2010年10月04日
夢希10 図書館
夢希10 「図書館」
「夢希のお母さん?」
「うん…誰かなって。なんだか気になって。」
夢希と雫は、雫の部屋で内緒のおしゃべりを始めていました。
雫は時折気持ちが悪くなる程度でつわりとしては大したことはなく。
「どうやら新婚初夜がストレスだったみたいなの。」
と、縁はためいきまじりに路に告げました。
こちらはお茶を飲みながらの大人の内緒話。
路は苦笑しました。
「そうだろうね。がちがちに緊張してたよ。眠るまで僕は離れて書類読んでた。」
昨夜の話し。
準備が出来て寝室に入ってきた雫は、まるで岩のようにがちがちにかたまり、いまにも火山が噴火しそうな真っ赤な顔をしていました。
自分自身もシャワーを浴びて着替えていた路はその日の業務の報告書に目を通していて、雫をちらりとみると噴き出しそうになり、あわてて書類で顔を隠しました。
落ち着いてから
「先に寝てなさい。僕はこれを読んでから寝るから。」
と声をかけ。
それでも夜具の中でがちがちに固まっていた雫に、
「赤ちゃんがまだお腹のなかで安定していないからね。何もしないから安心してお眠り。」
と言ってそっと頭を撫でてあげたのでした。
そして。
もう少しこのままで時間をかけようと言った路の言葉に、縁と由雄もほっとしたようでした。
「ねぇ、もしかしたら、セイイおにいさんが何か教えてくれるかも。」
雫は思いついたように言いました。
「セイイおにいさん?」
夢希もああ、という風にうなずきました。
セイは寺子屋の校長をしている廻の長男。
寺子屋を卒業後もそのまま手伝っていて、子供たちには頼りになるお兄さんとして慕われていました。
「物知りだもの。」
「そうね。」
「ねえ。わかったら…私にも教えてね?」
雫の言葉に
「もちろんよ。親友だもの。」
とこたえた夢希は、その時雫が少し思い詰めた目をしていたことに気付いていませんでした。
翌日、夢希は寺子屋でこっそりとセイイに相談しました。
「うん、君たちが生まれた頃は僕たちはもうこの山小屋で暮らしてたから詳しいことは知らないんだ。
城にいればどうしても噂は聞こえて来ただろうけど。」
セイイはそう言ってから思い出したように付け加えました。
「アマテラスの一族の記録は公文書になってるから、調べればいい。
城の図書館にあるはずだよ。図書館はほら、ここからでも行ける。」
寺子屋では子どもたちが自分で調べたいテーマが出来た時のために、クリスタル城の図書館に自由に出入りできるようにしていました。
夢希はお礼をいってセイイと別れると、そっと図書館のドアをくぐりました。
クリスタルの光とエネルギーの届く静かなエリア。
人気のないその図書館には、担当の神官がいるはず。
が、その時は誰も見当たらず。
誰にも邪魔されたくなかった夢希はほっとしました。
書棚の案内を確認し、そして棚の一つ一つを確認しながら進んでいきます。
「あった…」
やっと目的の書棚を発見。
見上げると、ハードカバーの百科事典のような本が書棚の上から迫力で迫って来ます。
本を見上げながらタイトルを読みつつ横に横にと歩いていたところ、
いきなりぱふんとふんわりしたものにぶつかりました。
「おや失礼。大丈夫ですか?」
声をかけられてびっくり。
大神官・夜希(よき)。
彼の背中にぶつかったのでした。
はらんはらんと夜希の白と黒の羽根が数本落ちて来ます。
夢希は驚いてそのまま硬直したように立ち止まり、目の前いっぱいに広がる美しい羽を見つめました。
「夢希さま…?どうかなさいましたか?」
夜希に再び声をかけられて、夢希ははっとしました。
「ご…ごめんなさい。わたし前を見ていなくて。」
赤くなった夢希ににっこりと笑いかけると、夜希は手を振ってさっと散らばった羽根を消しさり、
お探しの本はありましたか?と優しくきいて来ました。
夢希は何となく顔を伏せて、首を横に降りました。
「こ、ここじゃ無いみたいです。あ、あの、間違えて…この本は何だろうと思って見てただけで。」
「そうですか。」
夜希はにこやかに手を上に伸ばすと、上の棚にあった一冊を引き寄せました。
すーっと降りてきた本が夜希の手の中に収まります。
「ここにあるのは伽羅弧の歴史を記録した本ですが…」
夜希が開いてみせたページは、白紙でした。
「…何も書いてないわ。」
夢希が言うと、夜希は頷いて指をそのページの上におき、動かしました。
その指先が当たるところだけに何か文字があるのが見えます。
「ここには一族のみなさまがたのアカシックにつながる情報が書かれています。
読める段階にないと、読むことは出来ないのですよ。」
「読める段階…?」
夜希は頷きました。
「神々や神子さまがたにもプライベートはございますから。ご本人がお望みなら、また必要なときには現れることもございます。」
「私…私のことも?」
夢希は思い切って言ってから、はっと気付きました。
大神官なら知っているはず。
「あの…教えていただきたいんです。私…知りたくて。」
夢希は軽く声が震えるのを意識しながら落ちつこうと自分に言い聞かせ、息をすって、吐いて、そしてできるだけ落ち着いた声で夜希にききました。
「私を…産んだお母さんって誰なのか。」
つづく。
「どうやら新婚初夜がストレスだったみたいなの。」
と、縁はためいきまじりに路に告げました。
こちらはお茶を飲みながらの大人の内緒話。
路は苦笑しました。
「そうだろうね。がちがちに緊張してたよ。眠るまで僕は離れて書類読んでた。」
昨夜の話し。
準備が出来て寝室に入ってきた雫は、まるで岩のようにがちがちにかたまり、いまにも火山が噴火しそうな真っ赤な顔をしていました。
自分自身もシャワーを浴びて着替えていた路はその日の業務の報告書に目を通していて、雫をちらりとみると噴き出しそうになり、あわてて書類で顔を隠しました。
落ち着いてから
「先に寝てなさい。僕はこれを読んでから寝るから。」
と声をかけ。
それでも夜具の中でがちがちに固まっていた雫に、
「赤ちゃんがまだお腹のなかで安定していないからね。何もしないから安心してお眠り。」
と言ってそっと頭を撫でてあげたのでした。
そして。
もう少しこのままで時間をかけようと言った路の言葉に、縁と由雄もほっとしたようでした。
「ねぇ、もしかしたら、セイイおにいさんが何か教えてくれるかも。」
雫は思いついたように言いました。
「セイイおにいさん?」
夢希もああ、という風にうなずきました。
セイは寺子屋の校長をしている廻の長男。
寺子屋を卒業後もそのまま手伝っていて、子供たちには頼りになるお兄さんとして慕われていました。
「物知りだもの。」
「そうね。」
「ねえ。わかったら…私にも教えてね?」
雫の言葉に
「もちろんよ。親友だもの。」
とこたえた夢希は、その時雫が少し思い詰めた目をしていたことに気付いていませんでした。
翌日、夢希は寺子屋でこっそりとセイイに相談しました。
「うん、君たちが生まれた頃は僕たちはもうこの山小屋で暮らしてたから詳しいことは知らないんだ。
城にいればどうしても噂は聞こえて来ただろうけど。」
セイイはそう言ってから思い出したように付け加えました。
「アマテラスの一族の記録は公文書になってるから、調べればいい。
城の図書館にあるはずだよ。図書館はほら、ここからでも行ける。」
寺子屋では子どもたちが自分で調べたいテーマが出来た時のために、クリスタル城の図書館に自由に出入りできるようにしていました。
夢希はお礼をいってセイイと別れると、そっと図書館のドアをくぐりました。
クリスタルの光とエネルギーの届く静かなエリア。
人気のないその図書館には、担当の神官がいるはず。
が、その時は誰も見当たらず。
誰にも邪魔されたくなかった夢希はほっとしました。
書棚の案内を確認し、そして棚の一つ一つを確認しながら進んでいきます。
「あった…」
やっと目的の書棚を発見。
見上げると、ハードカバーの百科事典のような本が書棚の上から迫力で迫って来ます。
本を見上げながらタイトルを読みつつ横に横にと歩いていたところ、
いきなりぱふんとふんわりしたものにぶつかりました。
「おや失礼。大丈夫ですか?」
声をかけられてびっくり。
大神官・夜希(よき)。
彼の背中にぶつかったのでした。
はらんはらんと夜希の白と黒の羽根が数本落ちて来ます。
夢希は驚いてそのまま硬直したように立ち止まり、目の前いっぱいに広がる美しい羽を見つめました。
「夢希さま…?どうかなさいましたか?」
夜希に再び声をかけられて、夢希ははっとしました。
「ご…ごめんなさい。わたし前を見ていなくて。」
赤くなった夢希ににっこりと笑いかけると、夜希は手を振ってさっと散らばった羽根を消しさり、
お探しの本はありましたか?と優しくきいて来ました。
夢希は何となく顔を伏せて、首を横に降りました。
「こ、ここじゃ無いみたいです。あ、あの、間違えて…この本は何だろうと思って見てただけで。」
「そうですか。」
夜希はにこやかに手を上に伸ばすと、上の棚にあった一冊を引き寄せました。
すーっと降りてきた本が夜希の手の中に収まります。
「ここにあるのは伽羅弧の歴史を記録した本ですが…」
夜希が開いてみせたページは、白紙でした。
「…何も書いてないわ。」
夢希が言うと、夜希は頷いて指をそのページの上におき、動かしました。
その指先が当たるところだけに何か文字があるのが見えます。
「ここには一族のみなさまがたのアカシックにつながる情報が書かれています。
読める段階にないと、読むことは出来ないのですよ。」
「読める段階…?」
夜希は頷きました。
「神々や神子さまがたにもプライベートはございますから。ご本人がお望みなら、また必要なときには現れることもございます。」
「私…私のことも?」
夢希は思い切って言ってから、はっと気付きました。
大神官なら知っているはず。
「あの…教えていただきたいんです。私…知りたくて。」
夢希は軽く声が震えるのを意識しながら落ちつこうと自分に言い聞かせ、息をすって、吐いて、そしてできるだけ落ち着いた声で夜希にききました。
「私を…産んだお母さんって誰なのか。」
つづく。
Posted by 町田律子(pyo) at 07:00│Comments(5)
│夢希
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夢希11 「想い出のイメージ」夜希(よき)は少し間を置いてから、すっと手を伸ばして夢希(ゆめき)のそばにあった本を一冊、棚から引き抜きました。そしてその本を夢希に渡しなが...
夢希11 想い出のイメージ【pyo's room】at 2010年10月05日 07:00
この記事へのコメント
ドキドキ読んでおります
(笑)
私も夜希にぶつかりたい…(笑)←まだ言ってる

私も夜希にぶつかりたい…(笑)←まだ言ってる
Posted by ちょこ at 2010年10月04日 08:03
●ちょこさん
羽毛集めて、飛びこんでください。(笑)
羽毛集めて、飛びこんでください。(笑)
Posted by pyo
at 2010年10月04日 21:20

色々とみんな複雑ですねぇ・・。
がんばれ〜!がんばれ〜!って読ませていただいてますvv
すいません、↑の羽毛めっちゃウケました(笑)
それにしても、もんちゃんかわいいです〜〜〜ww
なにげに自分も一部にもんちゃんっていわれたりしてたので親近感が・・(笑)
がんばれ〜!がんばれ〜!って読ませていただいてますvv
すいません、↑の羽毛めっちゃウケました(笑)
それにしても、もんちゃんかわいいです〜〜〜ww
なにげに自分も一部にもんちゃんっていわれたりしてたので親近感が・・(笑)
Posted by りも at 2010年10月04日 22:13
羽毛…_| ̄|○|||
ぶつかった羽の先に夜希がくっついてるのがいいんですぅ
(笑)←ゼータクこいてます
ぶつかった羽の先に夜希がくっついてるのがいいんですぅ

Posted by ちょこ at 2010年10月05日 07:44
●りもさん
りも~んちゃん、ですね(笑)
なんか、羽毛にうけてますね。^^
●ちょこさん
出張おつかれさまでーす。
カウントしてるイヌワシの間に、天使が混じってませんか~?
よく見てね~。(笑)
りも~んちゃん、ですね(笑)
なんか、羽毛にうけてますね。^^
●ちょこさん
出張おつかれさまでーす。
カウントしてるイヌワシの間に、天使が混じってませんか~?
よく見てね~。(笑)
Posted by pyo
at 2010年10月05日 15:08

迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。