pyo's room

「メイファ！ここにいるのか！」
タルーの家にいくと、メイファはちゃっかり夕飯をもらっているところだった。

一人じゃ寂しいから材料を持ち込んでいっしょに料理していっしょに食べてた…と口をもぐもぐさせているメイファを連れ出すと、ランユウは自宅の戸締りをタルーに頼んだ。

「ランユウさま、ハブに噛まれたのでしたらこれを。」

タルーが急いで乾燥し保管していた薬草を出してきた。
彼はいまや村内の薬剤師のような役割を果たしている。

ランユウがタルーと話している間に、メイファは馬が疲れているようだと馬のヒーリングを先にやった。
その間にタルーの嫁がランユウが食べられるようにとおかずを団子状にして葉にくるみ、出してくれた。


日が暮れて星が輝き出す。
予想より時間がかかってしまった。

ランユウとメイファは急いで病人と息子の待つ近隣の村へと馬を走らせた。



「お前の父親はすぐに戻ると言ったのだな？」
リーファンは按司に問われて、頭を下げた。

「はい、月が昇るまでには戻ると言ってました。でも、母を探してるのかもしれません。」
リーファンは母メイファの性格を把握していた。

夫と息子が留守となると、一人でじっと留守を守る…なんてことはしていないだろうと思う。
きっとどこかの家に遊びに行ってるはずだ、そうすると見つかるまで時間がかかるかもしれない。

「お前の母は不思議な力で病人を治すという…それはどういうものだ？」
さらに問われて、リーファンは母の癒しをどう説明したらいいのか困ってしまった。

「手をあてて…こんな風に…。」
見たままの形でしか説明できない。

リーファンは母を真似て、スサの頭やお腹に手を当ててみた。
ふぅ、とスサが心地良さそうなため息をつく。

按司がスサに聞くと、スサはリーファンに手をあててもらったら頭痛が少し楽になったと答えた。

これにはリーファン自身が驚いた。
母の能力を受け継いでいるのだろうか…？

自分ではよくわからない。
でもスサの頭に手をあてたとき、なにかが内部で動くのを感じたような気がした。


「不思議だな…。私にも手をあててみてくれないか。」
按司に言われ、よくわからないので上手くいかないかもしれませんと答えつつ、リーファンはそっと按司の背中に手をあてた。

按司の顔色が変わった。


按司が口を開こうとしたその時に馬の蹄の音と声が聞こえ、「リーファン！どこ？」という母の声が聞こえた。
按司とリーファンはスサの家の外に出て、両親を迎えた。

昇りかけた月を背にたつランユウとメイファ、その背後に一瞬だけ龍神の姿を見た気がしてリーファンは思わず口をぽかんと開けた。

「お前の父母か？」
按司に話しかけられてこっくりと肯いたあとで我に返り、「はい」とこたえて頭をさげた。

「まずは病人が先だ。腕前を見せてもらおう。」

按司が先程からどこか緊張しているのを、リーファンは感じていた。


つづく。