2011年08月10日
大地の花44 縁談
第44話 「縁談」
数日間、めずらしくランユウは熱も上がらず痛みもないようで静かに過ごせた日が続いた。
このところ熱がある日とある日の間の小休止のような静かな期間が長くなっている。
このまま熱のない日が続いて治ってくれないかと、メイファはランユウの代わりに東の丘にいき、昇る太陽に手を合わせた。
どうやら感染の心配はなさそうだ、と薬師が太鼓判を押してくれたおかげで村人たちも再び顔を出してくれるようになった。
家督をジンユウに継がせ隠居したものの、里主として頑張ってきたランユウには村の者たちみなが親しみ、相変わらず色んな相談が持ち込まれた。
ランユウの具合が悪い時はファーレンが用件を聞いて後でランユウに確認し伝言を伝えたが、
ここの所具合が良い日が続いたので客はそのまま通されて直接話しをしている。
ある日、メイファは来客中にランユウに呼ばれた。
庭先での仕事をしていたところだったので、急いで顔と手足を洗い部屋にあがった。
来客はタルーの父親だ。
「メイファ、タルーのことだが…」
ランユウの声は優しかった。
「お前を思って最近は食事も喉を通らないらしい。
タルーはいい男だ。お前を大事にして幸せにしてくれるだろう。
こんな先の見えない病人の世話ばかりに明け暮れてないでお前はお前の幸せを考えるといい。
いい縁談だ。嫁にいけ。」
メイファは青ざめた。
次に怒りがこみ上げてくる。
メイファの顔がみるみる赤くなった。
「ランユウのバカ!」
いきなりの怒鳴り声に驚いてファァーレンが部屋に入ってくる。
メイファは構わず叫んだ。
「バカバカバカ!忘れたの?お父様との約束…私は何の為にこの島に来たのよ!ランユウに嫁げって言われたのよ!
いくら自分がキツくて死にたいからって、私を嫁に出して遠ざけようなんて考えないでよ!卑怯よ!生きて、生きて約束を守りなさいよ!」
一気にまくし立てたのは故郷の言葉であった。
そのためタルーの父親には細かい事は伝わらず、ただメイファの癇癪の激しさに驚き、そしてどうやら息子のタルーはフラれたようだなと思った。
裏ではこの影響を受けた竜族の者たちが慌てていた。
屋敷内で豚の世話をしていたものや漁をおえて魚を持ってきた男たちの龍がうごめいたのだ。
男たちは何事かと室内を確認し、客がいるのに気がつくと姿を隠して様子をうかがった。
ランユウはぽかんとメイファを見上げていたが、やがて笑い出した。
その額に汗をかいている。
メイファの激昂したエネルギーはランユウの中の龍も動かしていたが、それを受け止めるだけの体力がいまのランユウにはない。
ファーレンはすぐに気が付き、ランユウの額に触れて確認した。熱がある。
すぐに立ち上がり、桶に水と手ぬぐいを濡らして持ってきた。
そっとランユウの汗を拭き、額に冷たい手ぬぐいをのせる。
それを見たメイファはすぐに冷静になり、口をつぐんだ。
ファーレンと目があう。
メイファは視線を落とし、すとんと座って島の言葉でつぶやくようにいった。
「…ごめんなさい。」
ランユウは熱のある潤んだ目のまま、しかし面白そうに笑ってタルーの父親に言った。
「すまん、この子は俺の嫁になりたいらしい。
見た通り、こんなファザコンの癇癪持ちをもらうとタルーが気の毒かもしれないな。
だがそれでも惚れてるなら、タルー次第だ。
病人よりいい男になってもう一度自分でメイファを口説いてみろと伝えてくれ。
俺も…まず病を癒すことを考えよう。
嫁にやるならやるでちゃんと祝いが出来るようにな。
タルーと…勝負だ。」
みるみる熱が上がっていくのが目にみてはっきりとわかる程だったが、ランユウは笑顔だった。面白がっている。
「それじゃ息子にははなっから勝ち目は無いかも知れません。」
タルーの父親は心配げに、だがランユウにあわせて笑顔を作って言うと頭を下げて帰っていった。
ランユウはそれから三日三晩熱を出したが、発熱に苦しんだのはこれが最後だった。
1年近くの病と寝たきりの生活からランユウはやっと解放され、回復への道を歩み始めた。
つづく。
はー、やれやれやっと回復だ。(A^^)
家督をジンユウに継がせ隠居したものの、里主として頑張ってきたランユウには村の者たちみなが親しみ、相変わらず色んな相談が持ち込まれた。
ランユウの具合が悪い時はファーレンが用件を聞いて後でランユウに確認し伝言を伝えたが、
ここの所具合が良い日が続いたので客はそのまま通されて直接話しをしている。
ある日、メイファは来客中にランユウに呼ばれた。
庭先での仕事をしていたところだったので、急いで顔と手足を洗い部屋にあがった。
来客はタルーの父親だ。
「メイファ、タルーのことだが…」
ランユウの声は優しかった。
「お前を思って最近は食事も喉を通らないらしい。
タルーはいい男だ。お前を大事にして幸せにしてくれるだろう。
こんな先の見えない病人の世話ばかりに明け暮れてないでお前はお前の幸せを考えるといい。
いい縁談だ。嫁にいけ。」
メイファは青ざめた。
次に怒りがこみ上げてくる。
メイファの顔がみるみる赤くなった。
「ランユウのバカ!」
いきなりの怒鳴り声に驚いてファァーレンが部屋に入ってくる。
メイファは構わず叫んだ。
「バカバカバカ!忘れたの?お父様との約束…私は何の為にこの島に来たのよ!ランユウに嫁げって言われたのよ!
いくら自分がキツくて死にたいからって、私を嫁に出して遠ざけようなんて考えないでよ!卑怯よ!生きて、生きて約束を守りなさいよ!」
一気にまくし立てたのは故郷の言葉であった。
そのためタルーの父親には細かい事は伝わらず、ただメイファの癇癪の激しさに驚き、そしてどうやら息子のタルーはフラれたようだなと思った。
裏ではこの影響を受けた竜族の者たちが慌てていた。
屋敷内で豚の世話をしていたものや漁をおえて魚を持ってきた男たちの龍がうごめいたのだ。
男たちは何事かと室内を確認し、客がいるのに気がつくと姿を隠して様子をうかがった。
ランユウはぽかんとメイファを見上げていたが、やがて笑い出した。
その額に汗をかいている。
メイファの激昂したエネルギーはランユウの中の龍も動かしていたが、それを受け止めるだけの体力がいまのランユウにはない。
ファーレンはすぐに気が付き、ランユウの額に触れて確認した。熱がある。
すぐに立ち上がり、桶に水と手ぬぐいを濡らして持ってきた。
そっとランユウの汗を拭き、額に冷たい手ぬぐいをのせる。
それを見たメイファはすぐに冷静になり、口をつぐんだ。
ファーレンと目があう。
メイファは視線を落とし、すとんと座って島の言葉でつぶやくようにいった。
「…ごめんなさい。」
ランユウは熱のある潤んだ目のまま、しかし面白そうに笑ってタルーの父親に言った。
「すまん、この子は俺の嫁になりたいらしい。
見た通り、こんなファザコンの癇癪持ちをもらうとタルーが気の毒かもしれないな。
だがそれでも惚れてるなら、タルー次第だ。
病人よりいい男になってもう一度自分でメイファを口説いてみろと伝えてくれ。
俺も…まず病を癒すことを考えよう。
嫁にやるならやるでちゃんと祝いが出来るようにな。
タルーと…勝負だ。」
みるみる熱が上がっていくのが目にみてはっきりとわかる程だったが、ランユウは笑顔だった。面白がっている。
「それじゃ息子にははなっから勝ち目は無いかも知れません。」
タルーの父親は心配げに、だがランユウにあわせて笑顔を作って言うと頭を下げて帰っていった。
ランユウはそれから三日三晩熱を出したが、発熱に苦しんだのはこれが最後だった。
1年近くの病と寝たきりの生活からランユウはやっと解放され、回復への道を歩み始めた。
つづく。
はー、やれやれやっと回復だ。(A^^)
Posted by 町田律子(pyo) at 08:10│Comments(6)
│大地の花
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第45話 「回復期」病を癒す決意をし回復し始めたランユウは強い意志でリハビリを開始した。身体が弱りきっていて、自力で起き上がる筋力もなかったが、それでも少しずつ、少しずつ...
大地の花45 回復期【pyo's room】at 2011年08月11日 08:15
この記事へのコメント
pyoさん、回復おめでとうございますヽ(^o^)丿
ランユウの寿命は、メイファが鍵なのかな!
ランユウの寿命は、メイファが鍵なのかな!
Posted by minto at 2011年08月10日 08:54
わぁメイファの癇癪に拍手したり(笑)
どうなるのかな〜
ランユウもやっと病気なおって良かったね♪
どうなるのかな〜
ランユウもやっと病気なおって良かったね♪
Posted by ちょこ at 2011年08月10日 09:57
ひや~(; ̄ー ̄A
ハラハラドキドキが続いていたけど
回復して良かった~♪
みんなの中の龍に影響を及ぼすって凄い!!
ハラハラドキドキが続いていたけど
回復して良かった~♪
みんなの中の龍に影響を及ぼすって凄い!!
Posted by まいと at 2011年08月10日 11:20
なんかタルーの恋も応援したいです…(°∇°;)
Posted by ゆうおう at 2011年08月10日 13:49
ぶっ たしかにゆうおうさん、同感です〜
>タルーの恋も応援したい
>タルーの恋も応援したい
Posted by ちょこ at 2011年08月10日 17:37
●mintoさん
はい~、やっと回復モードに入ります。
って、私じゃないって。(笑)
●ちょこさん
メイファの癇癪、結構すごいようですよ~。^^
●まいとさん
ハラハラドキドキ、ありがとうございました。
●ゆおうさん、ちょこさん
そうですよねぇ・・・タルー、結構いい青年だし。
はい~、やっと回復モードに入ります。
って、私じゃないって。(笑)
●ちょこさん
メイファの癇癪、結構すごいようですよ~。^^
●まいとさん
ハラハラドキドキ、ありがとうございました。
●ゆおうさん、ちょこさん
そうですよねぇ・・・タルー、結構いい青年だし。
Posted by pyo at 2011年08月10日 23:06
迷惑コメントが入り始めたので「承認後受け付ける」にしています。すぐには表示されませんがお待ち下さい。