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2011年07月30日

大地の花33 三体の龍

第33話 「三体の龍」


「頭…迷惑を…をかけた…」
ランユウの言葉に、頭は首を横に振った。
「ランユウ様のせいじゃありませんや。俺が判断を誤ったんです…。」

だがその言葉へのランユウの反応は、もうなかった。


ランユウの目を閉じ、手を合わせて全員で冥福を祈る。

「ちくしょう…」
悔しさが口に出た。
「ちくしょう…こんな良い人を…この世にゃ神も仏も無いのかよ?!」



「お、お頭!あれを…」

誰かが指差し小さな声で叫んだ。
目をあげると、ランユウの遺体はオレンジ色の光に覆われてボンヤリと光っている。

ある者にはそれは龍神に見え、ランユウの遺体に覆いかぶさるように見えた。

またある者にはそれは美しい女性の姿に見えた。
女は天女のようでもあり、生き霊のようでもあり。

見るものにとってそのイメージは違っていたが、女に見えた者に共通してたのは
その美しい女がランユウに口づけをしていた、という事だった。

そしてさらに別のものはその上空に飛ぶ白い龍神の姿を見ていた。



ランユウの身体がピクリと動き、ふぅ、と息をふきかえした。

「戻った!」
「ランユウさま!」
「すげえや、やっぱりこの方には龍神のご加護があるんだ。」

海賊たちは感激してランユウに手を合わせた。


その時。
ぎぃ、と音を立てて扉が開き、射し込んで来た日の光に全員が目を瞬かせた。

「ランユウがおるのか?!」
入ってきたのは、ヒユウ王だった。





いっ時ほど前。
晴れ渡った空に一転雲が集まったかと思うと、高台にある王城は雷雲に覆われて土砂降りに見舞われた。

だが海を見ると青く晴れ渡った空のまま。
この島ではこんなとんでもない予測の難しい天候がよくある。

雷雲は近づいた時と同じように唐突に去っていったが、王城にある木の一本に雷を落として行った。
おかげで城内は大騒ぎだ。


落雷の被害を確かめようと中庭に出たヒユウ王は、そこで空に浮かぶ三体の龍神を見た。

一体は青緑色。
まるでこの南の海を写し取ったかのような色合いの龍が上下に動いている。
どこかの場所を示しているようだ。


もう一体はオレンジ色。
嵐が近づく時の夕空を写し取ったかのような美しい龍神は、青龍に呼ばれてどこかへ飛んでいくようだった。

そしてそのオレンジ色の龍神を追いかけるかのように、光そのもののような白銀の龍が飛んでいく。


王は直ぐさまあそこに何があるのか問いかけ、
同時に自ら馬を駆って龍神が集まる場に急いだ。

その途中で港に停泊している海賊船に気付き、海賊たちが熱病患者を連れ込んだと報告を受けた。


そこでその患者の名を聞いたのはヒユウ王にしては珍しい行動だったのかもしれない。

しかしそのお陰で、数ヶ月間連絡が途絶えて心配していた王弟の名を確認する事ができ
助けだすことが出来たのだった。


つづく。



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Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(2)大地の花
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大地の花34 形見【pyo's room】at 2011年07月31日 07:00
この記事へのコメント
口づけをしていたのは、メイファかな!
青緑色の龍はランユウ
オレンジ色の龍はメイファ
白銀の龍は??
ちがうかな~~~
Posted by minto at 2011年07月30日 20:38
●mintoさん
んふふ (^☓^) この先お楽しみに。
Posted by pyopyo at 2011年08月01日 01:34
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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