pyo's room

「転生は…。」
エフェクトはクリスタル城を訪れ、紫乃とティータイムを過ごしていました。

「死んで無になってゼロからスタートすることではなかった。
　続いていたわ。
　代理として生まれた私も、木になった私も、ここにこうしている私も。」


「魂はずっと同じ存在で、ただ、エネルギーの形を変えていただけ。
　途切れることなく続いていて、学びも続いていて。
　だから記憶をつないで思いだしていく作業をしていたのね。」

紫乃は、優しい微笑みで頷きます。
エフェクトはちょっと目をあげて、遠くをみるような目つきをしました。

「私はずっと自分自身を低く評価していたわ。
　何のために生まれたんだろうって、こだわりすぎて。
　そうやって外に役割を求めて、外に価値をおいてしまってたから、己の価値を見いだせずにいた…。」

　でも…

エフェクトは、美しく輝く金色の瞳を紫乃に向けて続けました。

「私の中にある愛。
　それこそが、私自身の持つ一番の価値あるものだったのね。
　アズマを愛することも、こどもたちを愛することも、
　それと同じくらい、私が私を愛することも価値あることだったんだわ。」

紫乃は微笑んでうなずきました。

「私も封印されてしまった時は、辛かったわ。
　何もできず、誰の役に立つこともできず。
　なのに何もかもを感知できた。
　ただ、宝物庫の中から崩壊していく世界をみているしかなかった…。

　でもそれが、崩壊こそが、新たな世界を作るために必要なものだったの。
　全ては移り変わる。エネルギーは形を変えて循環する。
　でも…」

紫乃はにっこりと笑って立ち上がり、産まれたばかりの七人目の赤ちゃんを見せに来た紅をハグしました。

「こうして新たな世界にまた子どもたちが産まれ、続いていく。
　命が続いて行くのは素晴らしいわ。
　こどもたちひとりひとりにもまた魂の学びがあるとしても、愛をもって見守りサポートするだけ。

　愛が存在すること。
　それだけは宇宙がどう変わるとしても、変わらないわ。」




「おまたせしましたー！美雨さまから、おいしいおつまみの差し入れです！」

一匹の白龍がまるで落ちてくるかのように迫ってきて、地面すれすれでぴたっと止まると宴会中の三人の前にご馳走を置きました。

径と廻は、失恋確定の路を肴に…もとい慰めようと滝の岩陰で宴会を始めたところでした。

「おお、いいぜいいぜ。いただこうか。」
「あれ？盃も追加…？」
径と路と廻の三兄弟は、にこにこと笑顔で座っている遥珂を見ます。

「お前！そういやエリアにかかわらず酒宴にかならず顔だす神官がいると聞いたぞ！」
「デルタや為信のところでも、こうやって飲んでるんだろ！」

酒宴あるところ、遥珂あり。いまは巷で定説になっています。



Anael - Be Still thy Soul

「Be Still Thy Soul（魂のままで）」訳詩はこちら



転生シリーズ、これで完了です。
応援ありがとうございました。
伽羅弧３はもうちょっと続きます～。

転生シリーズの写真は、海洋博記念公園の美ら海水族館と熱帯ドリームセンターで写したものを使いました。＾＾