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2011年10月04日

大地の花62 明け方

第62話 「明け方」


「ほほほ…」
ランユウとメイファの会話を聞いて、紅花姫が声をあげて笑った。

どうやらメイファのことを気に入ったようだな、とランユウが言うと、紅花姫は微笑みながらうなずいた。

「それはいい。仲良くしてくれ。お前たちは確か同い年だ。」
ランユウの言葉で紅花姫の顔色が変わったことにリーファンは気がついた。

大地の花62 明け方

やっとランユウの部屋にたどり着いた。
担当の侍女たちは指示を受けていたらしく、部屋の準備をして待っていてくれた。

ランユウはごろりと布団の上に横になり、すぐに寝入ってしまった。
「んもう!汗臭いって言ってるのに!」

メイファは侍女たちにランユウの着替えや水をいれた桶、手ぬぐいを何枚か準備してもらうと、酔って寝ているランユウを転がしながら着物を脱がせ、顔や手足身体を水を絞った手ぬぐいで素早く拭き始めた。

その慣れた手さばきに、リーファンや侍女たちも舌をまく。
ランユウもまた、完全にリラックスして己をメイファに任せているようだ。

「ランユウが熱病にかかって動けなくなった時は、ずっとこうやって身体を拭いてあげてたわ。」
メイファは息子に説明した。

「一番ひどい時は指一本あげることもできなかったの。食事もできなくて、骨と皮だけだったのよ。」

リーファンの手も借りて身体を清めて着物を着替えさせ、頭の包帯を取り替える。
そっと手の癒しを与えて、傷を殆ど塞ぎ、包帯を巻いて治したのがはたから見えないようにした。

「さぁこれで眠れるわ。」
やっとほっとしたところで赤子がお乳をほしがって泣きだし、メイファは溜息をついた。




『…ランユウさま…』
明け方、リーファンはヒソヒソ声の呼びかけで目を覚ました。

建物の中はまだ暗いが、外では夜明け前の小鳥たちの鳴き声がにぎやかだ。

部屋を見ると、同じ部屋で寝ていた父と母はぐっすりと寝入っているよう。
昨夜は「家族で寝ましょう」とメイファが言い出し、二間を開け放して布団を並べて寝たのだった。


『…ランユウさま…』
再び廊下から声が聞こえ、リーファンは立ち上がると寝ている父をそっと起こした。

「ん…ああ…」
メイファはランユウの腕の中に潜り込んで寝ている。

目を覚ましたランユウは静かにメイファから離れると、リーファンに寝ているようにと手で示し、自分はするりと廊下に出ていった。

「…わかった。船は沖で停泊させろ。5隻もいたら港の邪魔になるのは当然だ。それから…」
ぼそぼそと話す言葉が聞こえる。


リーファンは横になって聞くともなく聞きながら、これからどうなるのだろうと考えた。

 もう、田舎の家には戻らないのか。
 それとも自分たち家族は田舎の家に暮らし、父はこの王宮で暮らすのか。

 妃…。

昨夜あった美しい紅花姫のことを思い出す。

 お父さんには別に家族があったんだ…。


そう思いながらも何か不自然さを感じた。

紅花姫と父が夫婦だ、という感じがしないのだ。
まるで他人のようによそよそしかった。

若いリーファンにはその意味はまだわからなかった。


つづく。



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Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(2)大地の花
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この記事へのコメント
家族がとりあえずまた一緒に寝られてホッ

メイファ、見た目が若いって素晴らしい〜
紅花姫さんメイファと仲良くなって、心ほぐれたらいいな♪

ところでなんて読めばいいのでしょうか、紅花姫 べにばな?違うか(笑)
Posted by ちょこ at 2011年10月04日 08:46
●ちょこさん
ふりがなつけてませんでしたね~。
頭に浮かんだのが「べにか」です。
Posted by pyopyo at 2011年10月05日 00:19
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。
 
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