2009年12月15日
封印4[伽羅弧4-魅惑の力13]
その頃、浮遊城はまだオープンして間もない施設でした。
組織的な形がきちんと整っておらず、その為に煩雑な業務がかなり積み重なって混沌とし始めていました。
大神官の任務についたばかりのアーシャスはこれらを主である姫巫女に代わって整理するところから始め、常に姫巫女に影のようによりそいサポートする形をとりながらも事実上完全に統治を代行することになり。
その業務は多岐にわたり知恵と知識を総動員しかつ多忙を極めるものでした。
組織的な形がきちんと整っておらず、その為に煩雑な業務がかなり積み重なって混沌とし始めていました。
大神官の任務についたばかりのアーシャスはこれらを主である姫巫女に代わって整理するところから始め、常に姫巫女に影のようによりそいサポートする形をとりながらも事実上完全に統治を代行することになり。
その業務は多岐にわたり知恵と知識を総動員しかつ多忙を極めるものでした。
そんな多忙な日々の中でも、アーシャスは時折白龍に乗り浮遊城の上空を飛んでいました。
時には息抜きに。
そして城の中にいては把握しずらい軍の配置や訓練ぶりを観察しに。
そしてアズマが意識して部下たちに業務を割り振っている事に気がついたのでした。
アズマは前面に出る指令の役割は老齢な将軍たちに任せ、自らは兵士たちの中に混じって遊んでいるかのように見せながら、実はひとりひとりの性格や状態を確認し兵士それぞれにあった訓練をしていたのです。
将軍のひとりはこう話していました。
「アズマさまは練習試合の際は相手の力を最大限に引き出す戦い方をなさいます。
しかしこれが本格的な戦闘になると、相手の力を最小限に抑え戦う意欲をなくさせる戦い方をされるのです。」
「俺は転生前の記憶を持ってるんだ。
何度も生まれ変わり、何度もこうやって戦いの場に身を置いてきた。」
兵士たちがいくつもの小さなたき火をそれぞれで囲み、夜のひと時をくつろいで過ごしているとき。
訪ねてきたアーシャスを迎えたアズマは、たき火の火を見つめながら昔の記憶をたどるように語りました。
「だから慣れているのさ。将軍や士官たちも殆どがかつての戦友や部下たちだしな。」
「始まりは…おそらくあれが始まりだと思うんだが。
神々の大戦争だった。
俺は父と共に戦場に行った。
そして戦場から帰ってくると、守られていたはずの自宅は味方に襲われ、母と姉が死んでいた。」
アズマは目をつぶりました。
そのむごたらしい状況の記憶はなかなか消える事がなく、何度も彼の脳裏に浮かびあがっているものでした。
「姉の遺体に触れた時に、最期のメッセージが伝わってきた。
『生きて、再びお会いしたかった』と。
それがお前宛のメッセージだと気付いた俺は戦場から帰ってきたお前にそのエネルギーごと渡したんだ。」
熾きがぱちぱちと美しい炎を奥に隠したまま小さくはぜます。
その炎に照らし出されたアズマの瞳は、少年の外観とはうらはらに長い時を戦場で生きてきた古い魂とその深い悲しみを映し出していました。
「覚えてないか?」
アーシャスはしかし、その時前世の記憶を殆ど持っていませんでした。
まるで封をされたかのように記憶を探ろうとしても何も思い出せず、しばらく考え込んだあと首を横にふりました。
「そうか。」
アズマは視線を落として静かに微笑むと、手に持っていた枝を火に投げ込みました。
「ま、そういうことだ。姫巫女もその時の想いは果たしたってわけさ。こうして生きて再びお前に会えたんだからな。」
アーシャスは姫巫女から寄せられる熱い『想い』に、気がついていました。
しかしそれを表に出すことはなく、静かに気がつかないふりをしてきたのです。
それが実は転生前の関係に由来していたという事を、このとき初めて知ったのでした。
しかし今はその想いに応えるわけにはいかない、と。
アーシャスは金星にて師に指示された重要な役目について、常に忘れる事がないよう心の奥に刻み込んでいたのでした。
つづく。
追加情報
勇者ひかりさん、何か開いたようですよ~。
謎が解ける瞬間 心軽やかに夢をみつける シンム-
さぁどう展開していくのか、楽しみです。^^
時には息抜きに。
そして城の中にいては把握しずらい軍の配置や訓練ぶりを観察しに。
そしてアズマが意識して部下たちに業務を割り振っている事に気がついたのでした。
アズマは前面に出る指令の役割は老齢な将軍たちに任せ、自らは兵士たちの中に混じって遊んでいるかのように見せながら、実はひとりひとりの性格や状態を確認し兵士それぞれにあった訓練をしていたのです。
将軍のひとりはこう話していました。
「アズマさまは練習試合の際は相手の力を最大限に引き出す戦い方をなさいます。
しかしこれが本格的な戦闘になると、相手の力を最小限に抑え戦う意欲をなくさせる戦い方をされるのです。」
「俺は転生前の記憶を持ってるんだ。
何度も生まれ変わり、何度もこうやって戦いの場に身を置いてきた。」
兵士たちがいくつもの小さなたき火をそれぞれで囲み、夜のひと時をくつろいで過ごしているとき。
訪ねてきたアーシャスを迎えたアズマは、たき火の火を見つめながら昔の記憶をたどるように語りました。
「だから慣れているのさ。将軍や士官たちも殆どがかつての戦友や部下たちだしな。」
「始まりは…おそらくあれが始まりだと思うんだが。
神々の大戦争だった。
俺は父と共に戦場に行った。
そして戦場から帰ってくると、守られていたはずの自宅は味方に襲われ、母と姉が死んでいた。」
アズマは目をつぶりました。
そのむごたらしい状況の記憶はなかなか消える事がなく、何度も彼の脳裏に浮かびあがっているものでした。
「姉の遺体に触れた時に、最期のメッセージが伝わってきた。
『生きて、再びお会いしたかった』と。
それがお前宛のメッセージだと気付いた俺は戦場から帰ってきたお前にそのエネルギーごと渡したんだ。」
熾きがぱちぱちと美しい炎を奥に隠したまま小さくはぜます。
その炎に照らし出されたアズマの瞳は、少年の外観とはうらはらに長い時を戦場で生きてきた古い魂とその深い悲しみを映し出していました。
「覚えてないか?」
アーシャスはしかし、その時前世の記憶を殆ど持っていませんでした。
まるで封をされたかのように記憶を探ろうとしても何も思い出せず、しばらく考え込んだあと首を横にふりました。
「そうか。」
アズマは視線を落として静かに微笑むと、手に持っていた枝を火に投げ込みました。
「ま、そういうことだ。姫巫女もその時の想いは果たしたってわけさ。こうして生きて再びお前に会えたんだからな。」
アーシャスは姫巫女から寄せられる熱い『想い』に、気がついていました。
しかしそれを表に出すことはなく、静かに気がつかないふりをしてきたのです。
それが実は転生前の関係に由来していたという事を、このとき初めて知ったのでした。
しかし今はその想いに応えるわけにはいかない、と。
アーシャスは金星にて師に指示された重要な役目について、常に忘れる事がないよう心の奥に刻み込んでいたのでした。
つづく。
追加情報
勇者ひかりさん、何か開いたようですよ~。
謎が解ける瞬間 心軽やかに夢をみつける シンム-
さぁどう展開していくのか、楽しみです。^^
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(0)
│エスペラルーダ物語
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。