2011年08月11日
大地の花45 回復期
第45話 「回復期」
病を癒す決意をし回復し始めたランユウは強い意志でリハビリを開始した。
身体が弱りきっていて、自力で起き上がる筋力もなかったが、
それでも少しずつ、少しずつ 這うように日々努力を重ねていった。
そんなランユウをメイファとファーレンは日々支え続け、その二人を竜族の者たちが支えた。
何日も努力した結果、ランユウはやっと自力で起き上がり、布団の上に座れるようになった。
それだけでも息があがったが、ファーレンに抱きあげられなくても食事が出来るようになったランユウを見るのは嬉しい。
そして何とか四つん這いが出来るようになったが、そうすると腕の筋肉がぎしぎしと痛む。
メイファはそんなランユウの身体を毎日せっせとマッサージした。
やっと柱につかまって何とか立ち上がった時にはメイファは拍手をして喜んだが、次の一歩まで進むにはまだまだ時間が必要だった。
それでも毎日、毎日、努力をする。
文字通り「這って」努力をするランユウの姿に、思春期のメイファは涙がこぼれそうになった。
早朝、東の丘の上で昇る朝日に手を合わせる。
「ランユウが立てますように…。」
それはやがて「一歩でも歩けますように」に変わり「外にでられますように」に変わる。
そうして季節が変わるほどの時間をかけて努力し続ける内、とうとうランユウは杖をつきながらも自力で庭先を歩きまわれるほどになった。
山菜や魚を干しながら、メイファは庭を歩くランユウを見る。
歩き方は随分上手になってきたが、たまに、スコンと転ぶこともある。
転ぶとすぐに切り傷を作ってしまうので、目が離せないと思う。
ランユウの髪はこめかみの辺りが真っ白だ。
長いこと成長がとまり少年の姿をもっていた彼が、いまは悲しみを帯びた深い瞳をもつ青年の姿に変わっている。
それほどに深い悩みと辛さを経てきたのだと彼の後ろ姿は語っていた。
ランユウの髪を結いながら
「この髪、黒く戻らないのかな」
とメイファがつぶやくと、ランユウはふっと笑い、少しは歳をとって見えるこのほうがいいと言った。
メイファがそんな事を思い出していると、庭を歩くランユウがメイファの名を呼んだ。
顔をあげると、塀の向こうをさす。
塀の向こうにはタルーがいた。
メイファは軽く溜め息をついて、塀の外に出た。
縁談は断ったつもりだったが、ランユウが「自分で口説いてみろ」と言った言葉を信じタルーは毎日こうして会いに来る。
タルーは民間療法に詳しかった。
そしてランユウの身体に良さそうな薬草をみつけては持ってくる。
実際には、メイファとの話の接点をもつためにタルーは村中に伝わる民間療法をあちこちで教わり、それをメイファやファーレンに教えてくれていた。
その為、メイファもタルーがたずねてくるのを断るわけにいかない。
だがこの日は新たな話題がなかった。
適当にタルーの話に相槌を打って適当な話の区切りで贈り物のお礼を言うとメイファは薬草を受け取って家に戻った。
戻ると、庭にランユウの姿がない。
では家の中かと中を伺うが、見当たらなかった。
薬草を台所に持って行きファーレンに声をかけたが、ファーレンもランユウの姿を見ていない。
便所じゃないかとみにいったが、裏にもいなかった。
豚小屋にも、牛小屋にも、山羊小屋にもいない。
ひと通り屋敷内を探しまわり、メイファは真っ青になった。
「ランユウ!」
探しながら外に飛び出す。
キョロキョロと見回しながら道を走り、ふと気がついた。
地面に杖を使った足あとがある。
メイファはその足あとをたどって東の海が見える丘の上に向かった。
途中から走り出す。
徐々に恐さが湧いてくる。
丘の上はただの草むらではない。
海に急激に落ち込み、下には鋭い岩が並んでいる危険な崖があるのだ。
ランユウは今でも心のどこかで死にたがっていることを、メイファは見抜いていた。
まるで死神にとりつかれたようなランユウのあの暗い瞳。
どうしたら現世に戻せるのかずっと考えて続けているのだ。
「ランユウ!」
丘の上に人影を見つけ、メイファは息を切らしながら走った。
背の高いランユウのその背が、とても小さく見える。
追いつき、振り返ろうとしたランユウにおもいっきり抱きついた。
「ランユウ!心配するじゃない!もう!死のうなんて思わないで!」
メイファは一気にまくし立てた。
「私…私がランユウのお嫁さんになるから!
ランユウの子どもを産むから!
いっぱい、いっぱい産むから!
だから…だから生きて!お願い!」
涙がこぼれた。
溜め込んだ想いが一気にふきだし、止まらなかった。
つづく。
それだけでも息があがったが、ファーレンに抱きあげられなくても食事が出来るようになったランユウを見るのは嬉しい。
そして何とか四つん這いが出来るようになったが、そうすると腕の筋肉がぎしぎしと痛む。
メイファはそんなランユウの身体を毎日せっせとマッサージした。
やっと柱につかまって何とか立ち上がった時にはメイファは拍手をして喜んだが、次の一歩まで進むにはまだまだ時間が必要だった。
それでも毎日、毎日、努力をする。
文字通り「這って」努力をするランユウの姿に、思春期のメイファは涙がこぼれそうになった。
早朝、東の丘の上で昇る朝日に手を合わせる。
「ランユウが立てますように…。」
それはやがて「一歩でも歩けますように」に変わり「外にでられますように」に変わる。
そうして季節が変わるほどの時間をかけて努力し続ける内、とうとうランユウは杖をつきながらも自力で庭先を歩きまわれるほどになった。
山菜や魚を干しながら、メイファは庭を歩くランユウを見る。
歩き方は随分上手になってきたが、たまに、スコンと転ぶこともある。
転ぶとすぐに切り傷を作ってしまうので、目が離せないと思う。
ランユウの髪はこめかみの辺りが真っ白だ。
長いこと成長がとまり少年の姿をもっていた彼が、いまは悲しみを帯びた深い瞳をもつ青年の姿に変わっている。
それほどに深い悩みと辛さを経てきたのだと彼の後ろ姿は語っていた。
ランユウの髪を結いながら
「この髪、黒く戻らないのかな」
とメイファがつぶやくと、ランユウはふっと笑い、少しは歳をとって見えるこのほうがいいと言った。
メイファがそんな事を思い出していると、庭を歩くランユウがメイファの名を呼んだ。
顔をあげると、塀の向こうをさす。
塀の向こうにはタルーがいた。
メイファは軽く溜め息をついて、塀の外に出た。
縁談は断ったつもりだったが、ランユウが「自分で口説いてみろ」と言った言葉を信じタルーは毎日こうして会いに来る。
タルーは民間療法に詳しかった。
そしてランユウの身体に良さそうな薬草をみつけては持ってくる。
実際には、メイファとの話の接点をもつためにタルーは村中に伝わる民間療法をあちこちで教わり、それをメイファやファーレンに教えてくれていた。
その為、メイファもタルーがたずねてくるのを断るわけにいかない。
だがこの日は新たな話題がなかった。
適当にタルーの話に相槌を打って適当な話の区切りで贈り物のお礼を言うとメイファは薬草を受け取って家に戻った。
戻ると、庭にランユウの姿がない。
では家の中かと中を伺うが、見当たらなかった。
薬草を台所に持って行きファーレンに声をかけたが、ファーレンもランユウの姿を見ていない。
便所じゃないかとみにいったが、裏にもいなかった。
豚小屋にも、牛小屋にも、山羊小屋にもいない。
ひと通り屋敷内を探しまわり、メイファは真っ青になった。
「ランユウ!」
探しながら外に飛び出す。
キョロキョロと見回しながら道を走り、ふと気がついた。
地面に杖を使った足あとがある。
メイファはその足あとをたどって東の海が見える丘の上に向かった。
途中から走り出す。
徐々に恐さが湧いてくる。
丘の上はただの草むらではない。
海に急激に落ち込み、下には鋭い岩が並んでいる危険な崖があるのだ。
ランユウは今でも心のどこかで死にたがっていることを、メイファは見抜いていた。
まるで死神にとりつかれたようなランユウのあの暗い瞳。
どうしたら現世に戻せるのかずっと考えて続けているのだ。
「ランユウ!」
丘の上に人影を見つけ、メイファは息を切らしながら走った。
背の高いランユウのその背が、とても小さく見える。
追いつき、振り返ろうとしたランユウにおもいっきり抱きついた。
「ランユウ!心配するじゃない!もう!死のうなんて思わないで!」
メイファは一気にまくし立てた。
「私…私がランユウのお嫁さんになるから!
ランユウの子どもを産むから!
いっぱい、いっぱい産むから!
だから…だから生きて!お願い!」
涙がこぼれた。
溜め込んだ想いが一気にふきだし、止まらなかった。
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 08:11│Comments(5)
│大地の花
この記事へのコメント
メイファの想いがランユウに届きますように!!
この先どうなるのか分からないけど、今はメイファの想いがランユウにちゃんと届いて欲しいです(><)
この先どうなるのか分からないけど、今はメイファの想いがランユウにちゃんと届いて欲しいです(><)
Posted by ゆき at 2011年08月11日 09:17
ファイトだメイファ〜
Posted by ちょこ at 2011年08月11日 13:45
どうしよう…
(°∇°;)
タルーに恋したかも
(°∇°;)
タルーに恋したかも
Posted by ゆうおう at 2011年08月11日 17:06
メイファの思いが、ランユウの生きる力になりますように。
私の咳もそろそろおさまってほしいな。
私の咳もそろそろおさまってほしいな。
Posted by お~しゃん at 2011年08月11日 21:08
●ゆきさん
うんうん、明日をお楽しみに~。
●ちょこさん
ファイト!ですよね。^^
●ゆうおうさん
ををを?!どどどどうしましょ~。
タルーも一千年前の方なんですが。^^;
でも、今もどこかにこんな努力の人、いそうですよね~。
●お~しゃんさん
およよ こんどは咳に来ましたか。
お大事に~。
うんうん、明日をお楽しみに~。
●ちょこさん
ファイト!ですよね。^^
●ゆうおうさん
ををを?!どどどどうしましょ~。
タルーも一千年前の方なんですが。^^;
でも、今もどこかにこんな努力の人、いそうですよね~。
●お~しゃんさん
およよ こんどは咳に来ましたか。
お大事に~。
Posted by pyo at 2011年08月12日 00:08
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。