だが…」
アズマはゆらゆらと薄くなり、言葉を残して消えました。
「それぞれの成長を見守るのもひとつの方法なんだよ…」
ザー・・・・・
一人になった途端、背後から聞こえる美しい虹の滝の音が急に大きくなったように路は感じました。
「…どうして?私、私の役割は終わったんでしょ?だから死んだのよね。だったらなぜ、なぜ今更ここで苦しまなきゃいけないの?」
エフェクトは塔のリビングの床にぺたんと座りこみ、涙のあとの残る顔をソファにおしつけながらつぶやくようにいいました。
「…お願いアズマ。私を自由にして。もう、縛らないで。」
アズマのエネルギーがゆらゆらと彼女の周囲で揺れています。
お茶を入れていた美雨(ちゅらみ)がリビングに入ってきました。
「エフェクト。そんなことないわ。役割が終わったなんて…」
「あなたのお母さんはただの代役だったのよ!」
エフェクトは美雨に向かって叫びました。
「その役割はもう終わったの!
だから死んだのよ!お役御免になったから!」
その強い口調に、美雨は言葉を失いました。
震えながら、宙に揺れる空気のようなアズマを感じ、やっとの思いで声を出します。
「お父さま…どういうこと…?」
アズマが現れて、うなずきました。
「それは思い出したのか、エフェクト。」
エフェクトは挑むような目でアズマをにらみました。
「ええ。思い出したわ。」
そして思いだしつなぎ合わせた己の前世に吐き気を覚えました。
美雨が淹れたお茶と手作りのお菓子の匂いが辛く感じます。
目をそむけ、首を横にふりました。
「もう、何もかも嫌。木でいたほうがよかった。…生まれ直す価値なんてなかったのよ…そのまま使い捨ててくれればよかったのよ…」
語るほどに、エフェクトの金色の髪が伸びていきます。
アズマは、美雨に目で合図しました。
美雨は涙をおさえて震える唇をかみしめ、リビングから出ていきました。
落ち着かずにキッチンをうろうろと歩きまわっていた美雨は、たまらずに自宅につながるドアをあけました。
「…径(けい)…」
ちょうどそこに立っていた夫の姿を認め、美雨はたまらずに泣きだしました。
「どうした?」
径は驚いて駆けより、ただ黙って泣く妻を静かに優しく抱きしめたのでした。
「私、北牢にいくわ。あそこで暮らす。…自殺なんてしないわ。死んでも意味はないものね?」
皮肉っぽい口調でアズマに告げたエフェクトに、アズマはこたえました。
「いや。俺が出ていく。ここはもともとお前が一人で住んでいた家だ。」
「そうね。」
エフェクトはアズマから顔をそむけていいました。
「あなたはもう、住む家を必要としない。そうでしょ?
…食事も、睡眠も、着るものだって。そんなの何も要らない。ただ私に合わせていただけなのよね?」
「ああ。」
アズマはうなずくと、エフェクトに近づいてそっと手を伸ばしました。
「エフェクト…」
「触らないで!」
エフェクトは咄嗟にアズマの手を払い除けました。
「出ていくなら、出て行って!もう私に構わないで!」
自己嫌悪の黒々とした波が、エフェクトを取り囲みます。
触らないで…あなたまで汚れないで…
エフェクトの心は震えながらそう告げていました。
つづく。
路の目の前に、アズマがすっと姿をあらわしました。
「あんな…あんなに苦しそうにしているのに!
どうにかならないんですか?なるんでしょう?…叔父上なら。」
路は感情が高まって涙が浮かんでくるのを感じました。
「…なぜ、過去生にとらわれなければいけないんですか。いま!いま幸せに生きていけたら、それでいいんじゃないですか?!」
悔し涙が路の頬を伝って流れます。
だけど、僕は非力だ。どうしていいのかすらわからない。
路はつぶやくように言いました。
「僕は…僕は、彼女に笑っていてほしい。」
「…ありがとう。」
いきなり、無表情だったアズマの一言に、路は驚いて顔をあげました。
「願いのエネルギーだ。確かに受け取った。
ああ。俺は、答えを知っている。
なぜなのかもどうすればいいのかもな。だが…」
アズマはゆらゆらと薄くなり、言葉を残して消えました。
「それぞれの成長を見守るのもひとつの方法なんだよ…」
ザー・・・・・
一人になった途端、背後から聞こえる美しい虹の滝の音が急に大きくなったように路は感じました。
「…どうして?私、私の役割は終わったんでしょ?だから死んだのよね。だったらなぜ、なぜ今更ここで苦しまなきゃいけないの?」
エフェクトは塔のリビングの床にぺたんと座りこみ、涙のあとの残る顔をソファにおしつけながらつぶやくようにいいました。
「…お願いアズマ。私を自由にして。もう、縛らないで。」
アズマのエネルギーがゆらゆらと彼女の周囲で揺れています。
お茶を入れていた美雨(ちゅらみ)がリビングに入ってきました。
「エフェクト。そんなことないわ。役割が終わったなんて…」
「あなたのお母さんはただの代役だったのよ!」
エフェクトは美雨に向かって叫びました。
「その役割はもう終わったの!
だから死んだのよ!お役御免になったから!」
その強い口調に、美雨は言葉を失いました。
震えながら、宙に揺れる空気のようなアズマを感じ、やっとの思いで声を出します。
「お父さま…どういうこと…?」
アズマが現れて、うなずきました。
「それは思い出したのか、エフェクト。」
エフェクトは挑むような目でアズマをにらみました。
「ええ。思い出したわ。」
そして思いだしつなぎ合わせた己の前世に吐き気を覚えました。
美雨が淹れたお茶と手作りのお菓子の匂いが辛く感じます。
目をそむけ、首を横にふりました。
「もう、何もかも嫌。木でいたほうがよかった。…生まれ直す価値なんてなかったのよ…そのまま使い捨ててくれればよかったのよ…」
語るほどに、エフェクトの金色の髪が伸びていきます。
アズマは、美雨に目で合図しました。
美雨は涙をおさえて震える唇をかみしめ、リビングから出ていきました。
落ち着かずにキッチンをうろうろと歩きまわっていた美雨は、たまらずに自宅につながるドアをあけました。
「…径(けい)…」
ちょうどそこに立っていた夫の姿を認め、美雨はたまらずに泣きだしました。
「どうした?」
径は驚いて駆けより、ただ黙って泣く妻を静かに優しく抱きしめたのでした。
「私、北牢にいくわ。あそこで暮らす。…自殺なんてしないわ。死んでも意味はないものね?」
皮肉っぽい口調でアズマに告げたエフェクトに、アズマはこたえました。
「いや。俺が出ていく。ここはもともとお前が一人で住んでいた家だ。」
「そうね。」
エフェクトはアズマから顔をそむけていいました。
「あなたはもう、住む家を必要としない。そうでしょ?
…食事も、睡眠も、着るものだって。そんなの何も要らない。ただ私に合わせていただけなのよね?」
「ああ。」
アズマはうなずくと、エフェクトに近づいてそっと手を伸ばしました。
「エフェクト…」
「触らないで!」
エフェクトは咄嗟にアズマの手を払い除けました。
「出ていくなら、出て行って!もう私に構わないで!」
自己嫌悪の黒々とした波が、エフェクトを取り囲みます。
触らないで…あなたまで汚れないで…
エフェクトの心は震えながらそう告げていました。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(2)
│龍物語
この記事へのコメント
ちょうど昨晩、今のエフェクトと同じようなことを言って喧嘩した私です…。
なぜ前の記事で共感したかっていうと、pyoさんのコメントに
>自己評価が低くて…愛されてる自信ももてなくて。
>エフェクトは自分を大切にすることをなおざりにしてたんです。
とあったように、私もいまだにそうなってしまうときがあるので。
それがちょうど久しぶりに爆発したのがおととい・昨晩でした。
表面的にそうとは分からずとも、奥底で今もある感情。
エフェクトの物語を読みながら、私も頑張ってどうにかしてみようーー(つД`)
なぜ前の記事で共感したかっていうと、pyoさんのコメントに
>自己評価が低くて…愛されてる自信ももてなくて。
>エフェクトは自分を大切にすることをなおざりにしてたんです。
とあったように、私もいまだにそうなってしまうときがあるので。
それがちょうど久しぶりに爆発したのがおととい・昨晩でした。
表面的にそうとは分からずとも、奥底で今もある感情。
エフェクトの物語を読みながら、私も頑張ってどうにかしてみようーー(つД`)
Posted by ゆうあ at 2009年11月11日 15:46
●ゆうあさん
あらら 同じことを…(>_<)辛いですね…
インナーチャイルド癒してあげてくださいね~。
私の場合は過去生の深いネガを片っぱしから癒しておりました。
実は「書く」作業もそのひとつだったりします。
あらら 同じことを…(>_<)辛いですね…
インナーチャイルド癒してあげてくださいね~。
私の場合は過去生の深いネガを片っぱしから癒しておりました。
実は「書く」作業もそのひとつだったりします。
Posted by pyo at 2009年11月11日 19:06
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。